【C++】スパース行列の乗算を効率的に求めるアルゴリズムと実装
2つの行列 A と B が与えられたとき、その積 AB を求めることを考えます。ここで、A の列数と B の行数は等しいものと仮定します。
例として、入力が [[1,0,0],[-1,0,3]] と [[7,0,0],[0,0,0],[0,0,1]] の場合を見てみましょう。
| 1 | 0 | 0 |
| -1 | 0 | 3 |
| 7 | 0 | 0 |
| 0 | 0 | 0 |
| 0 | 0 | 1 |
この場合、出力は [[7,0,0],[-7,0,3]] となります。
| 7 | 0 | 0 |
| -7 | 0 | 3 |
スパース行列の乗算を効率化するポイント
通常の行列積では O(r1 × c1 × c2) の計算量が必要ですが、スパース行列(大部分の要素が 0 である行列)の場合、0 を含む掛け算は結果に寄与しないため、そのような計算はスキップできます。
そこで本手法では、行列 A の各行について「非ゼロ要素の列インデックスと値」のペアを事前に記録しておきます。こうすることで、非ゼロ要素どうしの演算だけを実行でき、計算量を大幅に削減できます。
解法の手順
r1 := A の行数、r2 := B の行数とします
c1 := A の列数、c2 := B の列数とします
結果を格納するための r1 × c2 の2次元配列 ret を定義します
(列インデックス, 値) のペアを格納する配列 sparseA[r1] を定義します
i = 0 から r1 未満の間、以下を繰り返します
j = 0 から c1 未満の間、以下を繰り返します
A[i][j] が 0 でない場合、sparseA[i] の末尾に { j, A[i][j] } を追加します
i = 0 から r1 未満の間、以下を繰り返します
j = 0 から sparseA[i] のサイズ未満の間、以下を繰り返します
k = 0 から c2 未満の間、以下を繰り返します
x := sparseA[i][j] の first(列インデックス)
B[x][k] が 0 でない場合、ret[i][k] += sparseA[i][j] の second(値)× B[x][k] とします
ret を返します
C++による実装例
理解を深めるために、以下の実装を見てみましょう。
class Solution {
public:
vector<vector<int>> multiply(vector<vector<int>>& A, vector<vector<int>>& B) {
int r1 = A.size();
int r2 = B.size();
int c1 = A[0].size();
int c2 = B[0].size();
vector<vector<int>> ret(r1, vector<int>(c2));
vector<vector<pair<int, int>> sparseA(r1);
for(int i = 0; i < r1; i++){
for(int j = 0; j < c1; j++){
if(A[i][j] != 0)sparseA[i].push_back({j, A[i][j]});
}
}
for(int i = 0; i < r1; i++){
for(int j = 0; j < sparseA[i].size(); j++){
for(int k = 0; k < c2; k++){
int x = sparseA[i][j].first;
if(B[x][k] != 0){
ret[i][k] += sparseA[i][j].second * B[x][k];
}
}
}
}
return ret;
}
};
入力
{{1,0,0},{-1,0,3}},{{7,0,0},{0,0,0},{0,0,1}}
出力
[[7, 0, 0], [-7, 0, 3]]
計算量
前処理で A の全要素を走査するのに O(r1 × c1)、乗算本体は A の非ゼロ要素数を nnz(A) とすると O(nnz(A) × c2) で完了します。行列が疎であるほど、素朴な三重ループ O(r1 × c1 × c2) と比べて高速に動作します。
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