C++で実装する完全二分木インサーター(CBTInserter)の解説とコード例
完全二分木(Complete Binary Tree)とは、最後のレベルを除くすべてのレベルが完全に埋まっており、かつ最後のレベルのノードはすべて可能な限り左に寄せられている二分木のことです。
本記事では、完全二分木を初期状態として受け取り、以下の操作をサポートするデータ構造 CBTInserter をC++で実装する方法を解説します。
- CBTInserter(TreeNode root):ルートノード root を持つ木を初期化します。
- CBTInserter.insert(int v):値 v を持つノードを挿入し、木が完全二分木の状態を保つようにします。挿入されたノードの親の値を返り値として返します。
- CBTInserter.get_root():木のルートノードを返します。
動作例
例として、木を [1,2,3,4,5,6] で初期化し、その後 7 と 8 を挿入してから get_root() を呼び出した場合を考えます。このとき出力は次のようになります。
- 7 を挿入 → 親は 3(7 はノード 3 の子として挿入されるため)
- 8 を挿入 → 親は 4(8 はノード 4 の子として挿入されるため)
- get_root() の結果 → [1,2,3,4,5,6,7,8]
アルゴリズムのアプローチ
この問題はキュー(queue)を使った幅優先探索(BFS)の考え方で効率的に解けます。手順は以下の通りです。
- キュー q と root を定義します。
- コンストラクタでは、与えられた完全二分木を受け取り、root を設定したうえで root をキューに追加します。
- 無限ループ内で以下を繰り返します。
- 現在のノードに左の子が存在するなら、それをキューに追加します。存在しなければループを抜けます。
- 右の子が存在するなら、それをキューに追加し、先頭ノードを削除して次の候補ノードへ進みます。存在しなければループを抜けます。
- これにより、キューの先頭には「子を追加できる最初のノード」が保持されます。
insert メソッドの処理
- 値 v を受け取ります。
- parent := キューの先頭要素、temp := 値 v を持つ新規ノードとし、temp をキューに追加します。
- parent の左の子が存在しない場合は parent->left = temp とします。すでに存在する場合はキューの先頭を削除し、temp を parent の右の子として設定します。
- parent の値を返します。
get_root メソッドの処理
保持している root をそのまま返すだけです。
C++による実装例
以下の実装を見ると、理解がより深まるでしょう。
#include <bits/stdc++.h>
using namespace std;
class TreeNode{
public:
int val;
TreeNode *left, *right;
TreeNode(int data){
val = data;
left = NULL;
right = NULL;
}
};
void insert(TreeNode **root, int val){
queue<TreeNode*> q;
q.push(*root);
while(q.size()){
TreeNode *temp = q.front();
q.pop();
if(!temp->left){
if(val != NULL)
temp->left = new TreeNode(val);
else
temp->left = new TreeNode(0);
return;
} else {
q.push(temp->left);
}
if(!temp->right){
if(val != NULL)
temp->right = new TreeNode(val);
else
temp->right = new TreeNode(0);
return;
} else {
q.push(temp->right);
}
}
}
TreeNode *make_tree(vector<int> v){
TreeNode *root = new TreeNode(v[0]);
for(int i = 1; i<v.size(); i++){
insert(&root, v[i]);
}
return root;
}
void tree_level_trav(TreeNode*root){
if (root == NULL) return;
cout << "[";
queue<TreeNode *> q;
TreeNode *curr;
q.push(root);
q.push(NULL);
while (q.size() > 1) {
curr = q.front();
q.pop();
if (curr == NULL){
q.push(NULL);
} else {
if(curr->left)
q.push(curr->left);
if(curr->right)
q.push(curr->right);
if(curr == NULL || curr->val == 0){
cout << "null" << ", ";
} else{
cout << curr->val << ", ";
}
}
}
cout << "]"<<endl;
}
class CBTInserter {
public:
queue <TreeNode*> q;
TreeNode* root;
CBTInserter(TreeNode* root) {
this->root = root;
q.push(root);
while(1){
if(root->left){
q.push(root->left);
}
else break;
if(root->right){
q.push(root->right);
q.pop();
root = q.front();
}
else break;
}
}
int insert(int v) {
TreeNode* parent = q.front();
TreeNode* temp = new TreeNode(v);
q.push(temp);
if(!parent->left){
parent->left = temp;
} else {
q.pop();
parent->right = temp;
}
return parent->val;
}
TreeNode* get_root() {
return root;
}
};
main(){
vector<int> v = {1,2,3,4,5,6};
TreeNode *root = make_tree(v);
CBTInserter ob(root);
cout << (ob.insert(7)) << endl;
cout << (ob.insert(8)) << endl;
tree_level_trav(ob.get_root());
}入力
木を [1,2,3,4,5,6] として初期化し、7 と 8 を挿入した後、ルートを取得する
出力
3 4 [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8]
計算量について
コンストラクタでは木全体を一度走査するため O(N)(N はノード数)の時間がかかりますが、insert 操作自体は O(1) で完了します。これは、挿入可能な位置を常にキューの先頭で管理しているためです。この仕組みにより、何度挿入を繰り返しても高速な操作が実現できます。
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