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あなたの医療記録は機密情報――でも、本当に「私的」なものなのか?

医療制度は国によって異なりますが、「医療記録が極めて個人的な情報であること」は世界中で共通した認識です。医療記録には、私たちの最も内面的で、時に心を乱すような出来事が詳細に記録されています。私たちはこうしたデータを医療機関に託しています。選択の余地がないからという理由もあるでしょうし、最良の治療につながると信じているからでもあります。

しかし、インターネット上のあらゆるデータと同じように、医療業界の一部には私たちのデータを収益化したいという思惑があります。問題は、すべての専門的な医療を拒否しない限り、この情報の存在自体を選べないという点です。ボタンを押せば病歴を消せる、なんてことはできませんから。

だとすれば、こんな疑問が浮かびます。有効な同意ができないデータなら、そもそも医療機関が私たちの医療記録を販売したり共有したりすることは許されるべきなのでしょうか?

なぜ医療記録は機密扱いされるのか?

体調を崩したり医学的な助言が必要になったとき、多くの人はまず医師に相談します。これは当然に思えます。医療従事者は身体や疾病、薬について専門的な訓練を受けているのですから。しかし、それ以外にもう一つ重要な理由があります。それはプライバシーです。親しい友人や家族にも打ち明けられないデリケートな話題は少なくありません。複雑な社会的・歴史的な背景から、病気が恥ずかしいこと、恥じるべきことだと捉えられてしまうケースがあるからです。

医療は個人だけでなく集団にとっても関心事です。新型コロナウイルスのパンデミックは、医療介入の二面性を浮き彫りにしました。ウイルスに感染した人は自分自身が重篤化する可能性があり、放置すれば友人や家族、同僚など他者へ感染を広げてしまうかもしれません。だからこそ、自分の状況がどう見られるかを気にすることなく、医療従事者と率直に話せる環境が不可欠なのです。

病気は孤立して起こるものではないため、患者やその状態に関する情報の共有が有益、あるいは不可欠となる場面もあります。例えば、感染症の発生を監視する中央データベースの構築、被害の防止、法的義務の履行などが挙げられます。重要なのは、患者が自分のデータがどのように共有されるのかを十分に理解し、医師や病院、その他の医療関係者がこの極めてセンシティブな情報を慎重に扱ってくれると信頼できることです。

医療プライバシーを守る法律とは?

20世紀に近代医学が発展するまで、医師の診察を受けても記録が残らないことも珍しくありませんでした。仮に記録があっても、それは紙のコピー一枚であり、アクセスできるのは医療従事者だけでした。ところが今では、かつてないほど大量のデータが、ますます自動化された手段によって収集されています。例えば血液検査が必要になれば、医療機関が採血の予約を手配し、検体は検査機関へ送られます。

ほとんどの病院や診療所は独自の検査施設を持たないため、検査は第三者機関によって行われます。つまりこの一つの事例を見ても、健康状態に関するデータが複数の場所で生成され、最終的に医療機関によって取りまとめられているのが分かります。主治医は信頼できても、自分の医療データに誰が触れるのかについては、常に十分な情報を得た上で判断できるわけではないのです。

とはいえ、治療を受けるためにはデータ共有が必要になる場合もあります。だからこそ、医療機関が守秘義務を守りプライバシーを保護してくれると信頼すると同時に、データが安全に保管され、同意なく共有されないことを保証する仕組みが必要です。世界各国の立法府はこの課題に取り組んできており、多くの国で何らかの形で医療データの法的保護が存在します。

米国では州ごとに患者データに関する法律が異なりますが、1996年、ビル・クリントン大統領は「1996年医療保険の携帯性と責任に関する法律(HIPAA)」に署名しました。この連邦法により、すべての患者は自身の個人情報(PHI:Personal Health Information)を閲覧できるようになり、誤ったデータの修正を求める権利など、プライバシーに関わるさまざまな権利が認められました。

さらに2009年には、バラク・オバマ大統領が「2009年米国回復・再投資法(ARRA)」を成立させました。これには「経済および臨床医療のための医療情報技術法(HITECH)」が含まれています。HITECHのD編は電子健康記録(EHR)のプライバシー条項に特化しており、過去の法制を改善するとともに、第三者が患者データを扱う際の指針や、HIPAA・HITECH違反時の罰則についても定めました。

誰があなたの医療データを使うのか?

法律による保護が存在しても、実際の運用が同じであるとは限りません。保険制度に基づく米国の医療システムは、状況をさらに複雑にしています。主治医との関係は続いても、加入する保険会社は時間とともに変わることがあります。しかも保険会社は営利企業であり、コストの高いサービスを制限しようとするのは自然な流れです。

しかし、そのような判断を下すにはデータが必要です。保険会社は医療機関や既往歴から医療ニーズに関するデータを収集できますが、それ以外のデータセットとも組み合わせることがよくあります。例えば2018年、ProPublicaは保険会社が収集する個人情報を調査し、データブローカーが保険会社と緊密に連携し、学歴、純資産、家族構成、人種、さらにはSNSへの投稿まで共有している実態を明らかにしました。

HIPAAやHITECHは医療データを保護しますが、それ以外のデータには適用されません。そのため企業は、既存の情報を医療記録と紐付ける動きを強めています。そして問題は保険会社だけにとどまりません。英国では国民皆保険が国家によって提供されており、国民保健サービス(NHS)は税金で賄われ、他の医療システムのような商業的圧力を受けていません。

しかし、NHSが第三者とデータを共有する必要が生じたとき、事態は複雑になります。2016年、NHSがGoogle傘下の人工知能企業DeepMindと患者データを共有していたことが発覚しました。AIによって医療判断の自動化や改善が可能になり、全体的な成果向上につながるだろうという期待があったためです。ところが、当該の患者からインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)を得ることは一切なく、この契約は法律違反と認定されました。

数年後、DeepMindはこれらの契約をGoogle Healthという同様のGoogle子会社に移管しました。Google Healthが患者データにどの程度アクセスできるのかは完全には明らかになっていませんが、New Scientist誌によれば、以前の分析中心だったDeepMindの業務よりも広い権限を持っているようです。データを貪欲に収集するGoogleの姿勢に警戒感を抱く人が多いのは無理もありません。Fitbit買収後は、アカウントに紐付いた各種フィットネスデータをも保有することになったのですから。

インフォームド・コンセントの必要性

DeepMindとの契約が違法とされた理由はいくつもありますが、最大の懸念の一つは患者からのインフォームド・コンセントがなかったことです。前述の通り、守秘と信頼は医療の中核をなすものです。もし人々が医療機関やその提携企業を疑い始めたら、治療を避けたり、あらゆる医療に対して冷笑的・不信的になったりしかねません。

医療、特に薬やワクチンに関する誤情報は数十年前から蔓延してきましたが、コロナ禍は医療機関への不信がどれほど広がっているかを示しました。マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツが製造したマイクロチップがCOVID-19ワクチンに埋め込まれていると信じる人がいたほか、5Gネットワークがコロナウイルスの拡散に使われていると考える人もいました。

データ管理の不備、不透明または不明瞭な収集慣行、秘密裏のデータ共有契約は、さらなる不信を招きかねません。世界的なパンデミックであれ個人の病気であれ、人々が安心して医療提供者とプライベートな情報を共有できることが重要です。ここ1世紀で積み上げてきた医療の進歩は、医療制度への信頼が失われれば危機に瀕しかねません。

一方で、データ共有は予想もしなかった形で健康成果を改善する可能性もあります。大規模な統合データセットがあれば、研究者は傾向を把握し、介入効果を追跡できます。米国のような国が質の高い医療データを収集できれば、その知見をリソースの少ない国々と共有し、世界の健康格差を縮小することもできるでしょう。

ただし、その前提として、個々の患者が「どんなデータを共有しているのか」「何に使われるのか」「どうすれば自分のデータにアクセスできるのか」を適切に知らされる必要があります。

あなたは自分の医療記録を共有しますか?

大規模なデータセットはコスト削減、健康成果の改善、複雑な治療法開発の加速につながります。世界中で医療記録のデジタル化が進む今、研究者や国、企業とのデータ共有はかつてなく容易になっています。

この協力的なアプローチがもたらす恩恵は計り知れません。しかも、個人のプライバシーを犠牲にする必要はないはずです。インフォームド・コンセントなしにデータを共有する企業は、世界の医療制度への信頼を積極的に破壊しているのです。

これは社会にとって大きなリスクです。せっかくデータを集めても十分に活用できずに終わるかもしれないからです。さらに悪ければ、医療提供者への敵対的で不信な態度を生み、私たち全員をより脆弱な立場に置くことになりかねません。

とはいえ、テクノロジーは予防可能な疾病の回避にも役立ちます。例えば、プライバシーを重視した接触確認アプリは、感染症の伝播を断ち切る上で大きな力を発揮します。

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