パスキーを友人や家族と共有する方法と注意点|知っておくべきこと

公開日:2023年10月23日 8:01 AM EDT
本記事の執筆者であるAndrew Heinzman(アンドリュー・ハインツマン)は、5年以上の経験を持つテクニカルライターです。テックニュースや詳細な製品レビューを得意とし、特にAV機器、パソコン、スマートフォンの分野を専門としています。How-To Geekの姉妹サイトだったReview Geekでは、2年間ニュース編集者を務めました。英語文学の学士号を持つ彼は、学生時代と同じく、今も音楽と読書を趣味としています。
まとめ
- パスキーは、パスワードを覚えたり入力したりする必要をなくし、利便性とセキュリティを同時に高めます。デバイスに保存される「秘密鍵」と、ウェブサイトのサーバーに保存される「公開鍵」で構成される仕組みです。
- 現時点でパスキー共有に対応しているのは、Apple iCloudキーチェーンや1Passwordなど一部のサービスのみです。企業がアカウント共有の抑制とセキュリティ重視の方針を掲げるなか、パスキー共有が広く普及しない可能性もあります。
- パスキーは本来、セキュリティ強化を目的として設計されています。共有が容易すぎるとフィッシング詐欺などへの対策効果が損なわれるため、共有は特定のグループや個人に限定される可能性があり、今後の動向はまだ流動的です。
パスキーは、今後数年のうちにパスワードに取って代わると目されています。しかし、この移行期に立ちはだかる課題の一つが「パスキーの共有」です。パスキーはユーザー自身が内容を知らない前提で設計されており、手入力することもできません。それなら、パスキーで保護されたアカウントを友人や家族と共有するには、いったいどうすればよいのでしょうか?
本記事は、Cybersecurity Awareness Week(サイバーセキュリティ啓発週間)の一環として、Incogniとの協賛でお届けします。
パスキーとは?
従来のパスワードは不便なうえ、セキュリティ上のリスクを常に抱えています。たとえば、パスワードがデータ漏洩の対象になったり、巧妙なフィッシング攻撃によってハッカーへパスワードを打ち込ませてしまったりする恐れがあります。パスワードの利便性と安全性を高める方法はいくつかあります(有料のパスワードマネージャーの導入が最善策)が、実際にデジタルライフの防護に取り組む人はごく少数です。
そこで生まれたのが、FIDOアライアンスによる「パスキー」です。Google、Apple、Microsoftをはじめとする大手テック企業がFIDOアライアンスに参加しており、パスキーをパスワードの完全な代替手段とする方針で合意しています。その仕組みは驚くほどシンプルです。パスキーでは、覚えるものも、入力するものもありません。ウェブサイトに登録すると「秘密鍵」が生成され、スマートフォンやパソコンに直接保存されます。この秘密鍵は、ウェブサイトのサーバー側に保管される「公開鍵」とペアになっており、両者が揃うことで本人確認が完了し、ログインが許可される仕組みです。
秘密鍵を知っている人物は存在しません。自分自身でさえもです。仮にウェブサイトがデータ侵害を受けても、流出するのは公開鍵だけです。さらに、ハッカーがあなたのスマホやPCを直接操作し(指紋認証を欺き、PINを突破して)、秘密鍵を盗み出すことは極めて困難です。
現在、主要なOSにはいずれもパスキー管理機能が標準搭載されており、1Passwordなどの一部のパスワード管理ツールもパスキーに対応しています。しかし、パスキーがウェブ全体でスタンダードになるにつれ、「友人や家族と鍵を共有するにはどうすればいいのか」という疑問が必ず浮上します。秘密鍵の中身を知らない以上、そもそも共有など可能なのでしょうか?

クレジット:Hannah Stryker / How-To Geek
パスキーの共有に対応しているパスキー管理サービスは、ごくわずかしかありません。共有が重要であれば、有料のパスワードマネージャーを利用するのが最良の選択肢となるでしょう。ただし、友人や家族にも同じパスワードマネージャーを使ってもらう必要がある点には注意が必要です。
現在、パスキー共有機能を提供している(または提供を計画している)主なサービスは以下の通りです。
- Apple iCloudキーチェーン
- 1Password
- NordPass
- Bitwarden(パスキー共有を予定)
- Dashlane(パスキー共有を予定)
また、GoogleではChrome向けのパスワード共有機能が開発中と伝えられており、将来的にパスキー共有が実現する可能性もあります。一方、Windows 11のパスキー実装については、そうした動きはまだ報じられていません。
なお、当面のあいだはパスワードとパスキーが共存していきます。どうしてもログイン情報を誰かと共有したい場合は、従来どおりパスワードを送れば事足ります。ウェブサイトでパスキーを作成しても、少なくとも現時点では既存のパスワードが使えなくなることはありません。そして、パスワードが廃止された後も、パスキーの共有は不要になる、あるいは推奨されない可能性が高いのです。
パスキーの共有は、一般的な習慣にならないかもしれない
2023年10月時点で、パスキー規格に実際に対応しているアプリ・ウェブサイトは約75件にとどまります。その大半はパスキーをデフォルトのサインイン方式としておらず、パスキーを強制しているサービスは一件もありません。パスキーが普及し、利用が義務づけられるようになれば、アカウント共有の問題への対応が避けられません。しかし、良し悪しは別として、その解決策としてパスキー共有が採用されない可能性があります。
多くのウェブサービスはアカウント共有の取り締まりを強化しており、SMSやメールによる二要素認証を必須とするサイトもすでに少なくありません。こうした企業がパスキー共有を奨励するとは考えにくいのが実情です。確かに、家族や介護者、同居人とアカウントを共有せざるを得ないケースは存在します。とはいえ、その場合でもパスキー共有は必須ではありません。企業側は、利用者一人ひとりに個別のパスキーを生成させる、あるいはあなたのアカウントに紐付いた個別アカウントの作成を求める、といった対応を取る可能性があります。(後者の方式は、プライバシー感覚を保ちつつデータ収集もしやすいことから、すでに一部のサブスクリプションサービスで採用されています。)
何より、パスキーは本来セキュリティを高めるために導入されるものです。共有があまりに簡単だと、フィッシング詐欺などの攻撃が依然通用してしまい、セキュリティ水準の大幅な向上は期待できません。そのため、パスキー共有は「稀な行為」になるか、「非推奨」とされるか、あるいはパスキーマネージャー内で作成したファミリーグループに限定される可能性があります。全体の落ち着き先が見えるまでには、あと数年かかるでしょう。
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