小さなActiveSupportモジュールで実現する、より良いグローバル変数管理
一般に、グローバル変数は避けるべきものとされています。しかし、適切な場所で使えば、コードを大幅にシンプルにできることもあります。
Railsアプリでは、リクエスト中に一度だけデータを設定し、それをアプリのあらゆるレイヤーで利用したい場面があります。リクエストしたのはどのユーザーか?どんな権限を持っているか?どのデータベース接続を使うべきか?
こうした情報はコード全体から参照できるべきものなので、あちこちに引数として渡すのはノイズでしかありません。しかし、Rubyのグローバル変数やクラス変数を使うと、今度は別の問題が発生します。複数のスレッドが同じ変数を上書きしてしまい、大混乱に陥り、最悪の場合、取り返しのつかない不正なデータになってしまうかもしれません。
必要なのは、「自分のリクエストだけ」に有効なグローバルな仕組みです。
素のRubyでのやり方
通常、この問題はThread.current[]で処理されることが多いでしょう。次のようなコードです。
Thread.current[:current_user] = user
シンプルで、まずまずの解決策ではあります。しかし、大きな欠点が2つあります。
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誰かがうっかりデータを上書きしてしまう恐れがある
もし2人が同じキーを選んでしまったら、お互いのデータを上書きし合うことになります。ユーザー情報のような重要なデータを保存している場合、これは深刻な問題です。自分のアプリ内であれば、あまり問題にならないかもしれません。しかし、gemを開発している場合や、規模が大きく混沌としたRailsアプリでは、真剣に考慮すべき点です。
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構造化されていない
Thread.current[]は単なる巨大なデータの入れ物です。ドキュメント化も容易ではなく、何を取り出せるのかを知るには、何を入れたのかをコード全体から探し回るしかありません。もちろん、これが問題になるほど大量のグローバルデータを保存しているなら、
Thread.current[]の構造の欠如以上に心配すべきことがあるはずです。それでも、頭の片隅に置いておきたいポイントではあります。
では、Thread.current[]より良い解決策はあるのでしょうか?ご想像の通り、Rails自身も大量のリクエストローカルなデータを管理しています。そして宝箱のようなActiveSupportには、別のパターンが用意されているのです。
Rails流のやり方
ActiveSupportのコードを掘り下げていくと、ActiveSupport::PerThreadRegistryというモジュールに出会います。名前からも分かる通り、まさに私たちが探していたものです。
ActiveSupport::PerThreadRegistryを使うと、先ほどの例は次のように書けます。
class RequestRegistry
extend ActiveSupport::PerThreadRegistry
attr_accessor :current_user, :current_permissions
end
RequestRegistry.current_user = user
RequestRegistry.current_user # => user
ほんの少し手間は増えますが、ActiveSupport::PerThreadRegistryには次のようなメリットがあります。
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ドキュメントを書く場所ができる。クラスを見れば、どんなグローバルデータを期待しているのか、何を利用できるのかが一目瞭然です。
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見た目の良いAPIが手に入る。実際、まるでクラス変数を設定しているように見えます。スレッドを気にしなくてよいなら、そう書いていたはずです。
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クラスに設定したデータは名前空間で分離される。
RequestRegistry.current_userとPhoneNumberApiRegistry.current_userが衝突する心配はありません。完全に独立して扱われます。
Rails自身も内部でActiveSupport::PerThreadRegistryを使用しています。例えば、ActiveRecordのコネクション管理、EXPLAINクエリの保存、ActiveSupport::Notificationsなどです。PerThreadRegistryの活用例をもっと見たいなら、Rails本体のソースコードが最高の教材になります。
スレッドとリクエストが一致しないとき
一部のRailsサーバーでは、1つのスレッドが複数のリクエストを処理します。つまり、PerThreadRegistryに入れたデータは、次のリクエストにも残ってしまうということです。これはおそらく望んでいる動作ではないでしょう。
Railsと同じように、使い終わったらPerThreadRegistryの中身を掃除する方法もあります。保存する内容によっては、そもそも後始末が必要な場合もあるでしょう。
コメント欄では、MattBさんがより簡単な解決策としてrequest_storeを紹介しています。Thread.current[]のように振る舞いながら、リクエストごとに自動的にクリアされるgemです。
request_storeの安全性とPerThreadRegistryのAPIを組み合わせた「PerRequestRegistry」を作る余地は十分に残されています。すでに誰かが実装しているなら、ぜひ教えてください!
試してみよう
グローバルデータは危険になり得ます。グローバル変数が多すぎると、あっという間に保守困難なコードになってしまいます。
しかし、リクエスト全体を通じてデータを一箇所に保持するのが理にかなっているなら、Thread.current[]の一歩先へ進みましょう。ActiveSupport::PerThreadRegistryやrequest_storeを試してみてください。少なくとも、グローバルデータの扱いが少し安全になるはずです。
補足:新しいRailsバージョンでの扱い
なお、ActiveSupport::PerThreadRegistryはRails 5.0で非推奨となり、5.1で削除されました。現在のRailsでは、thread_mattr_accessorやActiveSupport::IsolatedExecutionStateが代替手段として提供されています。ただし、リクエストローカルなデータを安全に管理するというこの記事の考え方は、今でも変わらず有効です。
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