メタはなぜFacebookの顔認識システムを廃止するのか?その背景と影響を徹底解説
2021年11月2日、Meta Platforms社(以下メタ)は、Facebook上の顔認識システムを今後数週間以内に停止し、蓄積されていた顔データを削除すると発表しました。
Facebookが顔認識機能を導入したのは2010年のことです。その後11年間で、同社は10億人以上の「フェイスプリント」と呼ばれる顔認識プロファイルを蓄積しており、これは世界最大級のコレクションとされています。
今回、メタはこれらの膨大な顔データをすべて削除する方針を打ち出しました。本記事では、この決定が意味するものと、メタがこうした判断に至った背景について詳しく見ていきます。
顔認識技術とは何か?
顔認識とは、写真や映像から顔の特徴を読み取り、人物を特定するソフトウェア技術のことです。特に重要な特徴とされるのが、両目の間の距離や、額からあごまでの距離といった顔のパーツ間の寸法です。
実は、顔認識ソフトウェアが判別に使用できる特徴は最大68項目にも及びます。これらの情報を組み合わせることで、一人ひとりに固有の「フェイスプリント(顔の署名)」が生成されます。
フェイスプリントは、その人だけに属する数式のような形で表現されます。企業はこのデータをデータベースに登録し、他のフェイスプリントと照合することで一致する人物を見つけ出します。
顔認識は生体認証セキュリティの中核を担う技術であり、法執行機関、スマートフォンメーカー、ソーシャルメディアなど、さまざまな分野で活用されています。Facebookでは「DeepFace」と呼ばれる独自アルゴリズムを採用し、写真や動画への自動タグ付けや、タグ付け候補の提案などに利用してきました。
メタはなぜFacebookの顔認識を無効化するのか?
メタが公式ブログで示した理由は、「規制当局が顔認識技術を統制する明確なルールを提示していない」という点にあります。この規制の空白状態により、ユーザーの間ではプライバシーに関する不安が広がっており、メタはこの不確実性ゆえに、Facebookでの顔認識利用を制限せざるを得ないとしています。
しかし、この決定の背景には、規制当局やユーザーからの圧力の高まりも無視できません。ビッグテック各社は、日々収集される膨大なデータの扱いやビジネス慣行について厳しい目を向けられており、メタの判断もその文脈で理解する必要があります。
巨額の罰金と訴訟の歴史
実際、Facebookは過去にも顔認識をめぐって大きな代償を払っています。2020年7月には、事前通知や書面による同意なしに写真タグ付け機能の一環としてフェイスプリントを作成・保存したとして、米イリノイ州の約160万人のユーザーに総額6億5,000万ドル(約750億円)の和解金を支払うことで合意しました。
さらにその1年前の2019年には、連邦取引委員会(FTC)から、8,700万人分のユーザーデータを英政治コンサルタント会社Cambridge Analyticaに不適切に提供した責任を問われ、50億ドルという驚異的な額の罰金を科されています。
加えて記事執筆時点では、内部告発者フランシス・ハウゲン氏が「Facebookペーパーズ」と呼ばれる内部資料を公開し、「Facebookは真実よりも利益を優先している」と主張する一大スキャンダルにも直面しています。こうした一連の動きが、今回の決定に影を落としていることは間違いないでしょう。
顔認識の停止はプライバシー向上につながるのか?
重要なのは、メタが顔認識技術そのものを放棄するわけではないという点です。同社は引き続きこの技術を活用しますが、適用範囲を大幅に絞り込む方針です。
今後、写真や動画への自動タグ付けは廃止されますが、その一方で、ロックされたアカウントへのアクセス支援、金融サービスにおける本人確認、個人デバイスのロック解除などの用途で顔認識が使われる可能性があります。
ただし、見逃せないのがメタバースとの関係です。メタバースを実現するためには、従来よりもはるかに大規模なデータ収集が必要になります。たとえば拡張現実(AR)デバイスは、アバターを作成しメタバース内で動作させるために、ユーザーの視線や表情といった生体データを常時監視・収集しなければなりません。
ユーザーはメタバースにおいて自分の生体データを完全にコントロールできるのでしょうか。利用に際して書面による同意を求められるのでしょうか。それとも、私たちがまだ想像もしていない新たな形の悪用が発生するのでしょうか。その答えは、今後明らかになっていくことでしょう。
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