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CPUのリッド剥がし(デリッディング)完全ガイド――手順と温度改善効果を徹底解説

CPUのリッド剥がし(デリッディング)完全ガイド――手順と温度改善効果を徹底解説

リッド剥がし(delidding)。かつては上級者だけが挑戦する、恐ろしい改造作業として知られていたこの手法をご存じだろうか?初心者のために説明すると、リッド剥がしとはCPU上部に搭載された放熱カバー(IHS:Integrated Heat Spreader)を取り外し、メーカーが塗布した純正サーマルペーストをより高性能なもの――通常は液金(液体金属)や高級サーマルペースト――に張り替える作業のことだ。

一昔前はカミソリの刃やクランプを使い、慎重にプロセッサとIHSを切り離すという、まさに命懸けのテクニックだった。シリコンダイを傷つけず(そして自分自身も傷つけずに)作業を完了させるには、高度な技術が必要だった。

かつては「やる意味がない」と言われていた

長らく、この作業は報われないことが多かった。ハイエンドモデルでも冷却性能の低い市販クーラーを使っても70℃を下回る時代には、「わざわざやる理由があるのか?」という疑問こそが最大の壁だった。オーバークロック時でさえ、まともな水冷(AIO)クーラーを使えば、シリコンの限界に達する前に温度が75〜85℃を超えることはほぼなかったのだ。

しかし今は違う。IntelとAMDによるコア数競争が激化し、マルチスレッド性能の覇権を巡る争いの中で、コア数と動作温度は急上昇している。特に従来型の製造プロセス(はんだ付けされていないチップ)を採用しているメーカーでは顕著だ。

その結果、Intel Core i7-8700Kなどでは負荷時に75℃まで到達するのは珍しくなくなった。9000シリーズやCore i9-9980XEでははんだ接合が採用されたものの、前世代のCoffee LakeやSkylake-XのHEDTチップを使い続けているユーザーにとって、リッド剥がしはオーバークロック体験と全体的な温度低下の両方で大きな改善をもたらす。

信じられない?実際のテスト結果を見てほしい。

Intel Core i9-7900X 温度テスト

アイドル時Prime95 バーンインテストPrime95 最大FPU発熱テストCineBench R15 マルチスレッド3DMark: Fire Strike CPU物理演算3DMark: Time Spy CPU物理演算
純正状態 @ 定格31°51°62°64°61°60°
純正状態 @ 4.4GHz30°68°DNF80°78°77°
リッド剥がし後 @ 定格23°40°55°55°55°53°
リッド剥がし後 @ 4.4GHz27°53°84°67°64°65°

検証環境:Asus X299 Prime Deluxe、Corsair Dominator Platinum DDR4 32GB(4×8GB)、NVIDIA GeForce GTX 1080。Intel Core i9-7900Xは10コアすべて4.4GHz・1.2VでOC。数値はすべて摂氏。

Intel Core i7-8086K 性能テスト

CineBench R15 マルチスレッド(℃)CineBench R15 マルチスレッド(スコア)CineBench R15 シングルスレッド(スコア)CPU VCore電圧(V)全コア最大クロック(GHz)
定格78°2121,446Auto4.3
OC97°2241,6821.365.2
OC+リッド剥がし83°2331,7531.485.4

検証環境:Asus Maximus XI Formula、G.Skill Trident Z DDR4 32GB(2×16GB)、NVIDIA GeForce GTX 1080。i7-8086Kは温度差を示すため、日常使用非推奨の1.48VまでOCした。

今のリッド剥がし事情

近年、愛用のプロセッサのリッド剥がしに挑戦する愛好家が増えるにつれ、各メーカーも過去よりも簡単かつ安全に行える専用ツールを開発してきた。現在ではAMD Ryzen 3 2200GからSkylake-XのCore i9-7980XEまで、幅広いCPUに対応した手頃な価格のリッド剥がしキットが入手可能で、自宅でも十分に挑戦できる改造となっている。

これからその方法を紹介していこう。ただし事前に警告しておきたい。リッド剥がしを行えば間違いなく保証は無効になる。それでも一定のリスクは残るという点も忘れてはならない。

今回の解説ではDer8auer氏のDelid Die Mate 2(Intel LGA1151対応)およびDelid Die Mate-X(Intel LGA2011-3対応)を使用する。ドイツのCaseKing、英国のOverclockers、米国のAmazon.comから購入できる。

必要な道具

  • リッド剥がしツール(Delid Die Mate 2:約43ドル/30ポンド、Delid Die Mate-X:約102ドル/80ポンド)
  • 液金またはサーマルペースト(Thermal Grizzly Conductonaut、Noctua NT-H1を推奨)
  • アルコールウェットティッシュまたは99%イソプロピルアルコール
  • ペーストヘラ
  • 耐熱接着剤
  • マイクロファイバークロス

Coffee Lakeプロセッサのリッド剥がし

まず最初はIntelのLGA1151ソケット対応Coffee Lakeプロセッサから。デモにはIntel Core i3-8350Kを使用する。ターボブーストやハイパースレッディングは非搭載だが、旧世代のi5シリーズに近いバランスの良いゲーム向け・OC向けチップだ。

このガイドでは、ダイとIHSの間のサーマルペーストをNoctuaのNT-H1に交換する方法を紹介する。Intel純正のペーストは品質が低めで、これを交換することでクロックや負荷にもよるが、3〜5℃程度の温度改善が期待できる。

液金はさらに優れた選択肢だが(後ほど紹介)、導電性があるためPCB側面に付着すると修復不可能なダメージを与えるリスクがある。上記の表を見ると、液金を使えば平均8〜15℃の温度低下を実現できることが分かるだろう。それでは始めよう。

手順1:Delid Die Mate 2の開封

CPUのリッド剥がし(デリッディング)完全ガイド――手順と温度改善効果を徹底解説

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まずはDelid Die Mate 2を開封し、分解して構造を理解しよう。パッケージには小型のCPU固定ホルダー、IHSに密着するスライドブロック、六角ボルト、ワッシャー、六角レンチ、クランプが入っている。

すべて分解し、仕組みをしっかり把握しておこう。その後、CPUを装置にセットする。CPU左下隅の金色の三角マークを、リッド剥がしツール側の三角マークに合わせる。CPUソケットへの取り付けと同じ要領だ。

手順2:IHSの取り外し

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次に、上部のIHS除去パーツを装置に慎重に差し込む。CPU固定ホルダーの上部にある2本のレールに沿ってスライドさせ、ネジ穴と位置が合っていることを確認しよう。

付属の六角ボルトで固定する。ワッシャーは必ず外側になるようにセットすること。手で締め、それ以上回らなくなるまで続ける。

ここまで来たら六角レンチでIHS除去パーツを押し込む。これによりIHSがCPUから押し出される。多少の力が必要で、音が出ることもあるため少し怖いかもしれないが、徐々にIHSがダイから外れていくのが見えるはずだ。

手順3:清掃とペースト塗布

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IHSがきれいに外れたことを確認したら、ボルトを緩めて除去パーツを取り外し、IHSを慎重に持ち上げてCPUを装置から取り出そう。

CPUの重量の大部分はIHSが占めているため、取り出す際は落とさないよう注意すること。

取り出したら、アルコールウェットティッシュかマイクロファイバークロスとイソプロピルアルコールを使って、CPUとIHS両面の純正ペーストをきれいに拭き取る。その後、自分のペーストを塗布する。シリコン中央に小さな点状に置き、ヘラや使わなくなった名刺・カードで薄く均一に広げよう。導電性のないペーストを使えば、多少PCBにはみ出しても問題ない。

次に、IHS側に残った元の接着剤もきれいに除去しよう。新しい接着剤を塗り直すとしても、古い接着剤を除去すればIHSとダイの距離が縮まり、熱伝導効率が向上する。爪で削り取るのが手軽だが、刃物を使ってもよい。

手順4:IHSの再固定

CPUのリッド剥がし(デリッディング)完全ガイド――手順と温度改善効果を徹底解説

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ここで2つの選択肢がある。1つ目は、CPUをマザーボードのソケットに挿し、その上にIHSを載せて、マザーボードのソケット留め具で固定する方法。もう1つは、IHSを接着剤で貼り直してクランプで固定する方法だ。後者の方が後々マザーボード間での付け替えが楽になる。

筆者は接着剤での固定を推奨する。耐熱性・防水性のある接着剤を用意し、CPU基板上に残った接着剤の跡に沿って少量塗布する。その後IHSを戻す。

向きに注意。CPUの金色の三角マークを確認し、IHSの文字が左下側に来るように合わせよう。ヒートスプレッダを接着剤の上にそっと乗せる。初回で失敗しても大丈夫、持ち上げてやり直したり、指で微調整すればよい。

手順5:硬化待ち

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クランプ機構をCPUの上に慎重にセットする。Delid Die Mate 2の底部にはクランプが収まる切り欠きがあるので、そこにはめ込み、CPUに圧力がかかるまで締め込む。

理想的には24時間放置して接着剤を完全硬化させるのがベストだが、急ぎの場合は2〜3時間でも十分だろう。

Skylake-Xのリッド剥がしと液金適用

i3-8350Kが完了したので、次はより複雑なSkylake-Xシリーズのリッド剥がしと、液金(Thermal Grizzly Conductonaut)の適用方法を紹介する。液金はどちらのCPUにも使えるが、導電性ゆえに通常のペーストより扱いが難しい。

Skylake-Xには固有の難点がある。それはCPU上部のIHSの外側に突起状のRFIDチップが搭載されていることだ。これを折ってしまうと終わりだ。

そのため、専用の別工具(今回の例ではDelid Die Mate-X)が必要になる。標準工具の約2倍の価格だが、IHSを外す際にRFIDチップを折らないよう設計されている。

手順1:CPUのリッド剥がし

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Delid Die Mate-Xは先ほどのLGA1151用ツールより威圧感のあるデザインをしている。これはすべて、各Skylake-Xチップの角に搭載されたRFIDチップ(Broadwell-Xにはなかった)のためだ。キット内容物は一体型のリッド剥がしツール、IHSを固定するためのクランプ、六角レンチだ。

Delid Die Mate 2と同様、チップを正しい向きでセットする。金色の三角マークを、ツール内の白い三角マークに合わせよう。

セットしたら六角ボルトを手で締め、IHS除去パーツがIHSに接触するまで進める。

さあ、ここからが本番だ。Coffee Lakeとは異なり、IHSが大きいため外すのに相当な力が必要になる。六角レンチを差し込み、「ガッチリ」という感触が伝わるまで回そう。これがIHSが外れたサインだ。ボルトを緩めてIHSを手で取れるか確認しよう。まだ固い場合は再度締め込んで少し強めに力を加えればよい。

手順2:清掃と液金塗布

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作業完了したらCPUを取り出し、清掃に入る。アルコールウェットティッシュか、イソプロピルアルコールとマイクロファイバークロスを使用する。IHSに残った接着剤も同様に爪や刃物で除去しておこう。

液金を塗布するには、注射器の針を装着し、シリコン上に一滴垂らす。量は少なくてよい。少量で驚くほど広範囲をカバーできるうえ、導電性があるためPCBに付着すると悲惨なことになる。

出しすぎた場合は注射器で吸い戻せる。まず最小限から始め、足りなければ追加すればいい。十分な量が載ったら、付属の綿棒でシリコン全面に丁寧に広げよう。

手順3:IHSの再取り付け

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防水性接着剤をCPU基板上の黒い接着剤ライン全体に一本塗り、CPUをDelid Die Mate-Xに戻す。その後、ヒートスプレッダをCPUの上に載せる。

位置合わせのコツは、先述のRFIDチップを避けるためにIHS上部が短くなっている点に注目することだ。金色の三角マークはやはり左下側に配置され、文字は左上から始まる。

あとはクランプを装着し、IHSに圧力をかけて固定するだけだ。こちらも24時間の硬化を推奨するが、急ぎなら2〜3時間でも問題ない。

まとめ

以上で、2つのIntelプロセッサのリッド剥がしが完了し、熱伝達材の張り替えも終了した。

では本当に価値はあるのか?それはあなたのニーズとリスク許容度次第だ。はんだTIMを採用していない古いCPU(第9世代以前のIntel)を使っていて、OCに興味がある、あるいは静音で低温な運用を好むなら、リッド剥がしは確実に大きな違いをもたらす。しかし、最高性能と最良の温度が不要なら、費用とCPU破損のリスクを考えると割に合わないかもしれない。

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