Rubyはあなたからエラーを隠している!?知っておきたい例外の落とし穴
Rubyは、一部のエラーや例外を意図的に隠すことがあります。
これには便利な側面もあります。たとえば Kernel#loop メソッドにブロックを渡して使う場合、StopIteration 例外が発生すると loop はそこで終了します。
しかし、それ以外の場面では、この仕様がデバッグ作業を一気に難しくしてしまうこともあるのです。
具体的な例を見ていきましょう。
隠される例外その1:Comparableモジュールと「<=>」メソッド
最初の例は、Comparable モジュールと <=> メソッドに関するものです。
以下がそのコードです:
class MyObject
attr_accessor :value
include Comparable
def initialize(value)
@value = value
end
def <=>(other)
raise ArgumentError, "can't compare #{other.class} with #{self.class}" unless other.is_a?(MyObject)
value <=> other.valuee
end
end
mo1 = MyObject.new(10)
mo2 = MyObject.new(10)
p mo1 == mo2
このコードを順番に見ていきましょう。
まず、value というアクセサを持つ MyObject クラスを定義し、Comparable モジュールを include しています。Comparable を取り込むことで、== や <、> といった比較メソッドが使えるようになります。
これらの比較メソッドは、すべて <=> メソッドを基盤として動作しています。ちょうど Enumerable の各メソッドが each メソッドを基盤としているのと同じ関係です。
次に、同じ値(10)を持つ2つのオブジェクトを生成しています。ここで重要なのは、値が同じでも別々のオブジェクトだという点です。
さて、この2つのオブジェクト mo1 と mo2 を比較すると……結果は false になります。
なぜでしょうか?
実は <=> メソッドの中にバグがあるのですが、Rubyがそのエラーを隠してしまっているのです!
よく見てください。エラーを見つけられますか?
見つけられたなら素晴らしい!見つからなくても大丈夫です🙂
エラーの正体はこちら:
value <=> other.valuee
valuee に気づきましたか?そう、タイプミスなのです!
通常であれば NoMethodError が発生するので、問題の原因にすぐ気づけるはずです。しかしこの例ではそうなりません。
朗報なのは、Ruby 2.3以降ではこの挙動が変わり、エラーが隠されなくなったことです。まだ古いバージョンのRubyを使っているなら、アップグレードを検討するもう一つの理由になるでしょう。
隠される例外その2:数値オブジェクトとcoerceメソッド
もう一つの例は、Numeric オブジェクト(Float や Integer)と coerce メソッドの組み合わせです。
以下がその例です:
class MyObject
attr_accessor :value
def initialize(value)
@value = value
end
def +(other)
other = MyObject.new(other) if other.kind_of?(Numeric)
value + other.value
end
def coerce(other)
mo = MyObject.new
mo.valuee = other
[mo, self]
end
end
mo1 = MyObject.new 10
mo2 = MyObject.new 10
p mo1 + mo2
# 20
p mo1 + 20
# 30
こちらも MyObject クラスですが、新たに + と coerce というメソッドが追加されています。
coerce メソッドを使うと、互換性のない2つの型を同じ型に変換し、一緒に演算できるようにできます。
このクラスは、秒数や価格など、何らかの数値を表すものと考えてください。
そして、次のような演算ができるようにしたいわけです:
mo1 + 20 20 + mo1
前者の mo1 + 20 は簡単です。自分のクラスの + メソッドは自由に実装できるからです。
しかし、Integer クラス側はどうでしょう?
Integer の + メソッドを書き換えて対応することも不可能ではありませんが、それはあまり良いアイデアとは言えません🙂
解決策は?
自分のクラスに coerce メソッドを実装することです。
Integer の + メソッドは、相手のオブジェクトが coerce を実装しているかどうかをチェックし、実装されていればそれを呼び出します。
さて、冒頭のコード例を思い出してください。次のコードを実行すると:
20 + mo1
mo1 の値は 10 なので、結果は 30 になってほしいところです。しかし実際に表示されるのは、次のエラーです:
MyObject can't be coerced into Fixnum
先ほどと同じパターンですね!
coerce メソッドの中でエラーが隠されています。問題の箇所は mo.valuee = other の部分です。
ここでもまたタイプミスをしているのですが、エラーメッセージはそのことを教えてくれません!
MyObject can't be coerced into Fixnum
こちらにも朗報があります。この挙動はRuby 2.5で変更されるため、隠されたエラーがまた一つ減り、心配する必要がなくなります。
まとめ
このように、例外を隠すことの危険性を示す好例となっています。例外についてさらに深く学びたい方は、著者の書籍『Ruby Deep Dive』も参考にしてみてください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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