NATとは?仕組みや種類、使われる理由をわかりやすく解説
「IPアドレス」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。まだよく知らないという方は、まずIPアドレスの基礎を解説した記事をご覧ください。本記事ではNAT(Network Address Translation/ネットワークアドレス変換)について説明しますが、その前提として押さえておきたいのは、IPアドレスには数に限りがあるということです。さらに、同じネットワーク上に同じIPアドレスを持つデバイスが2つ存在することはできません。
ここで問題になるのが、家庭内ネットワークとインターネット全体のように、異なるネットワーク間では同じIPアドレスが重複したり、アドレスの設定方法に互換性がなかったりする点です。NATは、IPアドレスの枯渇問題と、相互通信が必要なのに互換性のないネットワークの問題を、一度に解決した技術です。
普段は意識する必要はほとんどありませんが、インターネット接続の不調の原因がNATの誤動作にあることもあります。NATが何者で、どう動くのかを基本的に理解しておけば、トラブル発生時の解決にも役立ちます。
NATはどこで行われるのか?
一般ユーザーの場合、NATの処理はルーターが担当します。ルーターにはプロバイダ(ISP)からグローバルIPアドレスが割り当てられており、これがインターネット側から見えるアドレスです。一方、家庭内ネットワークの各デバイスにはプライベートIPアドレスが割り当てられ、デバイス同士の通信にはこちらが使われます。
ネットワーク内のデバイスが外部と通信しようとするときは、ルーターが代理として立ちます。ルーターは自分のグローバルIPアドレスを使って通信し、「どのプライベートIPアドレスがどんな通信を要求したか」を記録しています。そして、返ってきたデータパケットが正しいデバイスに届くよう振り分けるのです。
プライベートIPとグローバルIPの違い
NATの種類に入る前に、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスについて簡単に整理しておきましょう。
慣例として、特定の用途のために一部のIPアドレス範囲が予約されています。グローバルIPアドレスは、ルーターやWebサーバーなど、インターネットに直接面する機器のためのものです。ISPがルーターにグローバルIPアドレスを割り当て、インターネット上の他者から見えるのはこのアドレスです。プライベートアドレスは「192.168.0.X」や「10.1.1.X」のような形式が一般的ですが、ルーターによって異なります。プライベートアドレスは同一のプライベートネットワーク内で一意である必要がありますが、別々のプライベートネットワーク間ではほぼ確実に同じアドレスが使われています。
前述のとおり、グローバルIPアドレスはインターネット上の全員から見えるアドレスです。Webサイトにアクセスするとき、ブラウザはそのサイトのグローバルIPアドレスに接続します。通常、家庭用ルーターは自分が開始していない外部からのアクセスをグローバルIP経由で受け付けません。つまり、友人のルーターのグローバルIPアドレスを入力しても、そのネットワーク内のデバイスにはアクセスできないのです。
しかし、ゲーム機などの一部のサービスやデバイスは、もう少し緩い設定を必要とします。ここで登場するのがさまざまなNATタイプです。利用したいサービスに対してNATタイプが合っていないと、問題が起きがちです。次のセクションで詳しく見ていきましょう。
NATの種類
NATの基本概念自体はそれほど複雑ではありませんが、実際の動作には細かなニュアンスがたくさんあります。ニーズに応じて、いくつかのNATタイプが使い分けられています。
スタティックNAT
スタティックNATは、特定のプライベートIPアドレスを特定のグローバルIPアドレスに1対1でマッピングする方式です。この方式では、グローバルアドレスにマッピングされたデバイスへ直接アクセスできます。
これは、プライベートネットワークの一部でありながら外部に公開する必要があるWebサーバーなどで使われます。静的マッピング経由でサーバーにアクセスしても、そのプライベートネットワーク上の他のデバイスにはアクセスできません。一方、サーバー自身は内部ネットワークのデバイスと自由に通信できます。
ダイナミックNAT
ダイナミックNATは、複数のグローバルIPアドレスのプールを持ち、それをプライベートネットワーク上のデバイスに動的に割り当てたい場合に使われます。
これは外部からWebサーバーへアクセスさせるためのものではありません。代わりに、プライベートネットワーク上のデバイスがインターネットなど外部リソースにアクセスしようとしたときに、プールの中から1つのグローバルIPアドレスが割り当てられる仕組みです。
NATオーバーロード(NAPT/PAT)
スタティックNATとダイナミックNATの要素を併せ持つNATオーバーロードは、最も一般的な形式で、多くの家庭用ルーターが採用しています。「ポートアドレス変換(PAT)付きNAT」などとも呼ばれます。
多くの場合、ルーターに割り当てられているグローバルIPアドレスは1つだけですが、ネットワーク上のすべてのデバイスがインターネット接続を求めます。NATオーバーロードでは、ルーターが自分のグローバルIPアドレスとサーバーのアドレスの間に接続を確立し、パケットを送信すると同時に、戻り先となるポート番号を割り当てます。
これにより、どのパケットがプライベートネットワーク上のどのIPアドレス宛てかを判別できます。ちなみに、この処理こそがPAT(ポートアドレス変換)の部分です。
メーカー独自のNATタイプ
さらに話をややこしくしているのが、独自のNAT分類を導入している企業の存在です。これは主にゲーム機に関係するもので、ネットワークテストを実行すると「NATタイプ2」や「NATタイプD」のような表示が出ることがあります。
これらの分類は各コンソールやデバイスメーカー固有のもので、それぞれが実際に何を意味するのかは、公式ドキュメントで確認する必要があります。
NATトラブルの一般的な解決策
ほとんどの人にとって、NATは完璧かつ透過的に機能します。しかし時には、誤動作したり障害になったりすることもあります。
繰り返しになりますが、トラブルに遭遇しやすいのはゲーム機です。一部のオンラインサービスでは、外部から自分のグローバルIPアドレスへのアクセス要求を受け入れる必要がありますが、標準的なNAT設定では通常これが許可されていません。幸い、NATの制限を緩めて着信接続を可能にする、いくつかの定番の解決策があります。
まず、ルーターの管理画面にアクセスし(取扱説明書を参照)、UPnP(Universal Plug and Play)が有効になっているか確認しましょう。この機能により、ローカルネットワーク上のアプリケーションが、ネットワーク設定を手作業で変更することなく自動的にポート転送を行えます。ただし注意点として、マルウェアなどの悪意あるソフトウェアもUPnPを利用できるため、この機能を使う場合はすべてのデバイスをスキャンし、安全を確認しておきましょう。
手動でのポートフォワーディング(ポート開放)という選択肢もあります。これにより、より緩い接続を必要とするデバイスに対して、個別に対応することが可能です。
まとめ:NATを理解すればネットワークトラブルも怖くない
以上が、NATについて最初に知っておくべきポイントです。NATの細部の仕組みはすぐに複雑になりますが、NATが大まかに何をしているのか、なぜ時に問題が起きるのかを理解していれば、ネットワークトラブルに遭遇したときに、どの対処法が効果があり、どれが効果がないのかも判断できるようになります。
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