Upstash KafkaとMongoDBコネクタで実現する低レイテンシセグメンテーションプラットフォームの構築
はじめに
セグメンテーションプラットフォームは、顧客や製品といった関連データを理解し、分類するうえで重要な役割を担います。
セグメンテーションとは、一定の基準に基づいて大きなグループを、より均質性の高い小さなサブグループへ分割することです。たとえばECサイトにおける顧客セグメンテーションでは、パーソナライズされたマーケティング施策の立案、ターゲットを絞ったプロモーションの実施、きめ細かなショッピング体験の提供などが可能になります。
目次
- 要件の把握
- 基本アーキテクチャ
- アーキテクチャ構成要素
- 設計上の課題
- 提案ソリューション
- まとめ
1. 要件の把握
EC向けの顧客セグメントを対象とした低レイテンシのセグメンテーションプラットフォームを設計する際には、リアルタイム処理、ユーザー体験、そして顧客行動の変化の速さに関わる特有の課題に直面します。ここでは、想定される主な課題を整理します。
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大規模かつ動的なデータセット
- ECプラットフォームでは、顧客プロファイル、商品カタログ、取引履歴など、絶えず変化する大規模なデータセットを扱います。
- こうした膨大なデータを、低レイテンシを維持しながらリアルタイムに管理・処理することは大きな挑戦となります。
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スケーラビリティ
- 変動するワークロードに対応するには、スケーラビリティを考慮した設計が不可欠です。処理ユニットを追加して水平方向に拡張しつつ、レイテンシを犠牲にしないためには、綿密なアーキテクチャ設計が必要です。
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非同期処理
- 非同期処理を活用すれば、コンポーネント間の結合度を下げ、システム全体の応答性を高められます。ただし、複雑化や遅延を招かずに非同期通信を管理するには、慎重な設計が求められます。
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データフローとパイプライン
- 低レイテンシシステムにおいては、効率的なデータフローと処理パイプラインの設計が極めて重要です。
- コンポーネント間のデータ転送時間を最小限に抑え、処理ステップの順序を最適化することが、全体のレイテンシに大きく影響します。
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マイクロサービスアーキテクチャ
- マイクロサービスアーキテクチャを採用すれば、スケーラビリティと柔軟性が向上します。しかし、レイテンシを増加させずにマイクロサービス間のシームレスな通信を実現するのは容易ではありません。
- 効率的なAPI設計とサービス間通信の管理が成功の鍵となります。
2. 基本アーキテクチャ
セグメンテーションプラットフォームは、次の3つの主要サブシステムで構成されます。

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コンピュートサービス(オフラインバッチ計算/オンライン計算)
- Sparkジョブを使用して、生データからユーザーセグメントを抽出します。
- Sparkジョブはデータレイクからデータを取得し、クレンジングと検証を行います。
- 処理結果はサービングサブシステムへ送信されます。
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インジェストサービス
- 計算済みのセグメントを、コンピュートサービスからセグメンテーションサービスへ転送します。
- セグメントへのユーザーの追加・除外を管理します。
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セグメントサービス(サーブ層)
- ユーザーサービスや割引サービスからの要求に応じて、ユーザーセグメントを提供します。
- 割引サービスはユーザーIDをキーに照会し、適用可能な割引を算出できます。データイメージは以下の通りです。
ユーザーID セグメントID 作成日 2521 Segment X 2023年12月3日 2788 Segment Y 2023年12月3日 3943 Segment Z 2023年12月3日
3. アーキテクチャ構成要素
セグメンテーションプラットフォームは、以下の主要コンポーネントで構成されています。

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データレイク:S3
- S3は、データレイクとして広く採用されている汎用性の高い選択肢です。スケーラブルで耐久性の高いオブジェクトストレージ機能により、多様なデータタイプを大量に効率的に保存・管理できます。
- S3をデータレイクとして利用することで、堅牢なデータ保存・取得・管理機能の恩恵を受けられます。そのため、データ中心のさまざまなアプリケーションやアーキテクチャで人気の選択肢となっています。
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トランザクションデータベース:MongoDB
- MongoDBのドキュメント指向モデルはトランザクション用途に適しており、JSONに近い形式で複雑なデータ構造を格納できます。この柔軟性は、データ構造が時間とともに進化するアプリケーションにとって特に有用です。
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Upstash Kafkaクラスタ
- Webアプリケーションからのトラフィック(クリック)イベントをUpstash Kafkaへストリーミングし、その後データレイクに保存してさらなる処理に活用できます。
- Upstash Kafkaは世界初のサーバーレスKafkaサービスです。リクエスト単位の従量課金モデルにより、数百ドルもの費用をかけずに完全マネージドのKafkaクラスタを利用できます。無料枠では、クレジットカード登録なしで数秒以内にKafkaクラスタを作成可能です。可用性、メンテナンス、スケーリング、アップグレードなどの面倒な作業はUpstashチームが担当するため、開発者はアプリケーション開発に集中できます。
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Upstash MongoDBソースコネクタ
- MongoDBソースコネクタは、Apache Kafka Connectのようなデータ統合・ストリーミングプラットフォームで使用されるコンポーネントで、MongoDBデータベースに接続し、変更やイベントをリアルタイムにキャプチャします。
- Upstash MongoDBソースコネクタは、MongoDBから別のシステムやプラットフォームへのデータ移動を容易にし、シームレスなデータ統合と分析を可能にします。
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Apache Spark
- Apache Sparkは、単一ノードまたはクラスタ上でデータエンジニアリング、データサイエンス、機械学習を実行できる多言語対応エンジンです。
- Upstashが標準提供しているUpstash KafkaとApache Sparkの統合により、Webアプリケーションからのトラフィック(クリック)イベントをUpstash Kafkaへストリーミングし、リアルタイムに分析できます。
- Apache Sparkはユーザーセグメントの更新処理を担当します。更新データはまずUpstash Kafkaに書き込まれ、その後伝播されてAerospikeデータベースが更新されます。
4. 設計上の課題
セグメンテーションエンジンの利用拡大に伴い、システムには以下のような課題が生じる可能性があります。
- 書き込みQPSのボトルネック: セグメントの数やサイズが増加すると、書き込みクエリ毎秒(QPS)にボトルネックが発生し、セグメント作成の待ち時間が長引く恐れがあります。
- 低レイテンシ要求: 特定のコミュニケーション配信、特にユーザーが特定セグメントに属しているかどうかの判定では、非常に低いレイテンシの実現が不可欠です。
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読み取りレイテンシ
- プラットフォームの進化に伴い、読み取り時に50ms未満という必要なレイテンシを満たしていても、特定のサービスや将来のユースケースには不十分になる可能性が予想されます。
- たとえば通知サービスでは、コミュニケーションを配信する前にユーザーのセグメント所属を高速に判定する必要があります。各リクエストでレイテンシが増加することは、将来的に許容されないと予想されます。
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Kafkaインフラの管理
- トランザクションソースから毎分数百万件のイベントを処理する場合、Kafkaインフラの運用は確かに困難であり、高いスループットを効果的に管理するには、さまざまな要素を慎重に検討する必要があります。
- 高スループットのKafkaインフラを維持するには、定期的なパフォーマンステストと最適化が鍵となります。
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MongoDBのChange Data Capture(CDC)
- Webアプリケーションからのイベントを集約し、MongoDBのような従来型トランザクションデータベースに格納したうえでデータレイクへ送出するには、相応の手間がかかります。
- MongoDBが提供するCDC(change data capture)機構を利用するか、データベースの変更をキャプチャするカスタムソリューションを実装しましょう。
5. 提案ソリューション
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分散キャッシュAerospikeによる読み取りレイテンシの改善
- Aerospikeにはユーザーのセグメント情報を格納し、ユーザーIDを主キーとしてユーザーセグメントにアクセスします。
- さらに、セグメントIDに対してセカンダリインデックスを実装すれば、セグメント所属ユーザーの取得が効率化され、セグメントユーザーを別途保存する必要がなくなります。
- また、この設計はレイテンシ要件を満たすことを目的としており、キャッシュとして機能させればRedisの代替にもなり得ます。
- 既存のAerospikeをUpstash Redisに置き換える場合は、セグメントユーザーとユーザーセグメントという2種類のデータを管理する必要が生じます。
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サーバーレスUpstash KafkaによるKafkaインフラ管理
- Upstash Kafkaなら完全マネージドサービスを利用できます。つまり、Kafkaクラスタの稼働に必要なサーバープロビジョニング、スケーリング、メンテナンスといった技術的な作業はすべてUpstashが担います。
- インフラのセットアップ、正常な動作の確認、継続的な保守などを心配する必要はありません。
- そのため、インフラ管理の負担なしに、独自の要件や目標に合わせてKafkaを活用することに集中でき、急速に変化する開発環境においてアプリケーション全体の品質向上にエネルギーを注げます。
- 価格はゼロまでスケール: 真のサーバーレスは、利用していないときに課金されるべきではありません。リクエスト単位の課金は最大の特長です。固定費を最小限に抑えることが求められますが、Kafkaのような巨大なシステムではこれは非常に困難です。
- ユーザーに運用負担なし: ユーザーはKafkaトピックを作成してすぐ使い始められます。高可用性、スケーラビリティ、アップグレード、バックアップなどはすべてUpstashの責任範囲です。
- コネクションレス: サーバーレス関数は状態を保持しません。そのため、ステートレスな接続でデータにアクセスできる必要があります。UpstashのKafkaはKafka TCPプロトコルをサポートしているため、すべてのKafkaクライアントが利用可能です。さらに、AWS LambdaやCloudflare Workersのようなコネクションレス環境向けに、REST APIも組み込みで提供されています。
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Upstash MongoDBソースコネクタによるMongoDB CDC
- Kafka Connectは、コードを一切書かずにApache Kafkaと他のシステム間でデータをストリーミングするツールです。Kafkaシンクコネクタを使えばデータを任意のストレージへ書き出せ、Kafkaソースコネクタを使えば他のシステムからKafkaトピックへデータを取り込めます。
- Kafkaコネクタはセルフホストも可能ですが、追加のプロセスやマシンのセットアップと保守が必要になります。UpstashはKafkaクラスタ向けのホステッド版コネクタを提供しており、追加システムの保守負担から解放されるだけでなく、クラスタの近くで動作するためパフォーマンスにも優れています。
6. まとめ
本記事では、Upstashが提供する技術を活用した低レイテンシセグメンテーションプラットフォームの設計原則について解説しました。このインフラはシームレスにスケールするよう設計されており、数百万規模のユーザーに対応し、データレイクに保存されたテラバイト級のデータを処理できます。
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