今まさに成長中の10の技術がもたらす医療の未来とは?【前編】
現代社会はかつてないスピードで変化し続けています。デジタルネットワークからウェアラブル端末まで、ヘルスケア業界は大規模な技術的変革の真っ只中にあります。医療テクノロジーがかつてない速度と精度で前進する一方、ほんの数十年前には当たり前だった手法が次々と時代遅れになり、多くの人々がその激しい変化の波に置き去りにされています。しかし、少し先の未来を見据えてみると、昨日の医師たちが想像すらできなかった、全く新しい医療の世界が芽吹き始めているのが見えてきます。
レイ・カーツワイルは「テクノロジーは指数関数的に進歩している」と述べ、一方でピーター・ティールは「技術革新は期待に応えられていない」と語ります。さまざまな思想や学派がありますが、医療の未来については、たった2つのことだけが確かです。
テクノロジーだけでは、今日の医療が世界的に直面する問題を解決することはできません。そして、人間ならではの温かみだけではもはや不十分です。そのため、破壊的なイノベーションを活用しながらも、患者と医療従事者の間の人的なつながりを保つという、新たなバランスが必要とされています。ここでは、それを可能にしうる10の技術を紹介します。
1. バーチャルリアリティ(VR)

2016年4月14日、がん外科医のシャフィ・アーメド氏がロンドン王立病院で、VRカメラを使用した手術を実施しました。これは医療史上初の試みで、誰もが「Medical Realities」のウェブサイトや「VR in OR」アプリを通じて、手術の様子をリアルタイムで視聴することができました。
VRの潜在的な応用範囲は、ゲームやエンターテインメントにとどまりません。ヘルスケア分野はVRの最大の採用分野の一つであり、手術シミュレーション、恐怖症の治療、ロボット手術、スキルトレーニングなどに幅広く活用されています。
今後、医学部の学生は人体の死体ではなく、バーチャル解剖台で解剖学を学ぶようになるでしょう。これまで分厚い教科書で学んでいた内容は、拡張現実(AR)を活用した仮想3Dソリューションやモデルへと生まれ変わります。解剖モデルを自由自在に観察・変更・作成できるだけでなく、構造を細部まで分析することも可能になります。現在、医療研修向けのさまざまなソフトウェアが開発されています。
2. ホログラフィー

病院は治療を受けるために訪れる場所ですが、アメリカでは毎年200万人以上が院内感染にかかり、その結果10万人が死亡していることをご存知でしょうか。さらに、これらの感染症の治療には約200億ドルのコストがかかると推定されています。
感染拡大の主な原因の一つは、キーボードやマウスなどの入力デバイスである可能性があります。これらの機器は消毒液を含んだ布で拭かれるものの、適切に清掃されていません。何百人もの患者の細菌が機器の隙間にどれほど溜まっているか、想像してみてください。
キーボードやマウスのようなホログラフィックなデータ入力装置は、こうした感染リスクの低減に役立つかもしれません。この技術が実現すれば、パソコンにデータを入力するための物理的なハードウェア自体が不要になり、画面やキーボードを壁やテーブルに投影できるようになります。そうなれば、臨床現場のどこでも簡単にアクセスできる環境が実現するでしょう。
3. 拡張現実(AR)

ノバルティスの幹部は、Googleが特許を取得したデジタルコンタクトレンズが2016年に登場すると発表しました。涙液から血糖値を測定できるこのレンズは、糖尿病の治療と管理を一変させる可能性を秘めています。さらに、Microsoftの「HoloLens」も2016年に登場し、医療教育から建築・工学まで幅広い分野に大きな影響を与えると期待されています。医学部の学生は、ホルマリンの刺激臭を気にすることなく、一日中どんな角度からでも解剖作業に取り組めるようになるでしょう。
ドイツのあるクリニックでは、手術室でiPadを使ったARアプリケーションの実験が始まっています。手術中、外科医は臓器を切り開くことなく、肝臓の血管などの解剖学的構造を透過して確認できます。これにより、より精密な切除が可能になります。
4. 3Dプリンティング

Organovo社は、バイオマテリアルの3Dプリンティングで長年注目を集めてきた企業です。同社は2014年に肝臓組織のバイオプリンティングに成功したと発表し、移植用の肝臓部分の印刷まであと4〜6年と見られていました。まずは、バイオプリントされた肝臓が製薬業界において、新薬の毒性分析における動物実験の代替として活用されるでしょう。各種試験をクリアすれば、2020年代には3Dプリントされた肝臓移植が実現すると期待できます。バイオニックな耳やより単純な構造の器官は、患者のベッドサイドで印刷される日が来るかもしれません。
ワシントン州立大学の研究チームは、3Dプリンターを使用して、本物の骨と同じ強度と柔軟性を備えたハイブリッド素材の開発に成功しました。使用したのはProMetal社の3Dプリンターで、素材は亜鉛・シリコン・リン酸カルシウムの組み合わせです。このハイブリッド素材は極めて良好な性能を発揮し、実際にウサギを用いた試験にも成功しています。
印刷された骨は骨折部位に埋め込まれ、本物の骨が足場(スキャフォールド)のようにその周囲に成長していきます。プロセスが完了すると、モデルは自然に分解されます。さらに、骨素材を幹細胞と組み合わせた場合、自然骨の再生速度は通常よりもはるかに速くなることが確認されました。
この技術の真の価値は、適切な原材料の組み合わせが確立されれば、あらゆる組織や完全な臓器を3Dプリンターで造形できる可能性にあるのです。
5. 人工知能(AI)

最も優れた教授でも記憶できる論文はごくわずかですが、PubMedのデータベースには実に2,500万件以上の論文が登録されています。人間がすべてを追いかけることはもはや不可能です。しかし、強力な助けが登場しつつあります。IBMのスーパーコンピューター「Watson」は、複数のクリニックで診断の意思決定支援としてテストされています。医師が患者と対話している間に、Watsonは診療記録と世界中の医学文献を照合し、提案を行います。最終的な判断は、必要な情報をすべて揃えた上で、常に医師が下す仕組みです。
IBMの「Medical Sieve」プロジェクトは、スマートソフトウェアで大多数の病変の一次診断を担い、放射線科医が毎日何百枚もの画像をチェックする代わりに、最重要ケースに集中できる環境を作ることを目指しています。
AtomWiseは、スーパーコンピューターを活用して、どの候補薬が有効でどれが無効かを事前に予測することで、医薬品開発コストの削減を目指しています。また、Google DeepMind Healthは診療記録のデータをマイニングし、より質の高い迅速な医療サービスの提供を目指しています。このプロジェクトはまだ初期段階にあり、現在は英国のモーフィルズ眼科病院NHS財団トラストと提携し、眼科治療の改善に取り組んでいます。
6. Google Brain

未来学者のイアン・ピアソンは著書『You Tomorrow』の中で、神経学的情報に基づいてデジタル上の自分自身を作れる日が来るかもしれないと述べています。つまり、自分の心をコンピューターにアップロードし、デジタル形式で生き続けることが可能になるというのです。Googleが究極の人工知能制御ブレインの創造のためにレイ・カーツワイルを迎え入れたことを考えると、そんな未来はそう遠くないかもしれません。私たちは、不老不死の秘密を間違った場所で探していたのかもしれません。
次回の記事では、医療とヘルスケアの未来に影響を与える残り5つの技術について詳しく解説します。
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