【初心者向け】CPUオーバークロックの基本と安全なやり方 徹底ガイド
「オーバークロック」という言葉を聞くと、マザーボードが焼き切れたりCPUが発煙したりするイメージを抱く人もいるかもしれません。しかし実際には、CPUやGPUのオーバークロックはシンプルで安全な作業であり、しかも大きなパフォーマンス向上が期待できます。
とはいえ、CPUをオーバークロックする際にはいくつか注意すべき点があります。本記事では、CPUオーバークロックの基礎知識から、冷静かつ安全に実行するための手順までを詳しく解説します。CPUの仕組み自体がよくわからないという方は、まず入門記事で基礎を押さえてから読み進めるのがおすすめです。
CPUオーバークロックの超簡単な概要
オーバークロックの「クロック」とは、PCパーツの動作クロック(クロック速度)のことです。クロック速度はHz(ヘルツ)で表され、パーツのおおまかな処理速度を決定します。
ただし、PCの実際の速度はクロック速度だけでは決まりません。CPUのコア数、キャッシュ容量、世代なども大きく影響します。最新世代のCPUは旧モデルよりも効率が格段に優れており、さらにマザーボードやクーラーといった外部パーツによっても性能の上限は変わってきます。
オーバークロックは必要?
ガジェット好きとしては「まだPCをオーバークロックしていないの?」と言いたくなるところですが、オーバークロックにはきちんとした手順があり、事前に考慮すべき要素もいくつかあります。
アンロックされたクロック倍率
IntelとAMDの一部のCPUは、「アンロックされたクロック倍率」に対応しています。この機能により、クロック倍率を変更してクロック速度を引き上げることができます(詳細は後述)。AMDのFXシリーズやIntelのKシリーズがその代表例です。
ただし、これらだけがオーバークロック対応のCPUではありません。はっきり言うと、クロック速度はどのCPUでも変更可能なパラメータであり、多くの場合、それを制限しているのはBIOSです。アンロック版のCPUは、電圧制御・クロック制御の自由度が高く、オーバークロック用ソフトウェアのサポートも充実しています。
逆に割に合わないのが、ロックされたCPUに対して別バージョンのBIOSを書き込んだり、純正ファンの回転数を無理やり上げたり、ケースに追加ファンを取り付けたり、最適化されていないマザーボードの限界に挑んだりする行為です。
PCチューニングの鉄則その1:自分のハードウェアの限界を理解し、受け入れること。
CPUクーラーの重要性
CPUのオーバークロックがGPUほど一般的でない理由の一つが「冷却」です。
GPUには独自の放熱・冷却機構が最初から搭載されているため、ユーザーは過熱をあまり気にせずにオーバークロックできます。
一方、CPUは標準状態ではそこまでの冷却性能を持っていません。通常使用であっても純正クーラーはおすすめしません。電圧をいじり始めると、温度は指数関数的に上昇します。だからこそ、本格的なCPUオーバークロックには上位クーラーへの換装が必須となります。Cooler Master「Hyper 212 Evo」のような定番空冷クーラーはコスパの良い選択肢です。ただし、慎重に進めれば純正クーラーでも十分満足できるオーバークロックは可能です。
ターボブースト/ターボコア技術
例えば、PCにIntel Core i5-4460が搭載されていて、もう少し性能を引き出したいとしましょう。i5-4460の基本クロックは3.2GHzなので、3.3GHzに上げようと考えるかもしれません。しかし、ここに一つ問題があります。
実はCPUはすでにその速度で動いているのです。なぜなら、Intelの「ターボブースト(Turbo Boost)」やAMDの「ターボコア(Turbo Core)」という技術が、負荷に応じてクロック速度を動的に調整しているからです。これにより、高負荷時には単一コアが高いクロックで動作できます。つまり、基本クロックが3.20GHzでも、実際にはより高いクロックで動作していることがあるのです。わずかなクロックアップだけを考えているなら、そもそも変更不要かもしれない点を覚えておきましょう。
危険!電圧の扱い方
オーバークロックは科学というより芸術(試行錯誤)に近いものです。まずクロック速度を上げます。この段階だけでCPUの発熱は増加します。そして安定性の限界に達したら、今度はクロックアップに見合うよう電圧を上げる必要があります。
CPUコア電圧に関する判断ミスこそが、オーバークロック最大の懸念材料です。電圧はクロック速度と異なり、CPU側の耐性とマザーボード側の供給能力の両方に左右されます。マザーボードがCPUに電力を供給する以上、マザーボードがその負荷に耐えられるかを必ず確認しなければなりません。
例えばGigabyteは、より高い電圧負荷に耐えるよう設計されたオーバークロック向けマザーボードシリーズを展開し、耐久性の指標も公表しています。ただし、すべてのマザーボードがそうではないため、電圧設定を変更する際は慎重を期しましょう。
「標準的な」オーバークロック設定は存在しない
オーバークロック設定を標準化できないのは、許容される速度の幅が非常に広いためです。安定して動作するオーバークロック速度は世代ごとに異なるだけでなく、同じ世代でも個体ごとに違います。だからこそ、すべてのCPUに共通する「万能の設定値」は存在しません。本当にCPUをオーバークロックするには、パラメータを変更→ストレステスト→微調整、をひたすら繰り返すしかありません。
初めての場合、この作業はかなり骨の折れるものになるでしょう。時間をかけて焦らず進めることをおすすめします。それでも、わずかなオーバークロックであっても、得られる速度向上は確実にメリットになります。
実践!CPUオーバークロック手順ガイド
この記事の目的は、CPUとPC全体の関係を理論的に説明することではなく、オーバークロックをステップバイステップで実践してもらうことです。とはいえ、PC内部の仕組みを学べば学ぶほど、必ず役立ちます。
覚えておきたい用語とパラメータ
オーバークロックには欠かせない用語がいくつかあります。
- BCLK(ベースクロック/基本周波数):プロセッサの基本速度(Hz=1秒あたりのサイクル数)を指します。CPU(RAMも同様)はクロックサイクル、いわゆる周波数で動作しており、多くのベースクロックは100MHzです。CPU全体の速度は「ベースクロック×クロック倍率」で求められます。
- クロック倍率(Clock Multiplier):オーバークロックで主に変更するパラメータです。CPUのおおまかな速度を決定します。例えばBCLKが100MHzで倍率が32なら、全体のクロック速度は3.2GHz(3200MHz)になります。
- VCore(CPUコア電圧):オーバークロック時には、DRAM電圧などではなくコア電圧を変更していることを必ず確認してください。HWMonitorやCPU-Zなどの監視ソフトでチェックできます。最初はVCoreを触らず、安定性に行き詰まったら0.10V刻みで少しずつ上げましょう。VCoreの変更が原因でクラッシュしたら、すぐに元の値へ戻してください。
ソフトウェアでオーバークロックする
IntelとAMDはどちらも公式のオーバークロック用ソフトを提供しています。それぞれ「Intel Extreme Tuning Utility(XTU)」と「AMD OverDrive」です。
これらはハードウェアとオーバークロックの橋渡しとなるツールで、初めてパーツをオーバークロックする方におすすめです。使いやすいインターフェース、リアルタイム監視機能、無茶な設定を防ぐパラメータ制限が備わっています。すでにベンチマークツールを使いこなし、ストレステストに慣れているなら、BIOSから直接変更する方が良いでしょう。
BIOSでオーバークロックする
現在の多くのPCには、昔よりも洗練されたBIOSインターフェースが搭載されています。かつてはテキストベースで情報量も少なかったBIOSも、今日ではより分かりやすく実用的になっています。BIOSの項目名は機種ごとに異なるため、マザーボードのマニュアルをオンラインで確認し、以下の手順を読み替えてください。
まずBIOS内のオーバークロック設定を探します。筆者はMSI製マザーボードを使用しているので、MSIのBIOS画面で説明します。古いBIOSではクリック操作できない場合もありますが、同じパラメータ変更は可能です。
OC設定に入る前に注目したいのが、画面左上にある「OC Genie」ボタンです。OC GenieはMSIマザーボード独自の機能で、いわゆる「ワンタッチ(既成)オーバークロック」の一例です。ボタン一つで性能向上を謳っています。
はっきり言えば、OC Genieは仕事をします。確かにCPUをオーバークロックしてくれます。しかし、その手軽さには代償があります。OC Genieは必要以上に電圧を跳ね上げ、その結果、パーツを余計に熱くします。さらに、クロック速度の適切な判定もうまく行いません。ワンタッチ型オーバークロックに任せるよりも、試行錯誤による自分での調整をおすすめします。他のワンタッチ系ツールについても同様です。
BIOSの「OC」ボタンをクリックして、オーバークロック設定画面へ移ります。
ここで、筆者のOC設定には重要なパラメータであるVCore(電圧)の項目が表示されていないことに気づきます。次のBIOS画面と比較してみてください。
ゲーミングマザーボード(MSIのZ87シリーズのように、オーバークロック向けに設計されたもの)やアンロック版CPUを使えば、より広範なオーバークロックが可能になります。ロック版CPUと最適化されたBIOSの組み合わせでは、変更できるパラメータが制限されます。ただし、オーバークロックの基本的な流れ自体はCPUが違っても変わりません。ロック版CPUの場合は、BIOSを旧バージョンに戻すか、アンロック版CPUを使わない限り、デフォルトの電圧設定を変更できません。
ステップ1:ターボブースト/ターボコアを無効化する。該当するパラメータにカーソルを合わせて「Disable」を選択します。ターボブースト/コアは電圧とCPU倍率にオフセットを生むため、オーバークロック本来の安定性をテストしにくくなります。OC Genieなどのワンタッチ系オーバークロック機能も必ず無効化してください。
ステップ2:CPU Ratio(CPU倍率)を見つける。Base(基本周波数)やAdjusted frequency(調整後周波数)と混同しないようにしましょう。CPU Ratioは2桁のパラメータで、基本周波数と掛け合わせた値が実際のCPU周波数になります。この数値がCPUのおおまかな速度を示します。変更は必ず1ずつ行ってください(例:33→34)。ストレステスト後にクラッシュするようなら、数値を下げます。
BIOSパラメータの変更にはコツがあります。「[Auto]」はプリセットの選択肢リストを示し、単なる「Auto」は数値を直接入力できることを意味します。変更するには、パラメータにカーソルを合わせて数値をキーボードで入力してください。多くのユーザーはクリックするだけで何も起こらずに諦めてしまいますが、自分で値を打ち込む必要があります。「+ / −」キーでも変更できます。入力した値が自動的に小さな値へ戻る場合は、そのCPUはロックされています。
ステップ3:CPU Ratioが頭打ちになったら、デフォルト電圧を0.025Vずつ上げ始めます。ストレステストを行い、安定性の壁に当たるまで繰り返します。電圧を大胆に上げてはいけません。電圧の上限はCPUソケットやマザーボードの能力など、システムを構成する複数の要素に依存します。電圧変更は最も危険なパラメータです。小さなステップで進め、徹底的なストレステストを行えば、何も恐れることはありません。
恐れることはない。BIOSと仲良くなろう
「オーバークロックにはコンピュータ工学の専門書が必要だ」と思い込みがちですが、実際のところ、オーバークロックとはCPUへの電力の門をほんの少し開いてやる程度の作業です。恐れず、安全に進めて、CPUの隠れたポテンシャルを解放しましょう。
導入時には診断ツールでシステムを常時監視すると安心です。また、万が一「起動デバイスにアクセスできない」エラーが発生した場合の対処法も、別途記事で詳しく解説しています。
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