ソフトウェア
 Computer >> コンピューター >  >> ソフトウェア >> ソフトウェア

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

Intel(インテル)は、数十年にわたりチップの設計・製造市場をリードしてきた多国籍企業です。業界のリーダーとして、コンピュータシステムの製造・組立に関わる大手企業との大型契約やパートナーシップを確保してきました。では、なぜIntelはチップセット設計事業で支配的な地位を確立できたのでしょうか。同じ分野の他社はどうなっているのでしょうか。なぜIntelには競争が少なく、大規模な市場を持ちながらもARMホールディングスが影を潜めているのか。本記事では、Intelが現在の強力な地位を獲得した経緯と、今後の新事業に関する発表がさらなる成功につながる理由を詳しく見ていきます。

進化への第一歩:Intel 4004の登場

今日私たちが知るプロセッサの誕生をたどるなら、シリコンの発見まで時代をさかのぼる必要があります。プロセッサは、ニコラ・テスラが提唱したスイッチやゲートの概念、そして1940年代にベル研究所で発明されたトランジスタから、長い時間をかけてチップへと進化しました。起源こそ古いものの、現代においてプロセッサといえば、まず「Intel」の名前が思い浮かぶでしょう。

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

1968年の創業後、Intelは大手企業からの受注ベースでプロセッサを開発していました。その一つが、日本のビジコン(Busicom)社からの注文です。ビジコンは、すべての機能を1つの小さなチップに統合したカスタムマイクロプロセッサの製造をIntelに依頼しました。Intelは物理学者フェデリコ・ファジンの協力を得てこれを実現します。新しいIntel 4004がテスト環境で完全に機能することが確認されると、Intelはついにこれを市販製品として発売しました。これは個人向けコンピュータ向けチップ製造への参入の第一歩であるだけでなく、ユーザーのパーソナルコンピューティング体験を変え、最終的にはそれを支配するための一連の研究と実験の始まりでもありました。

x86アーキテクチャ:チップ製造・設計におけるIntelの覇権

Intel 4004の後継モデルは1981年まで登場し続けました。しかしその前に、Intelはチップ設計アーキテクチャにおいて新たな成功を収めます。当時は誰も、それがIntelだけでなく業界の競合他社にとっても、将来のチップ設計・製造技術の基盤になるとは予想していませんでした。

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

すべてのCPUは、特定のISA(Instruction Set Architecture:命令セットアーキテクチャ)に基づいて設計されています。ISAとは、CPUにその仕事を指示する基本的な仕様のことです。アセンブリ言語で記述されたこれらの命令は、CPUの演算処理を実行し、命令の理解、処理、そして最終的な実行を制御します。x86アーキテクチャも同様の命令セットで、1978年にIntelの8086プロセッサによって初めて実装されました。x86アーキテクチャは技術的にはCISCアーキテクチャ(Complex Instruction Set Computing:複雑命令セットコンピューティング)と呼ばれます。簡単に言えば、CISCは複数の操作命令を1つのデータスロットとして解釈できるプロセッサを実現することで、コンピュータ上で複雑なコマンドを実行可能にするものです。これにより、より多くのメモリを必要とするアプリケーションやソフトウェアをシステム上で動作させることができます。

x86アーキテクチャの成功:Motorolaを破り業界標準へ

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

「x86」という名前は、8086、80186、80286など、「86」の接尾辞を持つIntelの初期プロセッサ群に由来しています。当時の市場では、Apple Macintoshに採用されたMotorolaの68000シリーズプロセッサが競合していました。しかし、x86が新旧デバイス間で下位互換性を備えていたことで、Intelは市場での地位を維持しやすくなりました。さらに、Macintoshの失敗により、Motorolaは当時の業界リーダーであるIBMへプロセッサを大量供給できなくなり、IBMはIntelとの取引を決断します。ここでx86は業界標準となり、他社も自社のクローンチップアーキテクチャや命令セットをx86に準拠させることになったのです。

AMD:最初の競合相手

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

AMD(Advanced Micro Devices Inc.)は、Intelの創業とほぼ同時期に設立されました。AMDもIntelと同様、同じ会社であるフェアチャイルド半導体(Fairchild Semiconductors)の元従業員によって共同創業されています。AMDは当初フェアチャイルド自身の第二供給元としてスタートし、後にドイツの複合企業シーメンスとの合弁事業にも進出しました。しかしAMDが飛躍を遂げたのは、IntelがAMDにx86アーキテクチャのデータベースを提供したときでした。IBMがIntelと提携した際、契約条件として「Intelはx86ベースのプロセッサについてIBMに第二供給元を提供すること」が定められ、その座をAMDが獲得したのです。これにより、AMDとIntelの10年間のパートナーシップが始まりました。この期間、AMDはIntelに次ぐx86プロセッサの第二供給元としての地位を保ち、その後5年間でx86アーキテクチャをクローン化した独自のプロセッサを発表し、将来のチップ製造事業における競争の可能性を確立しました。

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

現在、AMDはチップ設計業界におけるIntel唯一の競合相手です。ただし、Intelは自社工場での製造プロセス(インハウス製造)を持ち、プロセッサに高品質な素材を確保できるという強みがあります。一方、AMDは依然として製造を外部委託しており、発熱の問題にも直面してきました。とはいえ、AMDの新しいRyzenチップアーキテクチャは成功を収めており、市場では一定レベルでIntelを上回る性能を見せています。それでも、PCおよびサーバー部門ではIntelが優位性を保っています。

ARMホールディングス:新たな発見

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

ARMホールディングスの前身はAcorn Computersで、ケンブリッジのエンジニアたちが省電力型のプロセッサチップを開発しました。このチップの特徴は、RISC(Reduced Instruction Set Computing:縮小命令セットコンピューティング)と呼ばれる、まったく異なるアーキテクチャに基づいて設計されていた点です。CISCとは異なり、このアーキテクチャはCPUのすべての計算を単一のデータパケットで処理できます。

ただし注意点があります。RISCベースのチップは各種CPUコマンドを個別に格納して処理できる一方で、大規模なコンピュータシステムのタスクや、多くのメモリを必要とするソフトウェアの実行には向いていません。命令データが比較的大量にメモリを消費するためです。仮に大容量メモリのサーバーやシステムを動作させられるようチップを設計しても、コスト効率が悪く、深刻な遅延や熱・損傷の問題に直面することになります。

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

しかし、大きな利点がありました。新しいRISCチップは少ない電力で動作し、周辺回路のわずかな電力すら活用できるほど省電力だったのです。これにより、RISCチップはポータブルデバイスにとって最高の成功のチャンスとなりました。そこでAcornとAppleの間で、AppleのNewtonデバイス向けの取引が成立しました。Newtonは失敗に終わりましたが、「ポータブルデバイスで動作するプロセッサが存在する」という評判は広まりました。ARMという名前は1998年のIPOで確立され、以来、ARMは半導体の研究開発に関わる20社以上の企業を買収してきました。同社は以降、研究に多額の投資を行い、SamsungやAppleといったブランドの現代のスマートフォンを動かす多様なプロセッサのアーキテクチャ供給源となっています。QualcommやCortexという名前を耳にしたことがあれば、その背景にはARMが関わっていると考えてよいでしょう。

では、なぜARMはあまり知られていないのか?

Intelが世界最大のチップメーカーになった経緯:チップ設計と製造技術の進化

ARMはイギリスで最も成功した企業の一つです。しかし、一般にその存在があまり知られていないのは、ARM自身の名前でチップを設計・製造したことが一度もないからです。ARMは研究に特化した組織であり、チップセットアーキテクチャの進化・アップグレード・改良を続けてきました。この研究とアーキテクチャの見返りとして、ARMは設計者や製造業者から知的財産の使用ライセンス料を徴収し、さらにスマートフォンに搭載されるチップセット1つごとにロイヤルティを受け取っています。省電力チップセットはスマートフォンで成功を収め、小型アプリケーションを動作させるハイエンドポータブルデバイスにも効果的であることが証明されています。

しかし、ARMは将来、重大な競争問題に直面しつつあります。多くの企業が自社でCPUやGPUの製造を始めているのです。Qualcommはその一例であり、他社も同様の動きを見せています。Samsungも効率的なチップ設計に取り組んでいますが、Qualcomm以外で目覚ましい成功を収めた企業はまだありません。一方、ARMはHuawei、LG、Apple、Samsungなどのスマートフォンメーカーにライセンスを供与し続けており、アーキテクチャ設計の提供を続けています。

QualcommとAppleの和解や最近のHuaweiへの禁輸措置といった動きの中で、スマートフォンメーカーは自給自足を目指しています。アーキテクチャライセンスのロイヤルティだけに依存するARMのビジネスモデルは、将来も繁栄できるのでしょうか。

ARMはIntelを追い抜けるのか?

Intelはチップ設計事業で浮沈を経験してきましたが、イギリスのライバルがIntelを打ち倒すことはほぼ不可能です。ARMはスマートフォン市場の大部分を握っていますが、Intelとそのx86アーキテクチャはデスクトップ、サーバー、その他の大規模通信機器の分野を押さえています。前述の通り、ARMのRISCアーキテクチャは効率的なCISCタイプのサーバーを再現できるほど成熟していません。RISCはあくまでポータブルデバイス向けのチップとして生まれたものであり、ARMは今のところノートPCやサーバー部門で目立った進展を見せていません。さらに、IntelはIBMとの長年の関係があり、ARMと比べて有利な立場にあります。加えて、Intelにはブランド力という強みもあります。マーケティング主導のビジネスにおいて、これは非常に大きな意味を持ちます。

Intelと他社とのパートナーシッププログラムも拡大しています。Intelの最新の基調講演では、HP、DELL、Acerといった企業との提携によるコンテンツクリエイター向け高性能ノートPCの製造や、AlienwareとのゲーミングノートPC向けパートナーシップが発表されました。さらにIntelは、新しいIce Lakeプロセッサの発表とともに、先進的なAthenaノートPCの投入計画も明らかにしました。一方、ARMはチップ設計部門における大規模な開発や多角化については何も発表していません。この事実を踏まえると、Intelの新型Core第10世代プロセッサは、特にデスクトップとサーバーを支える分野において、チップ業界に新たな衝撃を与えることになるでしょう。SoftBankによるARM買収を受けて、ARMのチップセット設計事業がどこへ向かうのかは不透明です。

ARMが終わったとか、Intelが100%成功すると断言することはできません。ARMは今なおスマートフォンベースのチップ設計のリーダーであり、Intelは持続可能な利益の確保に苦戦しています。つまり、両社とも売上と市場シェアの面で一長一短の状態にあるのです。しかし数字で語るならば、Intelの多国籍パートナーシップと新規事業への投資が、相対的に高い売上を支えています。Intelは市場を独占しているわけではないかもしれませんが、高品質なチップセット設計への注力は常に顧客をつかみ、長年培われたブランド力がそれを将来も守り続けるでしょう。対照的に、ARMが利益ある未来を維持するには、避けられない競争の中で、ライセンスロイヤルティへの依存からの転換が必要です。

  1. Android 9/10対応UI/UX設計ガイド:Material Designの基本と実践テクニック

    Googleは2019年9月に最新OS「Android 10」をリリースしました。現時点では一部の最新ハイエンド端末にのみ搭載されていますが、今後、各メーカーが比較的新しいモデルへ順次展開していくことが予想されています。Android 10では、システム全体に適用されるダークモードをはじめ、数々の便利な新機能が追加されました。一方で、UI自体の大きな刷新はほとんど行われませんでした。GoogleはMaterial Design(マテリアルデザイン)が極めて高い完成度を持つため、これを引き続き採用しています。そのため、本ガイドで紹介する内容は、OreoやPieなど以前のAndroidバージョンに

  2. iPhone・iPadの「拡大鏡(Magnifier)」機能を使いこなす方法【設定から活用術まで】

    iPhoneやiPadには、通話、メッセージ、メール、ゲーム、アプリなど、あらゆる用途に対応する多彩な機能が搭載されています。しかし、その中で意外と見落とされがちながら、実は非常に便利なのが「拡大鏡(Magnifier)」機能かもしれません。 この便利な内蔵ツールを使えば、小さな文字を読むときから針に糸を通すときまで、はっきりと見たいものを何でもズームして確認できます。さらに、表示の調整、フィルターの適用、拡大した画像の保存なども可能です。 老眼鏡を別の部屋に置き忘れたときや、虫眼鏡が見当たらないとき、iPhoneやiPadの拡大鏡機能を思い出してみてください。 拡大鏡へのアクセス方法