Hyperledger(ハイパーレジャー)とは?オープンソースブロックチェーンフレームワークと標準を徹底解説

執筆者:Alexander S. Gillis(テクニカルライター兼編集者)
公開日:2025年10月6日
Hyperledger(ハイパーレジャー)は、ブロックチェーンベースの分散型台帳の開発を支援する目的で創設された、オープンソースプロジェクト群としてスタートしました。その対象には、ブロックチェーンや関連アプリケーションを構築するためのフレームワーク、標準、ツール、ライブラリが含まれます。2021年には「Hyperledger Foundation」がHyperledgerの正式な統括組織およびコミュニティとなりました。さらに2024年には、2015年にHyperledgerを創設したLinux Foundationが「LF Decentralized Trust」を立ち上げ、現在は同財団がHyperledgerプロジェクトをはじめとする多数の技術・標準を保有・運営しています。
創設以来、HyperledgerにはAmerican Express、IBM、Intel、Microsoft、Samsung、VMwareといった大手企業や、Blockstream、Digital Assetなどのブロックチェーンスタートアップから幅広い貢献が寄せられてきました。こうした協業は、銀行、サプライチェーンマネジメント、IoT(モノのインターネット)、製造業など、多岐にわたる分野に及んでいます。
Hyperledgerは、さまざまな分散型台帳フレームワークやライブラリのハブとして機能します。これにより、企業は例えばHyperledgerのフレームワークを活用して、業務プロセスにおける効率性、パフォーマンス、トランザクション処理を向上させることができます。
Hyperledgerは、ブロックチェーンシステムやアプリケーションの開発に必要なインフラストラクチャと標準を提供します。開発者はHyperledgerが提供するツールを使ってビジネス向けブロックチェーンプロジェクトを構築することも可能です。ネットワーク参加者は互いに身元が明らかであり、コンセンサス形成プロセスに参加できます。
Hyperledgerベースの技術は、以下のレイヤーで動作します。
- コンセンサス層:処理順序について合意を形成し、ブロック内のトランザクションが正しいかどうかを確認します。
- スマートコントラクト層:トランザクション要求を処理・承認します。
- 通信層:P2P(ピアツーピア)メッセージ伝送を管理します。
- API(アプリケーションプログラミングインターフェース):外部アプリケーションがブロックチェーンと通信できるようにします。
- ID管理サービス:ユーザーおよびシステムのIDを検証します。
主要なフレームワーク:Hyperledger FabricとHyperledger Besu
Hyperledgerの代表的なプロジェクトとして、Hyperledger FabricとHyperledger Besuの2つが挙げられます。
Hyperledger Fabric
Hyperledger Fabricは、Hyperledgerの中でも最も人気のあるプロジェクトの一つです。ブロックチェーンベースの製品、ソフトウェア、アプリケーションを構築するための許可制(パーミッションド)ブロックチェーンインフラストラクチャです。IBMとDigital Assetとの協力によって開発され、ノード間の役割分担、スマートコントラクトの実行、設定可能なコンセンサスサービスを定義するモジュールアーキテクチャを備えています。Fabricの特徴は、スマートコントラクトの活用と、プラグイン可能なコンセンサスプロトコルです。また、モジュールの導入により複数のプログラミング言語にも対応しており、分散型台帳を必要とするシステム統合プロジェクトで広く利用されています。

Hyperledger Fabricは分散型台帳の構築に使用されます。
Hyperledger Besu
Hyperledger Besuは、プライベートの許可制プラットフォーム上でも、Ethereumのパブリックネットワーク上でも実行できるオープンソースのEthereumコードベースです。Ethereum Virtual Machine(EVM)、コンセンサスアルゴリズム、ユーザー向けAPI、監視機能などを特徴とします。Besuは、分散型アプリケーション(dApps)のように、Ethereumエコシステム内での相互運用性が求められるプロジェクトに特に有効です。
その他のHyperledgerツールとプロジェクト
HyperledgerにはFabricとBesu以外にも多数のプロジェクトが存在します。現在アクティブなものから、インキュベーション中(アクティブかつ本番環境対応と認定される前に一定の基準を満たす必要がある状態)のものまで、さまざまなプロジェクトとツールが提供されています。主なものは以下の通りです。
- Hyperledger AnonCreds:検証可能なクレデンシャルの一種である匿名クレデンシャル(anoncreds)を規定する、特定の台帳に依存しないプロジェクトです。
- Hyperledger Aries:デジタルクレデンシャルの作成・送信・保存と、分散型鍵管理を可能にするツールキットです。
- Hyperledger Bevel:分散型台帳技術(DLT)のデプロイを加速するアクセラレータで、DLTのセットアップ、展開、新規組織との統合を支援します。
- Hyperledger Cacti:複数の異なる種類の台帳間を接続し、トランザクションを実行するための、相互運用性を持つプラグインベースのフレームワークです。
- Hyperledger Caliper:ブロックチェーン実装のパフォーマンスを評価するベンチマークツールです。ブロックチェーン実装ごとに求められる基準が異なるため、事前定義済みの標準は付属していません。
- Hyperledger Cello:ブロックチェーンサービスの作成・終了・管理を行う、Blockchain-as-a-Service(BaaS)ツールキット兼オペレーティングシステムです。
- Hyperledger FireFly:Web3アプリケーション向けミドルウェアのオープンソースソフトウェアスタックです。
- Hyperledger Indy:分散型ID向けに設計されたフレームワークで、コンポーネント、ツールセット、ライブラリを含みます。自己主権型ID(SSI)にも対応し、ID関連のあらゆる情報を安全に保管します。
- Hyperledger Iroha:既存ネットワークとの統合に使用されるブロックチェーンフレームワークです。モジュール設計、制御ベースのアクセス権限、豊富なライブラリ、資産・ID管理機能を備え、金融サービス、ヘルスケア、教育などの業界で採用されています。
- Hyperledger Solang:SolidityコードをEVM用バイトコードに変換するSolidityコンパイラで、スマートコントラクトの移植性を実現します。
一方で、Hyperledgerでは一部のプロジェクトが休止(dormant)または提供終了(end-of-life)ステータスに移行されています。例としては、Avalon、Burrow、Explorer、Quilt、Sawtoothなどが挙げられます。
Hyperledgerの歴史とミッション
Linux Foundationは2015年、正式リリースの1年前にHyperledger Projectの創設を発表しました。2016年にエグゼクティブディレクターに就任したBrian Behlendorf氏は、Hyperledgerプロジェクトが独自の暗号通貨を発行することはないと明言しています。
同年、プロジェクトはコードベースやその他のコア技術のインキュベーション提案の受け付けを開始しました。当初受け入れられたブロックチェーンフレームワークのコードベースには、Hyperledger Fabricとlibconsensusがありました。その後、Intelの分散型台帳であるSawtoothもインキュベートされました。
2018年には本番環境対応のSawtooth 1.0が登場し、2019年にはHyperledger Fabricの長期サポート(LTS)版が発表されました。
2021年10月、Behlendorf氏はエグゼクティブディレクターの職をDaniela Barbosa氏に引き継ぎました。同じ月、Hyperledgerは「Hyperledger Foundation」へとブランド変更されました。この変更を発表したブログ記事によると、その目的は「組織としてのHyperledgerと個々のHyperledgerプロジェクトの間に、より明確な線を引くこと」でした。
2021年から2022年にかけて、SawtoothやAvalonといった初期プロジェクトの一部が退役しました。そして2024年、Hyperledger Foundationは、分散型技術を集約することを目的としたオープンソース財団「Linux Foundation Decentralized Trust」の傘下に入りました。
2025年には、IBM ResearchとHyperledgerコミュニティの共同イニシアチブにより、「Fabric-X」と呼ばれる一連のHyperledger Fabric拡張機能が誕生しました。
なお、Hyperledger Fabricだけがブロックチェーンプラットフォームの選択肢ではありません。Hyperledger Fabricの詳細とともに、検討すべき7つのその他のブロックチェーンプラットフォームについても確認しておきましょう。
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