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MacBookのSMC回路とPPBUS_G3H電圧調整 – プロ直伝リペア完全ガイド

本記事は、MacBookロジックボードの部品レベル修理に携わるプロフェッショナル向けに、オーストラリア・メルボルンのMac修理専門店「IT-Tech Online」が執筆した技術解説です。

前回の記事:MacBookの電源投入シーケンスとPPBUS_G3H電圧
次回の記事:ロジックボードPM_SLP_S4_L信号のタイミング

SMC(System Management Controller)とは

システムマネジメントコントローラ(SMC)は、Apple製コンピュータの管理コードが書き込まれたプログラマブルチップです。本記事では、MacBook Air 13インチ(2015〜2017年モデル)のロジックボード回路図「820-00165」を参照資料として使用します。

Appleの各機種にはそれぞれ固有のコードが搭載されています。つまり、ある機種から取り外したSMCチップを別の機種に流用することはできません。チップ表面の刻印が同じでも、内部に書き込まれたコードこそが重要だからです。

SMCの起動に必要な3要素:電源・クロック・リセット

SMCは非常に複雑なチップで、Intel CPU/PCHと連携しながら、画面の輝度制御やバッテリー充電制御など、MacBookの電源管理を起動から終了まで一貫して担います。SMCチップを起動させるには、下図に示すとおり「SMC電源」「SMCクロック」「SMCリセット」の3つの信号を供給する必要があります。

MacBookのSMC回路とPPBUS_G3H電圧調整 – プロ直伝リペア完全ガイド

U7090が生成するPP3V42_G3H電源レールは、BGAボール「VBAT」経由でSMCチップU5000にメイン電源を供給します。また、PP3V42_G3HはL5001を通ってSMC内部ロジック部のVDDAにも電力を供給します。その後、SMC自身はセンサー管理モジュール用にPP1V2_S5_SMC_VDDCを生成し、システムの温度・電圧・電流の監視を行います。SMCに電源が供給されると、水晶発振回路が12MHzの方形波クロックの出力を開始します。

MacBookのSMC回路とPPBUS_G3H電圧調整 – プロ直伝リペア完全ガイド

リセット信号と基準電圧の生成

U5110はPP3V42_G3Hの電圧を常時監視しています。この電源レールが安定しており3.0V未満に低下しないことが確認されると、U5110は「この電源は安全に使用できる」と判断し、遅延付きのSMC_RESET_L信号を出力してSMCチップをリセットします。SMC_RESET_Lの電圧は3.3Vで、遅延時間はR5101とC5101の定数値によって決まります。

さらにU5110は、SMCセンサー回路(電流センサー、電圧センサー、温度センサーなど)のA/D変換機能用に、基準電圧PP3V3_S5_AVREF_SMC(3.3V)を出力します。

MacBookのSMC回路とPPBUS_G3H電圧調整 – プロ直伝リペア完全ガイド

PPBUS_G3H電圧の調整とMagSafeとの連携

充電管理チップU7100からSMC_BC_ACOK信号を受信すると、SMCは1-Wire(ワンライン)回路を介してMagSafe充電器と通信し、充電器のグリーンライトを点灯させます。同時に、SMCはSMBusを使ってU7100と通信し、PPBUS_G3H電源レールを基本電圧8.1Vから標準の8.45Vへと調整します。

PPBUS_G3HはコイルL7130で測定できます。ここで約8.45Vが測定できれば、SMCは正常に動作しています。少なくともSMCの電源・クロック・リセット・1-Wire回路はすべて良好だと言えます。逆に8.45V前後の電圧が得られない場合は、先にSMC側の問題を解決する必要があります。

また、SMCは同じSMBusを使用してバッテリーの状態を読み取り、適切な充電電流を決定します。さらに、システム入力電流(AMON)とバッテリー充電電流(BMON)も常時監視しています。

MacBookのSMC回路とPPBUS_G3H電圧調整 – プロ直伝リペア完全ガイド

G2状態からS5状態への移行

充電回路PMIC U7100から「充電器が使用可能になった」ことを示すSMC_BC_ACOK信号を受け取ると、SMCはスタンバイ回路PMIC U7501へSMC_PM_G2_EN信号を送出します。この信号により、MacBookはG2状態(オフ状態)からS5状態(ディープスリープ状態)へと遷移します。

チェックポイント:SMC_PM_G2_ENは制御信号で、電圧は3.3Vです。抵抗R8140の1番ピンで測定できます。

まとめ:SMCチップの調達について

SMCはAppleが設計した非常に重要かつ複雑なチップであり、「新品」のSMCチップを市販で入手することはできません。同一機種・同年式のドナーボードから取り出すしかありません。SMCのその他の機能については、今後の記事でさらに詳しく解説していきます。

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