全点対最短経路問題とは?ワーシャル・フロイド法の仕組みとC++実装例
ワーシャル・フロイド法(全点対最短経路)とは
全点対最短経路(All-Pair Shortest Path)問題を解くための代表的なアルゴリズムとして知られているのが「ワーシャル・フロイド(Floyd-Warshall)法」です。このアルゴリズムは、重み付きグラフが与えられた際に、すべての頂点ペア間の最短経路を一括して求めることができます。
アルゴリズムを実行すると、最終的に1つの行列が出力されます。この行列には、グラフ内の任意のノードから他のすべてのノードへの最小距離が記録されます。
処理の流れは次のとおりです。まず、出力用の行列をグラフのコスト行列(隣接行列)と同じ値で初期化します。その後、すべての頂点 k を順に「中間頂点」として候補に挙げながら、「i から k を経由して j に向かう経路」が現在の i→j の距離より短ければ、行列の値を更新していきます。この操作を全頂点に対して繰り返すことで、最終的な最短距離行列が完成します。
このアルゴリズムの計算量は O(V³) です。ここで V はグラフの頂点数を表します。また、負の重みを持つ辺も扱える一方、負閉路(負のコストで一周できる閉路)が存在する場合は正しい結果が得られないという特徴があります。
入力:グラフのコスト行列
以下は、7つの頂点を持つグラフのコスト行列の例です。「∞」は該当する頂点間に直接つながる辺が存在しないことを意味します。
0 3 6 ∞ ∞ ∞ ∞
3 0 2 1 ∞ ∞ ∞
6 2 0 1 4 2 ∞
∞ 1 1 0 2 ∞ 4
∞ ∞ 4 2 0 2 1
∞ ∞ 2 ∞ 2 0 1
∞ ∞ ∞ 4 1 1 0
出力:全点対最短経路行列
0 3 4 5 6 7 7
3 0 2 1 3 4 4
4 2 0 1 3 2 3
5 1 1 0 2 3 3
6 3 3 2 0 2 1
7 4 2 3 2 0 1
7 4 3 3 1 1 0
アルゴリズムの手順
floydWarshal(cost)
入力: グラフのコスト行列
出力: 任意の頂点間の最短距離を格納した行列
Begin
for k := 0 to n, do
for i := 0 to n, do
for j := 0 to n, do
if cost[i,k] + cost[k,j] < cost[i,j], then
cost[i,j] := cost[i,k] + cost[k,j]
done
done
done
display the current cost matrix
End
C++による実装例
続いて、上記のアルゴリズムをC++で実装した例を示します。元のコスト行列をコピーした作業用行列を用意し、三重ループによって中間頂点 k を順番に適用しながら距離を更新します。
#include<iostream>
#include<iomanip>
#define NODE 7
#define INF 999
using namespace std;
// グラフのコスト行列
int costMat[NODE][NODE] = {
{0, 3, 6, INF, INF, INF, INF},
{3, 0, 2, 1, INF, INF, INF},
{6, 2, 0, 1, 4, 2, INF},
{INF, 1, 1, 0, 2, INF, 4},
{INF, INF, 4, 2, 0, 2, 1},
{INF, INF, 2, INF, 2, 0, 1},
{INF, INF, INF, 4, 1, 1, 0}
};
void floydWarshal(){
int cost[NODE][NODE]; // 全ノード間の最短距離を保存するための行列
for(int i = 0; i<NODE; i++)
for(int j = 0; j<NODE; j++)
cost[i][j] = costMat[i][j]; // コスト行列を作業用行列へコピー
for(int k = 0; k<NODE; k++){
for(int i = 0; i<NODE; i++)
for(int j = 0; j<NODE; j++)
if(cost[i][k]+cost[k][j] < cost[i][j])
cost[i][j] = cost[i][k]+cost[k][j];
}
cout << "The matrix:" << endl;
for(int i = 0; i<NODE; i++){
for(int j = 0; j<NODE; j++)
cout << setw(3) << cost[i][j];
cout << endl;
}
}
int main(){
floydWarshal();
}
実行結果
プログラムを実行すると、すべての頂点ペア間の最短距離が格納された行列が出力されます。初期状態では到達できなかった頂点間の距離も、中間頂点を経由する経路が見つかることで更新されていることが分かります。
The matrix:
0 3 5 4 6 7 7
3 0 2 1 3 4 4
5 2 0 1 3 2 3
4 1 1 0 2 3 3
6 3 3 2 0 2 1
7 4 2 3 2 0 1
7 4 3 3 1 1 0
まとめ
ワーシャル・フロイド法は、動的計画法の考え方に基づいたシンプルな三重ループで実装でき、全頂点ペア間の最短経路をまとめて求められる強力な手法です。計算量は O(V³) と頂点数に対して増加するため、大規模グラフには不向きですが、頂点数が数百程度までの密なグラフや、すべてのノード間距離が必要な場面(交通網の分析、ネットワークルーティングなど)で特に有用です。
-
データ構造におけるYenのk最短経路アルゴリズム徹底解説
単一の最短経路だけを返すのではなく、イエン(Yen)のk最短経路アルゴリズムでは、k本の最短経路を求めることができます。これにより、2番目に短い経路、3番目に短い経路といった具合に、順位の異なる複数の経路を順番に取得できるのが大きな特徴です。例として、地点Aから地点Bへ移動しなければならない場面を考えてみましょう。地点Aと地点Bの間には複数のルートが存在しますが、その中から時間計算量の観点で無駄のない真の最短経路を見つけ出し、目的地まで効率よく到達する必要があります。具体例で理解する下図の例を、頂点Bが「ピーク(頂上)」になっている橋だと考えてください。ある人が地点Aから地点Cへ橋を渡りたい場
-
C++で解く二分木の擬似回文パス問題 ― DFSによる数え方
問題の概要ノードの値が 1 から 9 の数字である二分木を考えます。根ノードから葉ノードへ向かうあるパスについて、パスに含まれるノード値を並べ替えた結果の少なくとも1つが回文になるとき、そのパスを「擬似回文パス(pseudo-palindromic path)」と呼びます。この問題では、根から葉への擬似回文パスが全部で何本あるかを求めます。具体例例として、次のような二分木が与えられたとします。このとき出力は 2 になります。根ノードから葉ノードへの経路は3本存在します。赤のパスは [2,3,3]、緑のパスは [2,1,1]、そして残りのパスは [2,3,1] です。このうち擬似回文パスになって