情報セキュリティにおける拡張順列(Expansion Permutation)とは?DES暗号の仕組みを徹底解説
拡張順列とは
情報セキュリティ、とりわけ共通鍵暗号方式であるDES(Data Encryption Standard)の処理過程において、「拡張順列(Expansion Permutation)」は非常に重要な役割を担う操作です。この操作では、平文の右半分にあたる32ビットのデータ(R)を48ビットへと拡張します。その際、ビットの順序を入れ替えるだけでなく、特定のビットを意図的に繰り返し使用することも特徴です。
拡張順列の目的
拡張順列には、主に以下の2つの目的があります。
鍵とのサイズを揃えること:XOR演算を行うために、右半分のデータサイズをラウンド鍵(48ビット)と同じ大きさに揃えます。
より長い出力を作ること:後続の置換(Sボックス)処理で圧縮可能な、長い結果を生成します。これにより1つの入力ビットが2つの置換処理に影響を与えられるようになり、出力ビットが入力ビットに依存する性質が急速に広がります。この現象は「雪崩効果(Avalanche Effect)」として知られています。
雪崩効果とDESの設計思想
DESは、暗号文の各ビットが平文の各ビットおよび鍵の各ビットにできるだけ速く依存するように設計されています。つまり、平文や鍵のごく一部が変わるだけでも、最終的な暗号文全体が大きく変化するという強固な性質を実現しているのです。
拡張順列の具体的な手順
拡張順列の処理は、以下の手順で行われます。
32ビットの右側平文(Right Plain Text:RPT)を、それぞれ4ビットずつ含む8つのブロックに分割します。
次に、各4ビットブロックを対応する6ビットブロックへと拡張します。これは、各4ビットブロックに対して2ビット余分に挿入するということです。追加されるのは、その4ビットブロックの1番目と4番目のビットの複製です。
2番目と3番目のビットは入力されたままの状態で書き込まれます。一方、1番目の入力ビットは2番目の出力位置に出力され、さらに48番目の出力位置にも現れます。同様に、32番目の入力ビットは47番目の出力位置と1番目の出力位置の両方に配置されます。
ビットの移動の流れ
この段階では、明らかに拡張と順列(並べ替え)が同時に行われています。例えば、以下のような流れになります。
- 1番目の入力ビット → 2番目および48番目の出力位置へ
- 2番目の入力ビット → 3番目の出力位置へ
以降も同様に続きます。このことから、拡張順列は一般的に表形式で表現されることがわかります。
RPT拡張順列表
RPT拡張順列表
| 32 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
| 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 1 |
鍵変換との連携とXOR演算
まず、鍵変換の段階で56ビットの鍵が48ビットへ圧縮されます。これに対して、拡張順列の処理では32ビットのRPT(右側平文)が48ビットへと拡張されます。
こうして両者のサイズが揃ったところで、48ビットの鍵と48ビットのRPTに対してXOR演算が実行されます。その演算結果は、次のステップであるSボックス置換(S-box Substitution)へと渡されます。
拡張順列の完了後、DESは拡張された右側セクションとラウンド鍵との間でXOR演算を行う必要があります。これにより、各ラウンドでのデータ撹乱が確実に行われ、暗号強度が高まる仕組みとなっています。
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