スマートコンタクトレンズは本当に安全?開発状況とセキュリティ課題を徹底解説
スマートコンタクトレンズへの期待は長年語られてきました。近いうちに一部の製品が購入可能になるとされ、装用者にとって気になるのは「十分なセキュリティが確保されているのか」という点でしょう。
本記事では、スマートコンタクトレンズについて知っておくべき情報、その実現可能性、そして何より重要な「実際に安全に使えるのか」という疑問に答えていきます。
スマートコンタクトレンズの開発を手がける企業
現在、スマートコンタクトレンズの商用化を目指す企業はまだ少数です。主要なプレイヤーとその動向を見ていきましょう。
Innovega(イノベガ)
Innovegaは「eMacula」という製品を展開しており、スマートグラスとコンタクトレンズを併用して使用します。同社はレンズがユーザー体験においてどのような役割を果たすかを明示していませんが、公式サイトによると、コンテンツはグラスに組み込まれたスクリーンに表示される仕組みとのことです。
ただし、セキュリティやデータの収集・保存については一切言及されていません。
さらに、いつ製品を購入できるのかという最重要の問いも未解決のままです。FAQページには2018年までに規制当局の承認を得る予定と記載されていましたが、それ以降の更新情報はありません。ホームページには2021年11月12日に締め切られる投資案件のバナーも掲載されていました。
Azalea Vision(アザレア・ビジョン)
Azalea Visionはベルギーのスタートアップで、医療用途に特化したスマートコンタクトレンズを開発しています。2021年夏のシリーズAラウンドで800万ユーロを調達し、光過敏症や眼疾患を抱える人々向けの製品の実現を目指しています。
開発チームは現在も研究を続けており、入射する光の明るさを自動的に調整するレンズが構想されています。眼科専門家が個々の装用者に合わせてカスタマイズすることも想定されています。
承認されれば幅広い需要が見込めるでしょう。例えば、白人男性の約8%が色覚異常を持ち、重症例では光過敏症を伴うことがあります。また、同社は明るい環境で悪化しがちな片頭痛の患者にもターゲットを絞っています。
Azalea Visionはセキュリティ面には言及していませんが、これらのレンズがデータを収集する兆候はありません。
Mojo(モジョ)
Mojoは視力矯正に加え、周囲の環境にデジタル情報を重ねて表示できる「Mojo Lens」を開発しました。ランニング後には、目の前の画面に走行ルートの地図や関連する統計データが表示されるイメージです。
レンズには砂粒ほどの大きさのLEDディスプレイが搭載され、固体電池で動作するスマートセンサーも組み込まれています。
Mojoによると、このコンタクトレンズは同社独自の「Invisible Computing」プラットフォーム上で動作し、必要なときにだけ情報を提供します。公式サイトではデータプライバシーへの配慮も示唆されています。
「Mojo Lensを身につけていただくことを、私たちは決して軽く考えていません。皆様の信頼を得ることに全力を尽くしています。だからこそ、皆様のデータが安全かつプライベートに保たれるよう、Invisible Computingプラットフォームを設計しているのです。」
「Mojo Lensで行うことはすべて、あなた自身のものであるべきだと私たちは考えています。テクノロジーはユーザーの利益のためにあるべきであり、その逆であってはなりません。製品の設計や体験の提供方法について、シンプルな言葉でオープンにお伝えすることをお約束します。」
とはいえ、詳細は明らかにされていません。魅力的な約束ではありますが、それを実現するには予期せぬ課題が立ちはだかるかもしれません。
開発者に問われるセキュリティ課題
IoT(モノのインターネット)機器のセキュリティを強化するためのヒントは、スマートコンタクトレンズにも応用できます。例えば、初期パスワードが設定されたアプリ付き製品を購入した場合は、すぐに推測されにくいパスワードへ変更すべきです。関連ソフトウェアも常に最新の状態に保ち、可能であれば自動更新を有効にしましょう。
しかし、セキュリティは開発段階から始まります。スマートコンタクトレンズの開発者が自問すべき実践的な問いを紹介します。
不要な機能や能力を搭載していないか?
競争の激しい今日のIoT市場では、最新かつ最高の機能を備えた製品を投入することが求められます。しかし、その対応がセキュリティリスクを高めることもあります。開発者は、スマートコンタクトレンズのどの要素が外部からの脅威に製品を晒す可能性があるかを評価すべきです。
その上で、セキュリティ対策によってリスクをどう軽減するかを検討します。開発中にサイバーセキュリティテストを実施すれば、防御策が模擬攻撃に耐えられるかを事前に確認できます。
ユーザーがIoTセキュリティをよりコントロールできる機能を盛り込むのも良いアイデアです。例えば、視界にある商品をその場で購入できるスマートコンタクトレンズがあると仮定すると、ユーザーはクレジットカード情報を保存しない選択ができますし、カードを紛失した際に購入機能を無効化する仕組みも利用できるでしょう。
そうすることで、ハッカーがアクセスできるデータとその悪用範囲を限定できます。
脆弱性はどう報告してもらうのか?
スマートコンタクトレンズは新しい製品カテゴリーのため、安全性への関心は特に高いはずです。セキュリティ専門家は倫理的ハッキング(ホワイトハッカーによる検証)を通じてこの重要な問いに答えます。
しかし、2021年11月の報告によると、脆弱性開示ポリシー(VDP)を整備している企業は22%未満でした。VDPは、発見した問題を関係者がどのように報告すべきかを定めた枠組みであり、報告者を法的リスクから守る規定が含まれることもあります。
IoT開発者は、脆弱性報告をめぐる重要な問い――新たな情報が届いた後に何をするのかなど――を自問する必要があります。例えば、ベンダーはサイバーセキュリティ研究者の調査結果をどのように再現・検証するのでしょうか。
問題をどう監視し、更新を配信するのか?
理想としては、消費者がスマートコンタクトレンズのセキュリティ問題を意識することはありません。開発側が問題を把握し、被害が発生する前に迅速に修正できている状態が望ましいのです。
そのために、開発者は問題を監視し内部で対処できる診断機能の組み込み方を探るべきです。これにより、顧客や研究者が不具合に気づく前に、性能低下や安定性の劣化を開発チームが察知できます。
あわせて、必要に応じたアップデートの最適な配信方法も考える必要があります。すべてのユーザーが自発的に新しいソフトウェアやファームウェアを導入すると期待するのは不十分です。対応しないユーザーもカバーするには、ベンダー側から接続済みデバイスへ自動的にアップデートを配信する仕組みを検討しましょう。
研究機関でのスマートコンタクトレンズ開発
研究者たちも、スマートコンタクトレンズが健康維持にどう役立つかに注目しています。関連の取り組みはまだ初期段階で、セキュリティ機能については議論されていないようですが、成果が生活の質を向上させ、疾病管理を変える可能性があるため、紹介する価値があります。
一つの革新は、糖尿病を検出できるスマートコンタクトレンズです。内蔵された薬剤送達システムにより、網膜を損傷し失明につながり得る糖尿病網膜症の治療支援も期待されています。開発者はレンズが糖尿病の兆候をどう捉えるかは明言していませんが、無線センサーを搭載していることは確認しています。
また、米パデュー大学の科学者たちは、緑内障を含む眼疾患の早期発見・診断のためのスマートコンタクトレンズを開発しました。柔らかいレンズには網膜の電気生理学的活動を記録するセンサーが組み込まれ、負担の少ないモニタリングを可能にしています。現在臨床試験中のため、市販されるまでにはまだ時間がかかるでしょう。
さらに日本では、不快なドライアイを防ぐ自己保湿型スマートコンタクトレンズが開発されました。帯電した表面に電圧を印加すると液体が移動する「電気浸透流」を利用した製品です。
このレンズでは電流がハイドロゲル(親水性ゲル)に印加され、装用者の一時的な涙液貯留部から眼球表面へ液体が流れるよう促されます。研究チームは実験で2種類の電池もテストしました。
スマートコンタクトレンズの可能性
以上のように、視力矯正の枠を超えたスマートコンタクトレンズに多くの人々が期待を寄せる理由が見えてきます。多くの製品はまだ開発の初期段階にありますが、セキュリティを最優先する姿勢があれば、製品化の際により多くの人が安心して試してみたいと思うはずです。
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