モスクワの監視カメラ顔認識システム:治安向上の裏にある苦い現実

世界中の多くの国では、街を歩けばどこでも防犯カメラ(CCTV)を目にするのが日常となっています。その中でもロシアの首都モスクワは別格で、集合住宅の入り口まで含め、市内全体に10万基を超えるカメラが設置されています。2016年12月、AI開発企業NTechLabはモスクワ市政府と提携し、この監視インフラの中核に顔認識システムを導入しました。2017年9月28日の報道によれば、それまで長年捕まえられなかった犯罪者6人が、このシステムによって検挙されたといいます。しかし、あらゆる市民を自動的に識別できる技術によって、常に見張られている社会とは一体何なのでしょうか。
何が問題になり得るのか?

指名手配犯の動きや行動パターンを追跡するために、都市に十分な監視網を整備すべきだという主張には一理あります。モスクワでの検挙実績は、何年もの間逃走を続けてきた犯人たちをも捕らえられるほど、システムが意図通りに機能していることを証明しています。しかし見過ごせないのは、1つの都市にこれほど多くのカメラがあれば、市政府が市民や観光客一人ひとりの動きを事実上すべて追跡できてしまうという不気味な現実です。都市規模の監視システムには、悪用されるリスクが極めて大きく伴います。
殺人犯が捕まり正義が果たされることには、多くの人が賛同するでしょう。しかし問題なのは、「法を破る者」の定義自体が、これほど大規模な監視を行う同じ組織によって決められてしまうかもしれないという点です。例えば、特定の服装を禁止することで表現の自由を制限する社会が、この監視モデルを採用したらどうなるでしょうか。その日は「間違った服」を着ていただけで、逮捕される人が出てくるかもしれません。
FindFaceスキャンダル

監視カメラ実験以前、NTechLabは「FindFace」というプラットフォームを通じて、自社の技術を一般公開していました。ユーザーは誰かの写真をアップロードするだけで、ロシア版Facebookとも呼ばれるSNS「VKontakte(VK)」のプロフィールを特定できたのです。ところが一部の悪意ある人々がこのソフトを悪用し、成人向け女優のVKプロフィールを見つけ出しては、その家族や友人に接触して嫌がらせをする事件が発生しました。新しい友達との出会いを目的として作られたFindFaceは、結果的に世界中のストーカーにとって格好のツールと化してしまったのです。
善意から生まれた取り組みが目標を外れるとき

顔認識対応の監視カメラ基盤もFindFaceも、当初は立派な理念のもとに作られました。一方は犯罪者を捕まえるため、もう一方は人と人との距離を縮めるためです。しかし、人間の本性と国家機関の性質を考え合わせると、このソフトウェアが実際にどう使われるかは、開発者の意図とは違う姿を描き出します。私たちはテクノロジーを、自分の生活だけでなく他人をコントロールする手段として使いたがる傾向があります(子どものスマホに位置追跡アプリを入れる親などがその典型です)。正しく使えば人々の安全を守る力になりますが、悪意ある手に渡れば、FindFaceもモスクワの顔認識監視網も、罪のない人々の人生を一変させてしまう可能性を秘めているのです。
政府による監視を支援するテクノロジーは、もっと増やすべきでしょうか、それとも減らすべきでしょうか。ぜひコメント欄であなたの考えを聞かせてください。
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