Xerox B215 ワイヤレスレーザー複合機レビュー ― 設定・セキュリティ・Linux対応を徹底検証
ある日、愛用していたプリンターの一つが突然故障してしまいました。インクを吸血鬼のごとく消費する安価な交換品を買う代わりに、少し予算を上乗せしてレーザー方式の機種を選ぶことにしました。しかも今回は、かなり一風変わった選択をしてみたのです。
Xerox(ゼロックス)はプリンター業界ではおなじみのブランドですが、その主戦場は一般家庭ではなくオフィス環境です。家庭用にXerox製プリンターを導入するのはやや大げさに思えるかもしれませんが、私はこの実験に200米ドル程度の投資を厭いませんでした。さらに箱にはペンギンのロゴ(Linux公式対応の証)があったので、「よし、試してみよう」という気になった次第です。それが本稿の主人公、Xerox B215です。

基本性能と外観
これまでLexmarkやHPなど、さまざまなメーカーのプリンターを使ってきましたが、Xeroxは今回が初めて。OSとの互換性はメーカーによって大きく異なり、Linux環境ではLexmarkがなぜかHP製以外のプリンター向けドライバーで動いたり、HPはドライバーサポートこそ充実しているものの、不要なソフトウェアツールが大量に付属したりと、一長一短でした。公式にLinux対応を掲げるXeroxがどうなっているのか、とても興味がありました。特に注目したのは、プリンター本体の管理インターフェース、デフォルト設定やセキュリティ周り、そしてそれらがプラットフォーム間でどの程度一貫しているかという点です。
外観はいかにもビジネス向けといった真面目な佇まい。両面印刷、手差し・自動給紙トレイ、単ページおよび複数ページのスキャン機能、オフィスでよく見かけるタッチパネル式の操作画面、そしてUSBとWi-Fi接続を備えています。重量はずっしりの11.5kg。まずはインターフェースから見ていきましょう。

プリンターの設定
いつものように、何かを印刷する前にまずシステム設定全体を確認しました。過去に公開した「ワイヤレスプリンターのセキュリティガイド」でも述べたとおり、ほとんどのプリンター(というよりあらゆるネットワーク機器)は一般ユーザー向けに設計・事前設定されており、緩く開放的な設定、デフォルトパスワード(あるいはパスワードなし)、考えられる限りのプロトコルがすべて有効化された状態で出荷されます。使いやすさは確かに向上しますが、賢さや安全性とは必ずしも一致しません。
ここで「UIデザインのソフトウェア法則」も思い出してください。デバイスが高性能であるほど、インターフェースは醜くなる、という法則です。この点、Xerox B215は見事なまでにレトロ。1996年頃のデザインで、思わず目を覆いたくなるほどです。しかし、これはむしろ良い兆候なのです。
予想どおり、その「古臭さ」は豊富な実用機能につながっていました。管理画面にはHTTPまたはHTTPS(自己署名証明書)でアクセスでき、管理者パスワードの初期値はデバイスのシリアル番号。英数字が混在した推測困難な文字列なので、まずまずの安心感があります。メインページにはテレメトリー(診断データ送信)に関する大きな通知が表示され、印刷履歴を匿名でメーカーに報告されたくなければ無効化せよと明記されています。この機能は「SMART eSolutions Setup」と呼ばれるもので、私は即座にオフにしました。


無線LANのセットアップも問題なく完了しました。実際、Xerox B215には膨大な数のツールとオプションが用意されており、すべてを吟味して設定するだけで軽く2時間は費やせます。シンプルなホームユースの枠を遥かに超えた作りです。しかも、ほとんどの機能は初期状態で無効化されているか、有効でもデフォルト値はかなり安全側に振られています。ファームウェアも最新の状態で出荷され、必要ならアップグレードを無効化することも可能です。なかなかに印象的な設計です。




細部まで詳細な情報が確認でき、必要なコントロールはすべて自分の手にあります。
ドライバー、WindowsとLinux
ここが予想以上に冒険の始まりでした。Windows向けには印刷・スキャンツールを含むドライバーパックが用意されています。ところがWindows 10では、ドライバー部分だけが正常にインストールされ、ユーティリティ類はことごとく失敗。Windows XPまで遡る互換モードも試しましたが、インストーラーの起動自体はできるものの、最後まで正常に完了することはありませんでした。ちなみに、Linux向けのユーティリティは一切提供されていません。




結果として、PCからのスキャンは不可能。そこで助けになったのが、管理画面から設定できる「Scan to Network(ネットワークへスキャン)」機能です。NFS、CIFS、Samba共有への直接保存に対応しており、認証情報の登録も可能です。プリンターがリモート共有先にPDFファイルを生成してくれる仕組みで、美しい構成こそ違えど、極めて安定して動作します。

印刷面に話を戻すと、ドライバーはやや素朴な作りです。たとえばWindows版には「現在のページのみ印刷」というオプションがありません(ページ範囲指定はできるため、現在のページ番号を入力すれば同じことは実現できます)。一部の詳細設定もやや回りくどい印象です。ただ、印刷自体は問題なく行えました。
Linuxでは、公式対応の看板にもかかわらず、結果はまちまちでした。問題なく印刷できたディストリビューションがある一方、Mint 20 Ulyanaなどでは自動検出・自動設定までは成功するものの、実際の印刷が正しく行われないケースがありました。なぜか手差し給紙が既定になってしまうのです。原因は最後まで不明でした。


まとめ
Xerox B215はかなり実用的な一台です。印刷品質は良好で、ウォームアップ後の応答も速く、セキュリティや制御性を犠牲にすることなく、飽きずに何時間でも設定を探検できるほど多くのオプションを備えています。小さなタッチスクリーンをロックすることさえ可能です。スタータートナーでおよそ1,500枚の印刷が見込めるため、長期的に見ても悪くない投資になるはずです。
本来はプリンターのレビューを書くつもりはなかったのですが、せっかくこの「獣」を迎えたので、主にセットアップ関連の知見を共有することにしました。Xeroxがより「オタク好み」のアプローチを選んだのは嬉しい限りです。一方で、ドライバーには洗練の余地が残されていますし、Windows用の印刷ソフトに至っては土壇場で外部委託したような後付け感が否めません。それでも、多少のヘビーユースに耐える堅牢さを求め、一般ユーザー向けのお節介機能ではなく、スマートにプリンターを設定する自由度を重視するなら、Xerox B215は実用的でパワフル、そして少しだけ贅沢な選択肢となるでしょう。
それでは、また。
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