C++でインクリメント操作を効率的に扱うスタックの設計方法
本記事では、以下の操作をサポートするカスタムスタックをC++で設計する方法を解説します。ポイントは、インクリメント操作を毎回全要素に適用するのではなく、遅延評価(lazy propagation)の考え方を使って効率化することです。
サポートする操作
- CustomStack(int maxSize):最大要素数 maxSize を持つスタックを初期化します。スタックが maxSize に達した場合、それ以上の追加は行われません。
- void push(int x):スタックのサイズが maxSize に達していない場合、要素 x をスタックの先頭に挿入します。
- int pop():スタックの先頭要素を削除して返します。スタックが空の場合は -1 を返します。
- void increment(int k, int val):スタックの下から k 個の要素に val を加算します。スタック内の要素が k 個未満の場合は、すべての要素に加算します。
解法のアプローチ
increment 操作のたびに下から k 個の要素を直接更新すると、計算量が O(k) かかり非効率です。そこで、加算値を記録する補助配列を用意し、pop のタイミングでまとめて反映させる手法を採用します。
手順
- スタック本体の配列 st、加算値を記録する配列 inc、容量を表す整数型変数 cap を定義します。
- コンストラクタで cap := N とし、inc をサイズ N + 10 の配列として初期化します。
- push(x):スタックのサイズが cap でない場合のみ、x を st に挿入します。
- pop():以下のように動作します。
- st が空なら -1 を返します。
- そうでなければ:
- スタックの最上位要素に inc[最上位のインデックス] を加算します。
- スタックに要素が残っている場合、inc[サイズ - 2] に inc[サイズ - 1] を加算します(下位の要素へ加算値を引き継ぐ)。
- inc[サイズ - 1] を 0 にリセットします。
- st の末尾要素を取り出し、その値を返します。
- increment(k, val):以下のように動作します。
- k を 1 減らします(0始まりのインデックスに変換)。
- k := min(k, スタックのサイズ - 1) とします。
- k < 0 の場合は何もしません。
- inc[k] に val を加算します。
この方法により、push・pop・increment はいずれも O(1) の計算量で実行できます。
C++での実装例
以下の実装を見ると、より理解が深まります。
#include <bits/stdc++.h>
using namespace std;
class CustomStack {
public:
vector <int> st;
vector <int> inc;
int cap;
CustomStack(int N) {
cap = N;
inc = vector <int>(N + 10);
}
void push(int x) {
if(st.size() == cap) return;
st.push_back(x);
}
int pop() {
if(st.empty()) return -1;
else{
st.back() += inc[st.size() - 1];
if(st.size() - 1 > 0 ){
inc[st.size() - 2] += inc[st.size() - 1];
}
inc[st.size() - 1] = 0;
int x = st.back();
st.pop_back();
return x;
}
}
void increment(int k, int val) {
k--;
k = min(k, (int)st.size() - 1);
if(k < 0) return;
inc[k] += val;
}
};
main(){
CustomStack ob(3);
ob.push(1);
ob.push(2);
cout << ob.pop() << endl;
ob.push(2);
ob.push(3);
ob.push(4);
ob.increment(5, 100);
ob.increment(2, 100);
cout << ob.pop() << endl;
cout << ob.pop() << endl;
cout << ob.pop() << endl;
cout << ob.pop() << endl;
}入力
プログラム内の main() 関数を参照してください
出力
2 103 202 201 -1
動作の解説
まず maxSize = 3 のスタックを作成し、1 と 2 を push した後、pop を呼び出すと 2 が返されます。続いて 2、3、4 を push しようとしますが、最大サイズが 3 のため 4 は無視されます。increment(5, 100) では要素数が 5 未満のため全要素(2 と 3)に 100 が加算対象となり、increment(2, 100) では下から 2 要素に 100 が加算されます。以降の pop の結果として 103、202、201 が順に返され、最後に空のスタックに対する pop で -1 が出力されます。
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