Elementary OS 5.1「Hera」徹底レビュー ― 美しさと使いやすさを兼ね備えたLinuxディストリビューション
Elementary OSは、エレガントなミニマリズムとユーザーフレンドリーな設計で高い人気を誇り、熱心なファンベースを抱えています。最新バージョンの「Hera 5.1」の登場からしばらく経ちましたが、近年のアップデートにおいて興味深い変更が加えられました。本レビューでは、Heraを実際に試しながら、新機能の紹介、初めて利用する方向けのポイント、そして他のデスクトップ環境との比較について詳しく見ていきます。
主な変更点
今回はマイナーバージョン(5.x系)のリリースのため、変更内容は革命的というよりも進化的なものです。とはいえ、Heraには2つの大きな変更点があります。
1つ目は、管理者権限がなくてもアップデートをインストールできるようになった点です。ユーザーの利便性は確実に向上しましたが、セキュリティの観点から好ましくない判断だと考えるユーザーも少なくありません。
2つ目の変更は、Flatpak形式のアプリがデフォルトで採用されたことであり、これが前述の権限変更にもつながっています。Flatpakアプリはサンドボックス化されているため、インストールやアップデートに管理者権限は不要だ、というのがその理由です。
インストール
公式サイトにアクセスすると、一見ペイウォールのような画面が表示されますが、心配無用。これは「お好きな金額をお支払いいただく」方式で、予算が厳しい場合や単にお試ししたい場合は0ドルでもダウンロード可能です。配布されるのは64ビット版のISOファイルのみで、一般的なUSBブート作成ツールであれば問題なく動作します。検証したすべてのマシンで正常に起動しました。
Elementary OSはUbuntuベースのため、ライブUSBもUbuntuと同じくデスクトップ型のインストーラー構造を採用しており、インストール前にOSを試用できます。第一印象は極めて良好です。アイコンのサイズやフォントから厳選された壁紙に至るまで、開発チームはあらゆる要素をシンプルかつエレガントに仕上げるために細心の注意を払っています。
インストーラー自体はごく標準的なUbuntu仕様です。不意なトラブルもなく、インストール中も並行して他の作業を進めることができます。
初回起動
起動時間は短く、あっという間にデスクトップが立ち上がります。Elementary OSを初めて使う方は、Windows風のスタートボタンやタスクバーの代わりに、大型アイコンのドックを備えたMac風のインターフェースをイメージすると良いでしょう。
ドックは未使用時に自動的に隠れ、アプリの起動や最小化に利用されます。ドックはデスクトップの中核的な存在として設計されており、ユーザーによるカスタマイズが前提となっています。使用頻度の低いアプリを削除し、アプリケーションメニューからよく使うアプリを登録して自分仕様に育てていきましょう。
OS全体を操作してみると、開発チームのデザイン哲学が随所に感じられます。それは「最小限のドキュメント」「すぐに使える操作性」「意図的に絞られた設定項目」です。特にシステム設定は印象的で、直感的に操作できる反面、項目数はかなり絞られています。
アプリストアは「新規アプリの入手」と「アップデートの適用」の2つのセクションに分かれており、非常にシンプルで扱いやすい作りです。バージョン5.0の時点ではラインナップが物足りませんでしたが、Flatpakパッケージの導入により大きく改善されました。
しかしこのOSの真価が発揮されるのは、Windowsキーを押した瞬間です。シンプルなGUIの裏側には、洗練された仮想デスクトップシステムと連携する強力なキーボードショートカット群が隠されています。
起動直後は空のデスクトップが1枚あるだけです。ところが新しいデスクトップ上でウィンドウを次々と開き、2つのボタンだけで高速に切り替えているうちに、この操作感が驚くほど心地よいものへと変わっていきます。
さらに嬉しいのは、ウィンドウを閉じると不要になったデスクトップが自動的に消去され、常に1枚だけ残る点です。徹底的に整理され、洗練されており、潔癖とも言える完成度です。
知っておきたい注意点
時として、Elementary OSの徹底的なミニマル思想は行き過ぎることもあります。設定項目を絞ることで初心者を圧倒しないようにしているのは理解できますが、多くのユーザーは遅かれ早かれ、用意されていない設定を変更したくなる場面に遭遇するでしょう。また、USBメモリを挿しても自動マウントのダイアログが表示されず、ファイルマネージャーから手動で開く必要があります。
もう1つの課題はウィンドウの最小化です。ドックやショートカットキーで簡単に実行できますが、その方法が直感的に分かりにくいうえ、公式のキーボードショートカット一覧にも記載されていません。最小化ボタンをデフォルト表示すべきかどうかは議論の余地がありますが、少なくとも最小化ボタンを追加できる「Elementary Tweaks」は、初期状態からインストールされていても良さそうです。
さらに、他のディストリビューションでは標準搭載されているライブラリやパッケージの一部が含まれておらず、基本的な作業の妨げになるケースもあります。例えばリポジトリを追加するには software-properties-common のインストールが必要で、その方法を検索で調べる羽目になりました。ISOファイルの容量はわずか1.48GBなので、「入れてすぐ使える」利便性のために多少データを増やす価値は十分にあるはずです。
総評
Elementary OSは美しく仕上げられた製品であり、強い印象を残し、Linux初心者を魅了するポテンシャルを十分に秘めています。一方で、この上品なミニマリズムが足かせとなる場面もあるのも事実です。エレガンスは時に力強さに道を譲る必要があり、デスクトップPCで高度なカスタマイズを重視する方には、KDE、MATE、Xfceといった環境の方が向いているでしょう。
その一方で、ノートPCやモバイル環境ではこのOSはまさに本領を発揮します。まるでLinuxの未来を先取りしているかのような瞬間に何度も出会いました。筆者自身はメインのワークステーションでKDE Neonを使用していますが、持ち歩き用の超小型PCにはElementary OSを導入しています。2台のマシンが互いを補完し合い、組み合わせることで非常に強力かつ満足度の高い環境を実現できています。
Elementary OSがMac風すぎると感じる方は、Windowsユーザー向けのおすすめLinuxディストリビューション特集もぜひチェックしてください。あるいは競合との比較をしたい方は、Macユーザー向けの優秀なLinuxディストリビューション5選の記事も参考になります。
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