コーデック戦争をわかりやすく解説!GoogleとAdobeが争う動画圧縮技術の行方
ブラウザのベンチマークテストより退屈なもの、IPv6普及の話題より盛り上がらないもの――それは何だと思いますか?そう、それこそが、音声・動画フォーマットのデジタル圧縮の未来をめぐって繰り広げられている、メディア業界大手同士の「コーデック戦争」なのです。
とはいえ、皮肉はこのくらいにしておきましょう。コーデック戦争は、これまで何かと理由をつけては宣伝され、書かれ、語られてきましたが、読者が本当に知るべきこと――ファイル名やコーデックの名前ではなく、「自分がウェブで音楽や動画を楽しめるかに影響するのかどうか」――については、ほとんど触れられてきませんでした。今回は、その霧を晴らしてみたいと思います。

まずは基本から整理しよう
マルチメディアの世界は決して単純ではありません。一般の方の多くは、「コンテナ」と実際のソフトウェア(コーデック)の違いを理解していません。コンテナフォーマットとは、ファイルを入手したときに目にする .avi や .mov といった拡張子のことであり、コーデックは x264 のようなエンコード・デコードを行うソフトウェア実装のことです。通常、メディアプレイヤーはプラグインやライブラリの形でコーデックを備えており、メディアファイルとリアルタイムにやり取りしながら、圧縮・伸長(デコード)処理を行えるようになっています。
エンコード/デコードや映像・音声コンテナを扱えるソフトウェアには、mencoder、transcode、ffmpeg、VirtualDub、Avidemux、Kdenlive など、有名どころが数多くあります。私の「フランケンシュタイン・ムービー」の記事もその好例です。

つまり、人々が「コーデック」と口にするとき、それは普通、ソフトウェアやメディアファイルの中で動作するアルゴリズムの実装を指しています。そしてそれは、エンドユーザーからは見えない存在です。だからこそ、GoogleとAdobeの対立を巡るメディアの騒ぎの多くは、あまり意味を持たないのです。
順を追って説明しましょう。
戦争のあらまし
構図はこうです。GoogleはもうAdobeの「人質」になりたくありません。YouTubeの膨大な動画をH.264コーデックでエンコードし、視聴者にAdobe Flash Playerでの再生を依存させる現状は、コストがかかるうえ、Googleの成長の足かせにもなっています。そこでGoogleは、VP8というオープンな実装への移行を目指しています。これはHTML5と組み合わせることで、WebMという技術になります。まだピンとこないでしょうか?無理もありません。

もっと端的に言えば、Flash/H.264は旧来のやり方、WebMは新しい流れです。現在、アニメーションやメディア配信のウェブ市場はFlashが支配しています。Googleはこの現状を変えようとしており、Mozilla、Opera、さらにはMicrosoftまでもがこれを支持しています。一方のAdobeも、HTML5の波が不可避であることを認識しており、最終的には自社のFlash PlayerでVP8エンコードのメディアを再生できるようにするでしょう。
お察しのとおり、これは要するに、誰が市場と技術を支配し、誰がペースを決め、誰が価格を設定し、誰が最大のコーデックを握るか、という話です。確かに崇高な目的ではあるのですが、正直に言えば、かなり地味な争いです。

ユーザーにとって何を意味するのか
開発者でもない限り、答えは「何も変わりません」。実用上の観点では、何も変化はないのです。Internet Explorer 9、Firefox 4、Chromeといったモダンブラウザは、いずれもHTML5とWebMをサポートしているため、新しい技術がウェブに導入されても、その過程はユーザーには見えません。同様に、Flash Playerを使っていれば、引き続きオンラインでFlashメディアを視聴できます。実際、同じページ上でFlashとHTML5の動画を同時に再生することすら可能です。

HTML5が本格始動したときの世界を先取りして体験してみたい方は、YouTubeのHTML5トライアルを試してみるのがおすすめです。どちらの方式が好みかを判断する、絶好の機会になるはずです。
誰を応援すべきか?
もし時間に余裕があるなら、どちらを応援すべきでしょうか?当然ながら、弱者の立場に立つのが人情というものです。自由とオープンさの旗手が勝つべきだ、というのはいつの時代も同じ。この戦争も例外ではありません。広く知られたオープンなフォーマットが存在することで、標準化が進み、独占が抑えられ、技術全体の向上につながります。
一方、開発者やサイト運営者であれば、話は別です。技術の選択が収益や成功に直結するからです。重要なのは単にどのアルゴリズムが使われるかではなく、突き詰めれば「Flash vs HTML5」という図式です。この場合、きれいごとの世界ではなく、音声・動画配信の品質、スクリプト言語、バックエンド、デバッグツール、使いやすさ、移植性など、あらゆる要素が関わってきます。公平でいられるでしょうか?おそらく無理です。
この場合は、「実際にうまく動くもの」を支持すべきです。ただ、それがどちらなのかは、まだ決まっていません。Flashには長い実績があり、H.264系のコーデックも長年にわたって使われてきました。WebMはまだ新参者であり、これから多くの戦いが待ち受けています。

さらに詳しく知りたい方へ
さまざまな動画コーデックの違いをまとめた詳細な記事もあります。おそらく読むとかえって混乱するでしょう。でも、それでいいのです。そもそも一般ユーザーは、こうした細部まで気に掛ける必要はないのですから。
まとめ
以上、また一つ混乱しがちなテーマの謎が解けました。これであなたも、堂々と語れるようになったはずです。次に詳しい友人から「VorbisとTheoraとMatroskaとXviD、どれを支持する?」なんて聞かれても、きょとんとすることはありません。はっきりと答えてやりましょう。
エンドユーザーにとって、この戦争の行方はそれほど重要ではありません。ただし、Googleが勝利すれば、オープン化を軸としたデジタル革命が起き、その波が他の分野にも広がり、メディア各社にパッケージフォーマットや利用モデルの見直しを迫る可能性があります。
このウェブ上の戦いの帰結として、DRM(デジタル著作権管理)が完全に姿を消す日が来るかもしれません。それはすべての人にとって望ましいことです。だからこそ、Googleを応援すべきだ、とも言えるのです。もちろん巨大企業ゆえに批判も集めますが、この件に関しては弱者の味方をしているように見えます。それは十分意味のあることだと思うのです。……と思っていたのもつかの間。4月11日以降、私は少し自信がなくなりました。結局のところ、すべてはお金の問題なのかもしれません。
※本稿は執筆当時(IE9やFirefox 4などが最新だった頃)の状況を踏まえた内容です。技術環境はその後大きく変化しており、Flashはすでに提供を終了し、現在ではHTML5とH.264系コーデックがウェブ動画の標準となっています。
追記:硫黄島の銃撃と十字軍の画像は、パブリックドメインのものを使用しています。
それでは、また。
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