Windows 10が「次のWindows XP」になる?その4つの理由と対策
Windows 11の登場に伴い、一見すると恣意的に思える最小システム要件が、多くのWindows 10ユーザーを困惑させています。
もしマイクロソフトが正式版のWindows 11でもこの要件を維持するなら、まだ十分に使える多くのパソコンが、当面の間Windows 10を使い続けることになりかねません。これは2001年に登場し、2010年代まで生き残ったWindows XPとよく似た状況を生み出す可能性があります。
本記事では、なぜWindows 11の登場によってWindows 10が今後何年も多くの人に選ばれ続けるOSになるのか、その理由と、そうならないためにできる対策を詳しく解説します。
1. Windows 11はTPMを必須とする
TPM(Trusted Platform Module)は決して新しい技術ではありません。実は2009年にはすでに標準化されており、初めて広く普及したTPM 1.1bは2003年のものです。
これほど歴史のある技術なので、2000年代半ばから2010年代半ば頃までのパソコンにはTPMが搭載されていると思いたくなります。実際その通りなのですが、同時に間違いでもあります。問題は、マイクロソフトが自社のPCエコシステム全体でTPMサポートを徹底してこなかった点にあります。
過去6年以内に出荷された多くのパソコンではTPMが標準で有効になっていますが、それ以外のマシンでは単純に存在しないことも珍しくありません。
なぜこうなっているのでしょうか。一般消費者向けPCのほとんどのTPM実装は、IntelのPPTやAMDのfTPMといったファームウェア経由で動作しています。つまり、専用のTPMハードウェアを持つのではなく、CPUの信頼実行環境上で動作するUEFIベースのソリューションなのです。
この実装の有無はマザーボードメーカー次第であり、強制されてこなかったため、対応状況はまちまちです。
Windows 11がTPMを要求する意図自体は理解できます。TPMのメリットは企業用途にとどまらず、マルウェア対策の強化、プラットフォーム整合性の検証、フルディスク暗号化の支援、DRM保護やオンラインゲームのチート防止など、幅広い分野に及びます。
基本的には「あって損のない追加の保護レイヤー」です。しかし、マイクロソフトにはこれを業界全体に浸透させる十分な時間があったはずで、今このタイミングで一斉に要求するのは最善策とは言えません。
2. 2017年以前のCPUはWindows 11非対応
TPMよりもさらに懸念されるのが、一見恣意的に見えるCPUホワイトリストです。IntelのKaby Lake以前のCPU、およびAMDのZen以前のCPUは、今なお十分に現役で使えるにもかかわらず、Windows 11を実行できません。しかも、その多くはWindows 10を問題なく快適に動かせています。
これらは2017年に登場したCPUです。つまり、2016年以前のパソコンではWindows 11が動作しないということになります。極端な例を挙げると、2016年に約17万円という高額な価格で発売されたHEDT向け8コア16スレッドCPU「Intel Core i7-6950X」でさえ、Windows 11の互換性リストから外れています。
パソコンの寿命はスペックにもよりますが、一般的に3〜8年程度、長いものでは10年使われることもあります。2017年製のCPUはその寿命の範囲内ギリギリです。「Windows 11が動かない」とされるCPUの多くが、Windows 10を滑らかに動作させられるという点は、特に大きな問題です。
しかも、Windows XP時代のPCがVistaで「非対応」扱いだったのとは事情が根本的に異なります。古いCPUはWindows 11のインストールから能動的にブロックされます。インストーラーはバックグラウンドでハードウェア互換性チェックを実行し、すべての項目を通過しなければインストールを先へ進められないのです。
3. 32ビット版Windowsの公式廃止
Windows 11は、32ビット版を出荷しない初めてのWindowsとなり、64ビット専用OSとなります。
現在では大きな問題には見えませんが、古めのマシンには無視できない影響があります(参考までに、最初の64ビットCPUであるAMD Athlon 64は2003年登場であり、32ビット専用CPUはもう何年も前から市場から姿を消しています)。
Windows 10でさえ、かなり前から老朽化した32ビットPCへの対応は事実上終わっています。2000年のWillametteコアPentium 4でWindows 10を動かすのは、仮にインストールできたとしても悪夢のような体験です。しかし、それなりに新しい安価なPCの中には、まだ32ビット版Windowsが動いているものが数多く存在します。
CPUが64ビットに対応しているのに、安価なオフィスPCで32ビット版Windows 10が動いている光景はよく見られます。理由は簡単で、64ビット版Windowsの方がスペック要求がやや高く、非力なシステムでは動作が重くなりがちだからです。32ビット版Windowsがメモリやストレージの消費を抑えられるのは有名な話です。
32ビット版Windows 11が存在しないということは、こうした非力なマシンの多くがアップグレードの道を断たれ、Windows 10に取り残されることを意味します。
4. コロナ禍と半導体不足
新型コロナウイルス感染症の経済的な影響は今も色濃く残っており、当面は続きそうです。ワクチン接種の普及により世界的に感染者は減りつつありますが、変異株の流行は依然として続いています。
さらに、暗号資産マイニングが依然として盛んで収益性が高いため、半導体不足も解消の兆しが見えず、PCパーツの入手難は続いています。
要するに、恣意的で強制的なWindows 11のシステム要件に合わせるためだけに、人々に新しいパソコンの購入を迫るのは、今のタイミングでは賢明とは言えません。グラフィックカードをはじめとするPCパーツは非常に入手しにくく(転売業者に大金を払う覚悟がない限り)、今は新規PC購入にとって最悪の時期なのです。
加えて、コロナ禍で職を失った人の多くは、いまだに生活基盤を立て直せていません。古いマシンへのWindows 11インストールを認めず、能動的にブロックすることで新PC購入を強いるのは、ユーザー本位の姿勢とは言い難いでしょう。
「第2のWindows XP」を防ぐためにできること
かつてのWindows XPマシンのように、セキュリティ更新すら受け取れない状態に自分のPCが陥るのは避けたいところです。そこで、今から取れる対策を3つ紹介します。
TPMモジュールを導入する
何らかの理由でお使いのPCがファームウェアTPMに対応していない場合、物理的なTPMモジュールの装着が解決策になるかもしれません。多くのマザーボードには、モジュールを取り付けられる未使用のTPMヘッダーが用意されています。
残念ながら、これらのモジュールは規格が統一されていません。ただし、マザーボードメーカーが自社製品に対応したモジュールを販売しているケースが多いので、まずはそちらを確認してみましょう。
部分的なアップグレードを行う
デスクトップPCをお使いでWindows 11を使いたいなら、部分的なシステムアップグレードという選択肢もあります。Windows 11の要件にわずかに届かない程度の構成なら、マザーボードとCPUを交換し、他のパーツを流用することで対応できる可能性があります。
たとえばHaswell世代の「Intel Core i7-4790K」搭載PCなら、「Intel Core i5-11400」と新しいマザーボード、DDR4メモリを組み合わせれば、低コストでWindows 11に対応できるうえ、体感性能の向上も期待できます。
ただし、マシンがさらに古くなると、電源やストレージなど他のパーツの交換も必要になってきます。アップグレード費用が新PCの価格に近づいてきたら、あるいはノートPCをお使いの場合は、次の選択肢を検討しましょう。
新しいシステムのための資金計画を始める
期待していた答えではないかもしれませんが、非公式なインストール手法に手を出す予定がないなら、新しいPCを購入するのが最も確実な道です。現在のシステムと同等の構成で新しいパーツのモデルを選んでコストを抑えるのもよし、これを機に思い切ってフルアップグレードするのもよいでしょう。
幸い、Windows 11が安定版として普及するまでには時間の猶予があります。半導体不足が続く今だからこそ、この期間を活用して、欲しいパーツやノートPCをじっくりと価格比較しながら探すのがおすすめです。
まとめ:Windows 10による「第2のWindows XP」を防げるか
アップグレードの問題に関して言えば、Windows 11のケースは当時のWindows Vistaよりも深刻かもしれません。
Windows Vistaは動作が重く、古いシステムでは不具合も多かったものの、少なくともインストール自体は可能でした。一方のWindows 11は、システム要件を文字どおり厳格に適用しており、「承認済み」ハードウェア以外ではOSを一切インストールできません。
マイクロソフトが少なくとも一部の恣意的な要件を見直し、より多くのユーザーが新しいOSを試せるようになることを期待したいところです。しかし、現時点ではその可能性は低そうだと考えざるを得ません。
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