Windows 10 Enterpriseの仮想セキュアモード(VSM)とは?仕組みと有効化手順を解説
Windows 10 Enterpriseの仮想セキュアモード(VSM)とは
Windows 10 Enterprise(このエディションのみに搭載)には、Hyper-Vの新コンポーネントとして「仮想セキュアモード(Virtual Secure Mode:VSM)」が提供されています。VSMは、ハイパーバイザー上で動作する保護されたコンテナ(仮想マシン)であり、ホスト側のWindows 10およびそのカーネルから完全に分離されています。
セキュリティ上きわめて重要なシステムコンポーネントは、この保護された仮想コンテナ内で実行されます。VSM内ではサードパーティ製のコードを実行できず、コードの整合性は常時監視され、改ざんが検出されます。このアーキテクチャにより、たとえホストWindows 10のカーネルが侵害された場合でも、カーネルからVSMへ直接アクセスすることは不可能なため、VSM内のデータは守られます。
さらに、VSMコンテナはネットワークに接続できず、誰もその中で管理者権限を取得できません。暗号化キーやユーザー認証データなど、漏洩時に深刻な被害をもたらしうる情報をVSM内に安全に保管できるため、攻撃者がドメインユーザーアカウントのローカルキャッシュデータを悪用して企業ネットワークへ侵入することを防げます。
VSM内で動作する主なシステムコンポーネント
- LSASS(ローカルセキュリティサブシステムサービス):ローカルユーザーの認証と分離を担うコンポーネントです。「Pass-the-Hash」型の攻撃やmimikatzなどのツールからシステムを保護します。つまり、システムに登録されたユーザーのパスワード(ハッシュ)は、ローカル管理者権限を持つユーザーであっても取得できません。
- 仮想TPM(vTPM):ゲストマシン向けの合成TPMデバイスで、ディスク内容の暗号化に必要となります。
- OSコード整合性監視システム:OSのコードを改ざんから継続的に保護します。
補足:Shielded Virtual Machines(シールドされた仮想マシン)やDevice Guardといったセキュリティ技術もVSM上で動作します。また、ホストOSとゲストOSはAPIインターフェースを介してVSMコンテナと連携することも可能です。
VSMのハードウェア要件
- UEFI、Secure Boot、Trusted Platform Module(TPM)のサポート(セキュアなキー保存のため)
- ハードウェア仮想化機能のサポート(Intel VT-x、AMD-V以降)
Windows 10で仮想セキュアモード(VSM)を有効にする方法
VSMを有効化するには、以下の手順に従います。
- UEFIのSecure Bootを有効にします。
- Windows 10をドメインに参加させます(VSMが保護するのはドメインユーザーアカウントのみで、ローカルアカウントは対象外です)。
- Hyper-Vの役割をインストールします(検証環境では、まず「Hyper-Vプラットフォーム」をインストールし、続けて「Hyper-V管理ツール」をインストールしました)。
- グループポリシーエディター(gpedit.msc)でVSMを有効にします。
[コンピューターの構成] → [管理用テンプレート] → [システム] → [Device Guard] → [仮想化ベースのセキュリティを有効にする]
このポリシーを「有効」に設定し、「プラットフォームセキュリティレベルを選択する」で「Secure Boot」を選択します。あわせて「Credential Guardを有効にする」(LSA分離)にもチェックを入れます。 - BCDを設定して、Windows 10をVSMで起動するようにします。
bcdedit /set vsmlaunchtype auto
- コンピューターを再起動します。
VSMが有効になっているか確認する方法
VSMがアクティブかどうかは、タスクマネージャーに「Secure System」プロセスが存在していることで確認できます。
また、システムログに「Credential Guard (Lsalso.exe) が開始され、LSA資格情報を保護します」というイベントが記録されていることでも確認可能です。
VSMのセキュリティをテストする方法
VSMが有効なマシンにドメインアカウントでログオンし、ローカル管理者権限で以下のmimikatzコマンドを実行してみましょう。
mimikatz.exe privilege::debug sekurlsa::logonpasswords exit
その結果、LSAが分離された環境で動作しているため、ユーザーのパスワードハッシュを取得できないことが確認できます。
一方、VSMが無効なマシンで同じ操作を行うと、ユーザーパスワードのNTLMハッシュを取得できてしまい、Pass-the-Hash攻撃に悪用される危険性があります。この違いこそが、VSMによる認証情報保護の効果を如実に示しています。
参考:Enabling Virtual Secure Mode (VSM) in Windows 10 Enterprise Build 10130
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