データ構造解説:二分探索木の先行順(プレオーダー)トラバーサルを再帰で実装する方法
この記事では、二分探索木(Binary Search Tree)における先行順トラバーサル(プレオーダー走査)の手法を、再帰を用いた実装とともに詳しく解説します。先行順トラバーサルは、木構造の各ノードを「根 → 左部分木 → 右部分木」の順に訪問する走査方法です。
対象となる二分探索木
まず、次のような二分探索木を例として考えます。

この木に対して先行順トラバーサルを実行すると、ノードは以下の順序で訪問されます。
走査順序:10, 5, 8, 16, 15, 20, 23
この順序になる理由は、まず根(10)を出力し、次に左部分木(5 → 8)を処理し、その後に右部分木(16 → 15 → 20 → 23)を再帰的に処理していくためです。
アルゴリズム
先行順トラバーサルの基本的なアルゴリズムは次のように表せます。
preorderTraverse(root):
Begin
if root is not empty, then
print the value of root
preorderTraversal(left of root)
preorderTraversal(right of root)
end if
End
手順を日本語で整理すると以下の通りです。
- 現在のノード(根)が存在するか確認する
- 存在する場合、まずそのノードの値を出力する
- 続いて左の子ノードに対して同じ処理を再帰的に実行する
- 最後に右の子ノードに対して同じ処理を再帰的に実行する
C++による実装例
それでは、上記のアルゴリズムをC++で実際に実装してみましょう。ノードの挿入機能も含めた完全なサンプルコードです。
#include<iostream>
using namespace std;
class node{
public:
int h_left, h_right, bf, value;
node *left, *right;
};
class tree{
private:
node *get_node(int key);
public:
node *root;
tree(){
root = NULL; //最初は根をNULLに設定
}
void preorder_traversal(node *r);
node *insert_node(node *root, int key);
};
node *tree::get_node(int key){
node *new_node;
new_node = new node; //新しいノードを動的に生成
new_node->h_left = 0; new_node->h_right = 0;
new_node->bf = 0;
new_node->value = key; //渡されたキーの値を保存
new_node->left = NULL; new_node->right = NULL;
return new_node;
}
void tree::preorder_traversal(node *r){
if(r != NULL){ //ノードが存在する場合、根→左→右の順で訪問
cout << r->value << " ";
preorder_traversal(r->left);
preorder_traversal(r->right);
}
}
node *tree::insert_node(node *root, int key){
if(root == NULL){
return (get_node(key)); //木が空の場合、新ノードを根とする
}
if(key < root->value){ //キーが根の値より小さければ左へ
root->left = insert_node(root->left, key);
}else if(key > root->value){ //キーが根の値より大きければ右へ
root->right = insert_node(root->right, key);
}
return root; //キーが既に存在する場合は挿入しない
}
main(){
node *root;
tree my_tree;
//木にいくつかのキーを挿入する
my_tree.root = my_tree.insert_node(my_tree.root, 10);
my_tree.root = my_tree.insert_node(my_tree.root, 5);
my_tree.root = my_tree.insert_node(my_tree.root, 16);
my_tree.root = my_tree.insert_node(my_tree.root, 20);
my_tree.root = my_tree.insert_node(my_tree.root, 15);
my_tree.root = my_tree.insert_node(my_tree.root, 8);
my_tree.root = my_tree.insert_node(my_tree.root, 23);
cout << "Pre-Order Traversal: ";
my_tree.preorder_traversal(my_tree.root);
}
コードのポイント
- get_node関数: 新しいノードを動的に確保し、初期化して返します。
- insert_node関数: 二分探索木の性質(左の子は親より小さく、右の子は親より大きい)に従ってノードを挿入します。重複するキーは挿入されません。
- preorder_traversal関数: 再帰呼び出しにより、「値の出力 → 左部分木 → 右部分木」の順に処理を行います。
実行結果
上記のプログラムをコンパイルして実行すると、次の出力が得られます。
Pre-Order Traversal: 10 5 8 16 15 20 23
期待どおり、木の図と同じ走査順序でノードの値が出力されていることが確認できます。先行順トラバーサルは、木の構造を複製したり、式木(expression tree)から前置記法(ポーランド記法)の式を生成したりする場面などで活用される重要な走査手法です。
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