RubyではじめるGraphQL入門――音楽アプリのサンプルで学ぶスキーマ定義と実装
GraphQLの素晴らしさを絶賛する開発者の声を耳にしたことがある方も多いでしょう。このシリーズでは、実際に技術を手を動かしながら学んでいくスタイルを大切にしており、本記事ではGraphQLを活用したサンプルアプリケーションを通じて、その基本を解説します。
GraphQLとは何か
GraphQLは、API構築に使えるクエリ言語およびランタイムです。開発スタックにおける位置づけはREST APIと似ていますが、より柔軟性が高いのが特徴です。RESTと異なり、GraphQLではレスポンスの形式や内容をクライアント側で指定できます。SQLのSELECT文で取得結果を指定できるように、GraphQLでも返却されるJSONデータ構造を指定できます。ただし、SQLとの類推で言えば、GraphQLにはWHERE句は存在せず、レスポンスのデータを供給するフィールドをアプリケーションオブジェクト上で識別する仕組みになっています。
その名の通り、GraphQLはアプリケーションを「データのグラフ」としてモデル化します。ご自身のアプリケーションをそう捉えていない方もいるかもしれませんが、これは多くのシステムで採用されているモデルです。JSONで表現できるデータは有向グラフであり、つまりグラフなのです。アプリケーションを「APIを通じてグラフモデルを提示するもの」と考えると、GraphQLは格段に理解しやすくなります。
アプリケーションでGraphQLを使う
ここまで抽象的な説明をしてきましたが、次は実際にGraphQLを使ったアプリケーションを作ってみましょう。まずはデータモデル、すなわちグラフの定義から始めます。筆者は昨年、新しい趣味としてエレキアップライトベースの演奏と音楽全般の勉強を始めました。そこでデモアプリを考える際に、音楽関連の題材が自然と思い浮かんだのです。
サンプルのオブジェクトタイプはArtist(アーティスト)とSong(楽曲)です。Artistは複数のSongを持ち、Songは1人のArtistに紐付きます。各オブジェクトタイプにはnameなどの属性があります。
APIを定義する
GraphQLではSDL(Schema Definition Language)を使用します。GraphQL仕様では「型システム定義言語」と呼ばれることもあります。GraphQLの型は理論上どの言語でも定義可能ですが、最も一般的な実装非依存の記述方法はSDLなので、ここではSDLでAPIを定義します。
type Artist {
name: String!
songs: [Song]
origin: [String]
}
type Song {
name: String!
artist: Artist
duration: Int
release: String
}
ArtistはString型のnameを持ちます。感嘆符(!)はそのフィールドがnon-null(null不可)であることを意味します。songsはSongオブジェクトの配列、originはStringの配列です。Songもほぼ同様ですが、少し変わったフィールドが1つあります。releaseフィールドは本来日時型であるべきですが、GraphQLのコア型には該当する型が存在しません。異なるGraphQL実装間での完全な移植性を保つため、ここではStringを使っています。ただし、今回使用するGraphQL実装にはTime型が追加されているため、Songの定義を変更してreleaseフィールドをTime型にしましょう。返却値自体はStringですが、型をTimeとすることでAPIをより正確にドキュメント化できます。
release: Time
最後のステップは、オブジェクトを1つ以上取得する方法の記述です。これは「ルート」、クエリの場合は「クエリルート」と呼ばれます。今回のルートにはartistというフィールド(メソッド)を1つだけ持ち、アーティストのnameを引数として要求します。
type Query {
artist(name: String!): Artist
}
アプリケーションの作成
次に、これをアプリケーションでどう使うかを見ていきましょう。Ruby向けのGraphQLサーバー実装はいくつかあります。一部の手法では、先ほどのSDLをRuby相当のコードに変換する必要があります。筆者が開発したHTTPサーバー「Agoo」は、SDL定義をそのまま利用でき、Rubyコードもごく普通の素朴なRubyで書けるため、今回はこれを採用します。
Rubyのクラス名がGraphQLの型名と一致している点に注目してください。クラス名を型名と一致させることで、余計な複雑さを持ち込まずに済みます。
class Artist
attr_reader :name
attr_reader :songs
attr_reader :origin
def initialize(name, origin)
@name = name
@songs = []
@origin = origin
end
# Song自身がArtistに自分を登録するためにのみ使用される。
def add_song(song)
@songs << song
end
end
class Song
attr_reader :name # 文字列
attr_reader :artist # 参照
attr_reader :duration # 整数
attr_reader :release # 時刻
def initialize(name, artist, duration, release)
@name = name
@artist = artist
@duration = duration
@release = release
artist.add_song(self)
end
end
RubyクラスのメソッドがGraphQLのフィールドに対応します。メソッドは引数なし、またはargs={}という形式である点に注意してください。これはGraphQL APIが期待するシグネチャであり、今回の実装もそれに従っています。initializeメソッドはサンプル用のデータをセットアップするために使います。詳細は後述します。
クエリルートのクラスも定義が必要です。SDLのQueryルート型に対応するartistメソッドに注目してください。また、artists用のattr_readerも追加されています。SDLドキュメントのQuery型にこのフィールドを追加すれば、そのままAPIとして公開されます。
class Query
attr_reader :artists
def initialize(artists)
@artists = artists
end
def artist(args={})
@artists[args['name']]
end
end
GraphQLのルート(クエリルートと混同しないよう注意)は、クエリルートのさらに上位に位置します。GraphQLでは、ルートはオプションで3つのフィールドを持つと定義されています。ここでのRubyクラスはqueryフィールドのみを実装しています。イニシャライザでは、筆者がよく聴くニュージーランドのインディーバンドのデータを読み込んでいます。
class Schema
attr_reader :query
attr_reader :mutation
attr_reader :subscription
def initialize()
# テスト用のデータをセットアップ。
artist = Artist.new('Fazerdaze', ['Morningside', 'Auckland', 'New Zealand'])
Song.new('Jennifer', artist, 240, Time.utc(2017, 5, 5))
Song.new('Lucky Girl', artist, 170, Time.utc(2017, 5, 5))
Song.new('Friends', artist, 194, Time.utc(2017, 5, 5))
Song.new('Reel', artist, 193, Time.utc(2015, 11, 2))
@artists = {artist.name => artist}
@query = Query.new(@artists)
end
end
最後のセットアップは実装固有の部分です。ここでは、サーバーを初期化して/graphqlというHTTPリクエストパスのハンドラを登録し、起動します。
Agoo::Server.init(6464, 'root', thread_count: 1, graphql: '/graphql')
Agoo::Server.start()
続いて、GraphQL実装に先ほど定義したSDL($songs_sdl)を設定し、サーバーがリクエストを処理している間、アプリケーションはスリープ状態になります。
Agoo::GraphQL.schema(Schema.new) {
Agoo::GraphQL.load($songs_sdl)
}
sleep
このサンプルのコードはGitHubで公開されています。
APIを使ってみる
APIをテストするには、Webブラウザ、Postman、またはcurlが使えます。
試してみるGraphQLクエリは以下のようになります。
{
artist(name:"Fazerdaze") {
name
songs{
name
duration
}
}
}
このクエリはFazerdazeという名前のArtistを要求し、nameとsongsをJSONドキュメントとして返します。各Songについては、そのnameとdurationがJSONオブジェクトとして返されます。出力は次のようになるはずです。
{
"data": {
"artist": {
"name": "Fazerdaze",
"songs": [
{
"name": "Jennifer",
"duration": 240
},
{
"name": "Lucky Girl",
"duration": 170
},
{
"name": "Friends",
"duration": 194
},
{
"name": "Reel",
"duration": 193
}
]
}
}
}
クエリから任意の空白文字を取り除いたうえで、curlでHTTP GETリクエストを送ると、同じ内容が返ってきます。
curl -w "\n" 'localhost:6464/graphql?query=\{artist(name:"Fazerdaze")\{name,songs\{name,duration\}\}\}&indent=2'
クエリ内のdurationをreleaseに置き換えて試してみてください。RubyのTimeオブジェクトがJSON文字列へ変換される様子を確認できます。
曲のアウトロ
GraphQLで遊ぶのはとても楽しい経験でした。読者の皆さんも一緒についてきて、何かを学べたのであれば嬉しく思います。ありがとうございました。素晴らしい観客でした。もしRubyについてさらに語りたい方は、バーでグッズを販売していますので、お気軽にお立ち寄りください。
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