ExcelでqPCRデータを分析する2つの簡単な方法(ΔΔCt法・Pfaffl法)
qPCR(定量的ポリメラーゼ連鎖反応:quantitative polymerase chain reaction)は、PCR技術を応用してサンプル中のDNA量を測定する高度な分析法です。専門的な手法に思えますが、実はExcelを使えばqPCRデータの解析も簡単に行えます。本記事では、ExcelでqPCRデータを解析する2つの方法を、具体的な数式と操作手順付きで詳しく解説します。
qPCR解析とは?
qPCRとは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を利用してサンプル中のDNA量を定量する技術です。qPCRデータの解析には、主に以下の2つの方法があります。
① ダブルデルタCt法(Double Delta Ct法)
2001年にLivakとSchmittgenによって提唱された解析手法で、Pfaffl法の特殊なケースにあたります。この方法では、実験群の平均値(目的遺伝子実験群:TE および ハウスキーピング遺伝子実験群:HE)と対照群の平均値(目的遺伝子対照群:TC および ハウスキーピング遺伝子対照群:HC)の2組のデータを入力し、そこから ∆CTE と ∆CTC の値を求めます。
∆CTEは「目的遺伝子実験群(TE)」から「ハウスキーピング遺伝子実験群(HE)」を差し引いた値で、一般的な式は次の通りです。

同様に、∆CTCは「目的遺伝子対照群(TC)」から「ハウスキーピング遺伝子対照群(HC)」を差し引いた値です。数式で表すと以下になります。

続いて、∆∆Ctの値を算出します。∆∆Ctを求める式は次の通りです。

最後に遺伝子発現比(Gene Expression Ratio)を評価します。この方法では、実験群・対照群の両方についてプライマー効率(Primer Efficiency)が100%であると仮定します。したがって、遺伝子発現比の式は以下となります。

② Pfaffl法
Pfaffl法は、qPCR解析におけるより汎用的な手法で、ダブルデルタCt法と多くの共通点があります。ただし最大の違いは、プライマー効率を100%と仮定しない点です。実際には任意の値を設定でき、通常はハウスキーピング遺伝子(HKG)と目的遺伝子(GOI)のいずれも90%~110%の範囲に収まります。この解析式は2001年にMichael Pfafflによって学術誌Nucleic Acids Researchで発表されました。
このアプローチでは、まず2組のデータを入力してそれぞれの平均値を計算し、さらに対照サンプルの平均値を求めます。そこから ∆Ct の値を決定します。∆Ctの式は次の通りです。

また、遺伝子発現比を解析するための数式は以下の通りです。

ExcelでqPCRデータを分析する2つの方法
ここからは、3~5サンプル分のqPCRデータを実際にExcelで解析していきます。まずダブルデルタCt法による解析を行い、その後Pfaffl法での解析手順を示します。
方法1:ダブルデルタCt法でqPCRデータを分析する
ダブルデルタCt法では、5つのDNAサンプルからなるデータセットを使用します。この方法では、実験遺伝子と対照遺伝子の両方についてPCRプライマー効率が100%であると仮定します。前述の通り、これはPfaffl法の特殊ケースと言えます。具体的な手順は以下の通りです。
📌 手順:
- まず、画像のようにすべての遺伝子の値を正確に入力します。「目的遺伝子実験群(TE)」と「ハウスキーピング遺伝子実験群(HE)」の実験値を列Bと列Cに、「目的遺伝子対照群(TC)」と「ハウスキーピング遺伝子対照群(HC)」の対照値をそれぞれ列Dと列Eに入力してください。

- 次に、セルF5に ∆CTE を計算するための以下の数式を入力します。
=B6-C6
- Enterキーを押します。

- 同様に、∆CTCを求めるためにセルG5に以下の数式を入力します。
=D6-E6
- 再度Enterキーを押します。

- 続いて、セルH5を選択し、∆∆Ctを求める以下の数式を入力します。
=F6-G6
- Enterキーを押します。

- 最後に、遺伝子発現比(2^(−∆∆Ct))を計算するため、セルI5に以下の数式を入力します。
=2^(-H6)
- 最後にもう一度Enterキーを押します。

- その後、セル範囲F6:I6を選択します。

- フィルハンドルをダブルクリックすると、数式が行10までコピーされます。
- これで全サンプルの遺伝子発現比の値が求められます。

以上の手順により、ExcelでqPCRデータを正しく解析できました。
🔍 結果の解釈
セルI5の遺伝子発現比が0.6507ということは、ハウスキーピング遺伝子で正規化した結果、対照条件と比較して検証条件における遺伝子発現量がその相対的な水準にあることを意味します。割合で考えると、0.6507=65.07%、つまり対照条件に対して検証条件では約65%の遺伝子発現が認められたことになります。
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方法2:Pfaffl法でqPCRデータを分析する
次にPfaffl法を使用します。この方法とダブルデルタCt法の主な違いは、実験遺伝子と対照遺伝子のPCRプライマー効率が100%ではない点です。本記事の例では、ハウスキーピング遺伝子のプライマー効率を93%、目的遺伝子のプライマー効率を101%と仮定して計算します。手順は以下の通りです。
📌 手順:
- まず、画像のようにすべての遺伝子の値を正確に入力します。ハウスキーピング遺伝子(HKG)と目的遺伝子(GOI)の処理群と対照群の2組の遺伝子値を入力してください。それぞれの遺伝子セットはCt-1およびCt-2として表記します。

- 最初に、ハウスキーピング遺伝子(HKG)セクションの計算をすべて完了させます。
- 2組のデータの平均値を求めるため、AVERAGE関数を使用します。
- セルE6に以下の数式を入力します。
=AVERAGE(C6:D6)
- Enterキーを押します。

- 次に、フィルハンドルをダブルクリックして、数式をセルE11までコピーします。

- 続いて、3つの対照値の平均を求めます。
- そのために、結合セルF6に以下の数式を入力します。
=AVERAGE(E9:E11)
- Enterキーを押します。

- 次に、セルG6を選択し、∆Ctを求める以下の数式を入力します。この際、セルF6は絶対参照で指定してください。
=E6-$F$6
- 再度Enterキーを押します。

- フィルハンドルをダブルクリックして、数式をセルG11までコピーします。
- これでハウスキーピング遺伝子(HKG)に関する計算はすべて完了です。

- 同じ手順で、目的遺伝子(GOI)セクションの計算もすべて完了させます。

- 最後に、セルO6に以下の数式を入力して発現比を求めます。セルN6とH6は必ず絶対参照で指定してください。
=($N$6^M6)/($H$6^G6)
- 最後にもう一度Enterキーを押します。

- フィルハンドルをダブルクリックして、数式をセルO11までコピーします。
- これで全サンプルの発現比の値が求められます。

以上で、Pfaffl法によるqPCRデータの解析も成功しました。
まとめ
本記事では、ExcelでqPCRデータを解析するダブルデルタCt法とPfaffl法の2つの方法を解説しました。プライマー効率の扱い方の違いを理解すれば、実験データに応じて適切な手法を選択できるようになります。ご不明な点やご要望があれば、ぜひコメント欄でお知らせください。
Excelに関するさまざまな問題と解決策については、当サイトExcelDemyもぜひご覧ください。新しい手法を学び続け、スキルアップを目指しましょう!
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