WindowsでHDD・SSDのファイルを安全に削除する方法|データが残る仕組みと完全消去ガイド
削除ボタンを押したとき、そのファイルはどこへ行くのでしょうか? 跡形もなく消え、ドライブに空白が残るだけなのでしょうか? パソコン歴が長い人なら、そうではないことをご存じでしょう。しかし、メールやSNS程度しか使わないユーザーの方は、考えたことすらないかもしれません。
実は、この仕組みを知っておくべき理由が2つあります。1つ目は、誤って削除したファイルを復元できる可能性があることを知るため。2つ目は、自分が復元できるということは、他人も同じように復元できてしまうというリスクを理解するためです。
削除されたファイルはどうなるのか
HDD(ハードディスクドライブ)の場合
Windowsでファイルを削除すると、まず「ごみ箱」に移動します。これにより、誤操作であっても元に戻せるわけです。では、ごみ箱からさらに削除するとどうなるのでしょうか? 実は、ほとんど何も起こりません。
ファイルはどこにも移動しません。そもそもごみ箱へ移動したときも、物理的に移動していたわけではなく、インデックス上の記録が「Documentsフォルダにある」→「ごみ箱にある」へ書き換えられただけなのです。
HDDの場合、このインデックスはMFT(Master File Table:マスターファイルテーブル)と呼ばれます。下の画像のように、左端の列がブロックアドレス、中央の列が16進数のデータ、右側の列がそのデータをテキスト表示したものです。
ファイルを「削除」しても、データ自体はドライブ上に残ったままです。MFTの情報が書き換わり、「Secret-File.txtがあった場所はもう使わないから、必要ならそこへ新しいデータを書き込んでいいよ」という状態になるだけです。実際に上書きされるまでは、古いデータはずっと残り続けます。上書きのタイミングは数分後かもしれませんし、数週間、数か月後かもしれません。
例えるなら、取り壊し予定の家のようなものです。住むことはできないけれど、ブルドーザーが来て別の建物が建つまでは、そこに存在し続けるのです。
次の画像では、左側の赤い×印が「上書き対象としてマークされたMFT領域」、ページアイコンのある項目が「保持マーク付きの領域」を示しています。右側には、エクスプローラーからは見えなくなっているのに、まだ残っているデータが表示されています。通常の削除の問題点がお分かりいただけるでしょう。
SSD(ソリッドステートドライブ)の場合
SSDでは事情が少し異なります。SSDは常にファイルをランダムに移動させながら管理しています。たとえば位置2871にあったファイルを削除しても、そのデータはいずれ別の場所へ移され、SSD自身が判断したタイミングでようやく上書きされます。
では、SSD上の特定のファイルだけを狙って安全に消去するには? 残念ながら、それは事実上不可能です。カリフォルニア大学の研究チームがSSDからのデータ消去の難しさを調査したところ、単一ファイルの安全な消去を試みても、4〜75%の情報が残留するという結果が出ています。しかも、この作業はドライブへの負担も大きくなります。
代わりにできる対策は2つ。SSD全体を暗号化しておくことと、TRIM対応のSSDを使用することです。
多くの人にとってこれは大きな問題ではありません。しかし、機密性の高い医療文書を扱う人や、少し心配性な人の中には、「削除した情報が他人に読まれるかもしれない」と気になる方もいるでしょう。そのデータを即座に、そして永久に消し去るにはどうすればいいのでしょうか?
「安全」とは何か
具体的な方法に入る前に、「安全」の定義を確認しておきましょう。結論から言えば、安全とはあなた自身がそう感じるレベルのことです。現在のセキュリティに満足しているなら、それがあなたにとっての「安全」です。万が一復元されても命に関わるようなデータでないなら、CDCサーバーから最後の天然痘サンプルのコードを消すような徹底した措置は不要でしょう。
以下、セキュリティレベルの低い順から順番に見ていきます。なお、ドライブ全体の消去方法に到達するまで、ここで紹介する方法は従来型のHDD向けです。
最も手軽な方法(セキュリティ低)
エクスプローラーでファイルを削除し、ごみ箱を空にする。これだけです。誰かが1週間以内にデータ復旧ソフトを使ってそのファイルを探しに来るとでも思わなければ、これで十分「安全」と言えます。対象となるのは、くだらないアニメGIFからおばあちゃんへの手紙まで、ありとあらゆる日常的なファイルです。(ちなみに、おばあちゃんにはちゃんと手紙を書いてあげてくださいね。きっと待っていますよ。)
やや安全な方法(HDDのみ)
前述のとおり、既存データを上書きすることは、古いデータを隠すためのかなり有効な手段です。これをファイル単位で行えるのが、一般に「ファイルシュレッダー」と呼ばれるツールです。
インターフェースはソフトによって異なりますが、動作原理は基本的に同じです。古いファイルを削除したうえで、HDD上のそのファイルがあった場所にゼロを書き込む、という流れです。
ただし、この方法は「やや安全」にとどまります。必要なときに確実に実行しなければならないからです。マイナンバーなどの重要情報が入ったファイルを安全に消したいのに、シュレッダーの使用を忘れてしまえば、その情報はしばらくドライブ上に残ったままになります。
この方法が向いているのは、自分に関係する機密情報を時々扱う人です。たまに出てくる税務申告書の控えや、削除したい銀行明細など。そうした場面でファイルシュレッダーは最も便利に活躍します。
中程度に安全な方法(HDDのみ)
より安全性を高めたい場合は、ドライブの空き領域を丸ごとワイプできるソフトを使いましょう。定番はCCleanerです。「Wipe Free Space(空き領域のワイプ)」オプションを選択すると、以前ファイルが存在していたブロックすべてにゼロが書き込まれます。
ファイルシュレッダーとの違いは、過去に削除したすべてのファイルが一括して対象になる点です。より徹底的な方法と言えます。ただし欠点もあります。処理にかなりの時間がかかるため、定期的に忘れず実行できるようスケジュール設定しておくのがおすすめです。
この方法が適しているのは、機密性の高いファイルを頻繁に削除する人です。ネットバンキングを多用する人やオンライン取引をしている人、あるいは重要データを暗号化済みの外付けドライブへ退避させて、PC上のコピーが不要になった人などが該当します。
最も安全な方法(HDD・SSD共通)
最も強力なのは、ドライブの内容を丸ごと消去する方法です。ただし、HDDとSSDでは構造が異なるため、同じ手法は両方には使えません。自分のドライブと状況に合った方法を選びましょう。
このレベルの消去が必要になるのは、たとえば新しいPCへ乗り換えて、古いPCを売却・譲渡・廃棄する場合や、機密情報を扱っていたPCを日常用途に転用する場合などです。
HDDの場合:フォーマット
「フォーマット」という言葉は、いくつかの異なる処理を指す包括的な用語です。単にMFTを削除して「データが全部消えたように見せる」だけのケースもあれば、ローレベルフォーマットと呼ばれる、全データをゼロで上書きする本格的な処理を指すこともあります。
Windows上からは、ハードディスク全体のローレベルフォーマットは実行できません。起動可能なフォーマットユーティリティが必要です。有名なのは「Darik's Boot and Nuke(DBAN)」です。
複数回の上書きを繰り返す強力な方式も選べますが、時間短縮やHDD寿命の観点からは、やりすぎになることも多いでしょう。RCMP TSSIT OPS-II方式やDoD Short方式で十分です。RCMPはカナダ王立騎馬警察、DoDは米国国防総省の略です。彼らの基準をクリアできるなら、一般用途には十分すぎるはずです。
SSDの場合:メーカー純正ユーティリティ
ほとんどのSSDメーカーは、自社製品を管理・安全消去するための専用ユーティリティを提供しています。主なメーカーのダウンロードリンクは以下のとおりです。
ダウンロード:Intel Solid State Toolbox / OCZ Toolbox / Corsair SSD Toolbox / Samsung Magician / SanDisk SSD Toolkit
パラノイア向けの方法(HDD・SSD共通)
米国国立標準技術研究所(NIST)には、極めて機密性の高いデータの破壊に関する基準があります。RCMPやDoDの方式よりもさらに過激で、シャーロック・ホームズがエルキュール・ポアロの背中に乗り、コロンボ警部が案内するという超一流探偵チームをもってしても、何も取り出せないレベルです。
粉砕(Disintegrate)。細断(Shred)。粉々に砕く(Pulverize)。焼却(Incinerate)。
これは比喩ではなく、NISTの実際の基準です。しかも基準を満たすには、NIST認可の焼却施設での処理が必要です。上の写真のような作業では基準を満たせません。
さて、あなたはどうする?
これで知識とリソースは揃いました。あとは使い方次第です。ただし、まだ盗み見対策を何もしていないなら、まずは安全な削除よりも先に、情報そのものの保護を優先すべきです。すでに他人の手に渡っている情報なら、自分のコピーをどんなに綺麗に消しても意味がありません。
あなたはどの方法でファイルを削除していますか? その方法に満足していますか? 消せなくて困った経験はありますか? ぜひコメントで教えてください。
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