Macで機密ファイルを安全かつ完全に削除する方法

Windowsと同様に、OS X(macOS)にも、ハードドライブ上のデータを安全に消去するためのツールが標準で搭載されています。ただし、これらのツールが有効に機能するのは従来のHDD(ハードディスクドライブ)の場合です。近年のMacに搭載されているSSD(ソリッドステートドライブ)では、データの安全な削除がはるかに複雑になるため、後述するツールの多くは期待どおりの効果を発揮できません。
当サイトでは以前、ファイルの保護・暗号化に使えるAppleの「FileVault」をご紹介しました。ファイルをしっかり暗号化しておけば安心ですが、それでも機密データを完全に削除したいという場面はあります。そんなときは、以下で紹介する方法を試してみてください。
「ゴミ箱に入れる」だけで本当に削除されるのか?
まず、「ゴミ箱へ移動」をクリックしたときに、裏側で何が起きているのかを詳しく見てみましょう。実際に行われているのは、文字どおり「移動」だけです。OS Xは選択したファイルをMacのゴミ箱フォルダへ移動するだけで、ファイルそのものは削除されず、エントリも消えず、そして何より重要なことに、ディスク容量は1バイトも解放されません。OS Xは単純に、ファイルを元の場所からユーザーディレクトリ内の「/.Trash」という専用フォルダへ移しているだけなのです。

Dockのゴミ箱アイコンをクリックすると、OS Xはこのゴミ箱フォルダを開きます。ここにはゴミ箱へ移動したすべての項目が表示されており、ファイルをドラッグして元に戻すこともできますし、「空にする」ボタンを押せば一括で処理できます。
多くの人は「空にする」をクリックすればファイルが見えなくなり、「削除された」と思い込みます。しかし実際には、ファイルは本当に消えていません。内部で行われているのは、ゴミ箱内のファイルへのファイルシステム上のリンク(参照)を外す処理だけです。
つまり、ファイルの実データは、それを指し示していた名前や親フォルダとの関連を断たれるため、特定の場所に存在しなくなり、OS Xはそれらを認識できなくなります。しかし、見つからないからといって消えたわけではなく、少なくともしばらくの間はハードドライブ上にデータが残り続けるのです。
なぜファイルを削除するとディスク容量が増えるのか?
ファイルからデータブロックのリンクが外されると、OS Xはその領域を「未使用のストレージ」として扱います。これが、ファイルを削除するとディスク容量が解放される仕組みです。新しいファイルを保存する際、OS Xは単に、リンクが切れた(削除済みの)ファイルが以前占有していた領域へ上書きしていきます。
この仕組みには良い面と悪い面があります。誤ってデータを失ってしまった場合、ディスクの容量や使用状況にもよりますが、削除済みファイルが上書きされるのは数秒後のこともあれば、数日後、場合によっては1年後のこともあります。そのため、リンクが切れた状態で残っているデータを使えば、誤って削除したファイルを復元できることもあるのです。
一方で、これは悪意のある第三者にとっても同じことです。盗まれたMacから「削除済み」のファイルを復元される恐れがありますし、データを消したつもりで中古として売却したMacから個人情報が流出するといった悲劇も起こり得ます。
方法1:「確実にゴミ箱を空にする」を使う
Mac上の機密データを手軽に安全に削除する方法が、「確実にゴミ箱を空にする(Secure Empty Trash)」機能です。通常の「ゴミ箱を空にする」とよく似ていますが、決定的な違いがひとつあります。ファイルのリンクを解除する前に、OS Xがそのデータを無意味なランダムデータで上書きするのです。
これにより、仮に誰かがデータの復元を試みても、そこにあるのは使い物にならないデータの塊だけです。要するにOS Xは、「ファイルが削除されてから、システムに上書きされるまでの時間」を限りなくゼロに近づけるわけです。削除と同時にランダムな無意味データで即座に上書きし、その領域はいずれ新しいファイルで置き換えられます。

なお、ゴミ箱を確実に空にするには、ターミナルを起動していくつかのコマンドを入力する必要があります。
方法2:ディスク全体を安全に消去する
ディスクユーティリティを使えば、ディスクやパーティションの中身全体を安全に消去することもできます。左側のサイドバーで対象のディスクを選択し、「消去」を選んだら、「セキュリティオプション」をクリックしましょう。

表示されるスライダーは、「空き領域を消去」機能のものと同様です。一番左にするとランダム上書きなし(安全性なし)、一番右にすると「最も安全」な削除になります。その間の段階でも、目的に応じて上書きの回数を選ぶことができます。

これでディスクの内容がすべて消去され、データは指定した回数だけ安全に上書きされます。
補足:最新のmacOSでの注意点
OS X 10.11 El Capitan以降、Appleは「確実にゴミ箱を空にする」機能を、さらにmacOS 10.12 Sierra以降ではディスクユーティリティの「空き領域を消去」機能をそれぞれ廃止しました。これは、SSDの寿命への影響や、ジャーナリング方式のファイルシステムでは完全な上書きが保証できないためです。最新のMacで機密データを守りたいなら、最も確実な対策はFileVaultによるディスク全体の暗号化です。暗号化されたボリューム上のデータは、暗号化キーがなければ実質的に復元できないため、Macの売却や譲渡時にはディスクを初期化するだけで高い安全性が得られます。
まとめ
データ漏洩やハッキングが日常的な昨今、重要なデータをローカルに保存しておくことは必ずしも賢明とは言えませんが、それでも必要に迫られる場面は多々あります。本記事で紹介したテクニックを活用すれば、機密データを削除する際に、覗き見の目から情報を守ることができます。「後悔するより、用心する方がいい」――これはデータ管理においても変わらぬ鉄則です。
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