トラッキング拒否(Do Not Track)とは?本当にプライバシーを守れるのか?
主要なウェブブラウザのほとんどには、「トラッキング拒否(Do Not Track)」という機能が搭載されています。これは、ウェブサイトに対して「自分を追跡しないでほしい」と伝えるための機能です。一見すると素晴らしいアイデアに思えますが、果たして本当にプライバシーを保護できるのでしょうか?
この記事では、その実態について詳しく見ていき、読者自身で判断できるよう情報を整理します。
「トラッキング拒否(Do Not Track)」とは?
DoNotTrack.usによると、以下のように定義されています。
「トラッキング拒否とは、ユーザーが訪問していないウェブサイトによる追跡をオプトアウトできるようにする技術および政策の提案です。対象には、アクセス解析サービス、広告ネットワーク、ソーシャルプラットフォームなどが含まれます。」
ブラウザの設定で「トラッキング拒否」にチェックを入れると、ブラウザはすべてのウェブ通信にHTTPヘッダーを追加します。これにより、ウェブサイト側に対して「追跡されたくない」という意思表示が行われます。つまり、アクセス解析や広告ネットワークからのトラッキングクッキーを受け取りたくないこと、また閲覧情報をソーシャルネットワークに送信されたくないことを伝えるわけです。
理想的には、これによってリターゲティング広告用のクッキーや閲覧習慣に関する大量のデータ収集を防げるはずです。しかし残念ながら、ご想像どおり、このHTTPヘッダーは理論上、ウェブサイト側で無視することが可能です。丁寧にお願いしたところで、組織があなたを追跡するのを止める強制力は何もありません。
そこで次に、企業がユーザーの追跡拒否のリクエストを無視することは許されているのかどうかを見ていきましょう。
「トラッキング拒否」は法的に強制力があるのか?
理想の世界では、トラッキング拒否ヘッダー付きの通信を受け取ったウェブサイトは、文字通りユーザーを追跡しないはずです。これを法的拘束力のあるものにするという案は、米国の連邦取引委員会(FTC)に何度も提案されてきました。
しかしFTCは、ユーザーのプライバシー問題への公式な関与を見送り、代わりにWorld Wide Web Consortium(W3C)に対して、トラッキング拒否技術の詳細を詰めるよう指示しました。ところがW3Cには、Adobe、Facebook、Google、eBay、Netflix、PayPal、Twitter、Yahoo!など、数百の組織が参加しており、その多くはユーザーデータの収集に利害関係を持っています。
その結果、「トラッキング拒否」を法的拘束力のある要件にする動きは自然消滅しました。企業は法的な制裁を恐れることなく、トラッキング拒否の設定を自由に無視できるようになったのです。つまり、尊重するかどうかは企業側の裁量次第という状態となりました。
「トラッキング拒否」は実際に機能しているのか?
現在、トラッキング拒否を尊重しているウェブサイトはごくわずかです。残りの大半はこのリクエストを無視しており、中には「プライバシーに関心があるなら関連性が高いはずだ」とばかりに、プライバシー関連の広告を表示するサイトさえあります。
こうした状況により、テック業界のトラッキング拒否への信頼は徐々に失われています。Internet Explorer 10のリリース時、Microsoftはこの機能をデフォルトで有効にしました。「ユーザー自身が意識的に広告主へ情報を共有するかどうかを決めるべきであり、その逆であってはならない」という考えからでした。
しかし、Digital Advertising Alliance(デジタル広告連盟)が強く反発。その結果、Microsoftは要求に屈し、Windows 10以降はユーザーが自ら機能を有効化しなければならなくなりました。現在Microsoftのプライバシーステートメントには、次のように記載されています。
「[トラッキング拒否]シグナルの解釈方法についてまだ共通認識がないため、Microsoftサービスは現在、ブラウザの[トラッキング拒否]シグナルに応答していません。」
オンラインサービス事業者は、この理由を使って設定を尊重しないことが一般的になりました。トラッキング拒否を裏付ける標準も法律も存在せず、それを活用するインセンティブが誰にもないのです。
Twitter、Medium、Reddit、Pinterestなど一部の企業は、ユーザーのトラッキング拒否リクエストを尊重することを約束していますが、大多数の広告主は無視しています。彼らは「実装された標準がない」ことを理由に挙げる一方で、標準を作り出す努力もしていません。
結論として、ブラウザの「トラッキング拒否」オプションはあまり役に立ちません。一部の企業は確かに尊重していますが、法的拘束力のある要件が存在しないため、追跡したい企業はこのタグを無視して情報を収集し続けることができ、実際にそうしています。
ブラウザでのオンラインプライバシーを守る方法
トラッキング拒否は素晴らしいアイデアですが、確固たるルールの欠如と業界全体による無視という決定が、その失敗につながりました。それでも、プライバシーを保護するために使える他の選択肢があります。
サードパーティクッキーを拒否するようブラウザを設定する
ファーストパーティクッキーは訪問先のウェブサイトから発行されるもので、有益な場合もあります。一方、サードパーティクッキーは広告主やソーシャルネットワークから発行され、インターネット上であなたを追跡します。
できるだけ多くのトラッキングサービスからオプトアウトする
トラッキングサービスは数多く存在し、オプトアウト手段を提供していないものも多いですが、FacebookやGoogleといった大手からはオプトアウトできます。また、NetworkAdvertising.org/choicesにアクセスして広告ネットワークからオプトアウトすることもできますが、その効果については疑問が残ります。
トラッキングを制限するブラウザ拡張機能を使う
サードパーティによる追跡から身を守れるブラウザ拡張機能がいくつか提供されています。Disconnect.meがおそらく最良の選択ですが、他の拡張機能も見つけられるでしょう。
プライバシー重視のブラウザを使う
EpicやDragonのように、プライバシー保護を明言しているブラウザもあります。また、Torはプライバシーの最大化を目指すブラウザとして知られています。
インターネット監視を回避する方法の詳細については、「Avoiding Internet Surveillance: The Complete Guide(インターネット監視の回避:完全ガイド)」をご覧ください。初心者から中級者のプライバシー愛好家が必要とするセキュリティ強化のための情報がすべて詰まっています。
オンラインプライバシーは自分の手で守ろう
トラッキング拒否は素晴らしいアイデアですが、突き詰めていえば、この技術には実効性がありません。企業はそれを無視することを選べますし、たいていの場合実際に無視しても、何のペナルティも受けません。
それでも、この設定を尊重する少数のサイトのために、設定を有効にしておく価値はあります。ただし、インターネット上で組織に追跡されたくないのであれば、丁寧なお願い以上の対策が必要です。より直接的な手段で、プライバシーを自分の手に取り戻しましょう。
プライバシーのコントロールを握る準備はできましたか?まずは評判の高いVPNサービスの一つを契約してみるのがおすすめです。
-
Firefoxコンテナ(Multi-Account Containers)とは?プライバシー保護とタブ整理の活用術
Mozilla公式の拡張機能「Multi-Account Containers」は、ブラウジングセッションを「コンテナ」と呼ばれる独立した環境ごとに分離するためのFirefoxアドオンです。この機能は当初Firefox Nightlyで導入され、その後Test Pilotの実験機能を経て、現在ではすべてのFirefoxユーザーが利用できるようになりました。本記事では、Firefoxコンテナを使ってプライバシーを守りながら、多数のタブを効率的に管理する方法を詳しく解説します。Firefoxコンテナとは?Firefoxのコンテナは、いわばプロファイルのようなもので、パソコン上で異なるプロファイルご
-
Torブラウザでプライバシーを守る方法|設定とセキュリティ機能を徹底解説
Torは、現在使用できるインターネットブラウザの中でも最も安全性が高いと評されるブラウザの一つです。無料かつオープンソースで提供されており、安全なインターネット接続を提供することで広く知られています。ユーザーのセキュリティを確保するため、Torは通信トラフィックを世界中のオーバーレイネットワーク経由で転送します。これにより、ネットワーク監視やトラフィック解析によってブラウザ接続を盗み見しようとする者から、ユーザーの位置情報を隠すことができます。Torという名前は「The Onion Router(ザ・オニオンルーター)」の頭字語で、「オニオンルーティング」という技術に由来しています。オニオンル