macOSでファイルを暗号化する理由と方法|FileVault・VeraCrypt・Encryptoなど5つの手段を徹底解説

ファイルの暗号化というと、スパイや不倫中の人だけが必要とする特別な対策のように思われがちですが、実はすべてのユーザーにとって取り組むべき重要なセキュリティ対策です。
そもそもなぜ暗号化が必要なのか?
「隠したいものがなければ、プライバシーを気にする必要はない」と考える人もいるかもしれません。しかし現実には、世界に知られたくない情報をひとつも持っていない人は存在しません。内容が大したことでなくても、自分の人生のあらゆる詳細が丸見えになっても平気という人はごく少数派です。運転中に一度もスピード違反をしたことがない人がいないのと同じように、私たち全員が何かしら「隠したいもの」を持っているのです。
また、暗号化を検討すべき理由は個人のプライバシーだけではありません。企業の機密情報や顧客データなどをノートPCに保存している場合、ログインパスワードだけで守るのは明らかに不十分です。紛失や盗難のリスクを考えると、暗号化は必須の対策と言えます。
暗号化とは何か?
暗号化とは、データを特殊な形に変換し、許可されていない第三者には読み取れないようにする技術です。原理としては、学生時代に友達へ暗号文でメッセージを送ったのと同じ発想です。
現代のコンピュータ暗号化は、一方向には高速に処理できる一方、逆方向の計算は極めて困難という数学の特性を利用しています。暗号化(順方向)の計算が速ければアルゴリズムは快適に動作し、鍵なしで復号(逆方向)しようとすると天文学的な時間がかかるようであれば、その暗号は事実上解読不可能ということになります。
1. FileVault:Mac標準のフルディスク暗号化

FileVaultはすべてのMacに標準搭載されている機能で、OS X Yosemite以降は新規セットアップ時にデフォルトで有効になっています。ハードドライブ全体を暗号化する方式で、その解除キーとなるのがあなたのログインパスワードです。つまり、パスワードがなければデータは一切読み取れません。
万が一に備えてリカバリーコードが発行され、iCloudアカウントでのロック解除にも対応しています。ただし、パスワード・リカバリーコード・iCloudアカウントのすべてを失うと、データは永久に取り出せなくなるため、管理には十分注意してください。
有効かどうかを確認するには、「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」→「FileVault」タブを開きます。右側のボタンが「FileVaultをオンにする」となっていれば無効の状態なので、鍵アイコンで設定を解除してボタンをクリックすれば暗号化が始まります。なお、macOS Ventura以降では「システム設定」→「プライバシーとセキュリティ」から確認できます。
2. VeraCrypt:柔軟性の高いオープンソース暗号化

VeraCryptはオープンソースで開発されている暗号化ツールで、暗号化ボリュームを作成できます。USBメモリやディスクパーティションといった物理ボリュームはもちろん、DMG形式のディスクイメージのような論理ボリュームも作成可能です。米国政府が採用しているAESをはじめ、多彩な暗号化規格から選べる点も魅力です。
堅牢で評価の高いソフトですが、導入には多少の手間がかかります。動作には別途「macFUSE」というユーティリティのインストールが必要で、VeraCryptで作成したボリューム内のファイルを閲覧する際も、必ずVeraCrypt経由でマウントしなければなりません。
3. Concealer:暗号化とパスワード管理を兼ね備えたツール

Concealerの基本機能はVeraCryptと類似しており、ファイルを保存できる暗号化ボリュームを作成します。VeraCryptより直感的に操作できる一方、選択できるオプションは少なめです。多くの暗号化ソフトと同様、Concealerで作成したボリュームへアクセスする際は、常にConcealerを経由する必要があります。
特筆すべきは、パスワード管理ツールとしての追加機能です。各種サービスのパスワードはもちろん、クレジットカード番号や銀行口座情報も簡単に暗号化して一元管理できます。
4. Encrypto:とにかく手軽なファイル暗号化

Encryptoは、筆者がこれまで使った中で最もユーザーフレンドリーな暗号化ソフトです。機能はシンプルそのもので、単一のファイルをパスワードで暗号化することに特化しています。
使い方は、Encryptoのウィンドウにファイルをドラッグ&ドロップしてパスワードを設定するだけ。復号する際は、暗号化ファイルを再びEncryptoにドラッグしてパスワードを入力します。内部ではAES-256という強固かつ標準的な暗号方式を採用しており、セキュリティ面でも安心です。細かな設定はできませんが、そのシンプルさこそが最大の強みです。「最良の暗号化とは、実際に使われる暗号化である」という言葉の通り、続けやすい仕組みが何より重要なのです。
5. Keka/7-Zip:圧縮アーカイブごと暗号化

ZIPファイルにパスワードを設定できることをご存じの方は多いでしょう。しかし残念ながら、標準的なパスワード付きZIPはセキュリティとしてほぼ無意味です。攻撃者はアーカイブ内のファイル名やメタデータを閲覧できてしまうからです。
そこで役立つのが7-Zip形式の暗号化機能です。7zアーカイブは、ファイル本体だけでなくファイル名までもまとめて暗号化できます。ただし、Macの標準機能では7z形式を扱えないため、専用アプリが必要です。
現時点で最もおすすめなのが「Keka」です。あらかじめセキュリティ設定を済ませておけば、ウィンドウにファイルをドラッグするだけで、元ファイルの隣に暗号化済みの7zアーカイブが生成されます。復号するときはFinderでファイルを開き、表示される小さなKekaウィンドウにパスワードを入力するだけです。
まとめ
父の口癖は「錠前は正直者のためにある」というものでした。熟練した攻撃者から身を完全に守ることはおそらく不可能ですが、大切なデータと外部との間に壁を築きたいなら、暗号化は手軽に安心感を得られる有効な手段です。用途に合わせてFileVault、VeraCrypt、Concealer、Encrypto、Kekaを使い分け、日頃からデータ保護を習慣づけましょう。
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