知っておくべきクラウドコンピューティングの10種類|IaaS・PaaS・SaaSから分散型クラウドまで
「クラウド」という言葉は今や誰もが耳にするものであり、クラウドコンピューティングとは、インターネット接続を通じてソフトウェアやサービスへアクセスする仕組みであると、多くの方がご存じでしょう。しかし実際には、クラウドコンピューティングには多様な種類が存在し、それぞれ目的やメリットが異なります。

クラウドコンピューティングの主な分類
クラウドコンピューティングの「種類」という表現には、実は2つの意味があります。1つは「何のために使うのか」という用途に着目する考え方で、本記事の大半はこの観点に基づいています。まず最初に、アーキテクチャ(構成)の観点からクラウドコンピューティングを整理しておきましょう。
この観点から見ると、クラウドコンピューティングは次の3つに分類されます。
1. IaaS(Infrastructure as a Service/サービスとしてのインフラ)

データセンターのリソースをオンデマンドで提供するモデルです。ソフトウェアはすべて自分でインストール・構築します。ハードウェアをレンタルするという点を除けば、自分専用のデータセンターを持つのに近いイメージです。
2. PaaS(Platform as a Service/サービスとしてのプラットフォーム)

クラウドアプリケーションを開発したいけれど、OSや開発環境の管理・保守までは行いたくない場合に適したモデルです。クラウドサービスやアプリを作るために必要なツール一式が提供されます。
3. SaaS(Software as a Service/サービスとしてのソフトウェア)

クラウド事業者でも開発者でもない一般ユーザーにとって、最も身近なのがSaaSです。後述するクラウドサービスのほとんどはSaaSに該当し、エンドユーザー向けに提供されています。
4. リモートコンピュータのレンタル
データセンター内のコンピュータへのアクセスが必要な場合、専有または共有の形で料金を支払って利用できます。タブレットからリモートデスクトップで自宅のPCを操作するのと基本的に同じですが、コンピュータ本体の購入費や保守の手間、24時間365日安定して使えるようにするための面倒な作業すべてが、ひとつの利用料に含まれている点が大きく異なります。

特定のハードウェアに時々アクセスしたい方や、こまめなアップグレードが必要なマシンを常時保有したくない方に人気の選択肢です。たとえば、クラウド上でMacをレンタルしたり、大量の数値計算用に高性能ワークステーションを一時的に借りて結果だけ受け取ったりすることも可能です。
5. クラウド上の仮想マシン
前項と関連する形態ですが、こちらは物理的なコンピュータを丸ごと借りるのではなく、同一の物理サーバー上で他の仮想マシンと共存しながら稼働する仮想マシンを利用します。

多くのユーザーにとってこの違いはさほど重要ではなく、より安価な選択肢を選ぶことになります。ただし、物理サーバーを専有してレンタルすれば、常に一定のパフォーマンスが保証されるというメリットがあります。
6. ネイティブクラウドアプリケーション
ネイティブクラウドアプリとは、クラウドインフラ上で動作することを前提に、最初からそのように設計・開発されたアプリケーションのことです。したがって、レンタルした仮想マシン上でMicrosoft Wordを起動しても、それはネイティブクラウドアプリとは呼べません。

一方、ブラウザ経由で利用するOffice 365のWordはネイティブクラウドアプリです。Gmailをはじめ、私たちが日常的に使っているクラウドベースのサービスの多くも同様です。
7. クラウドストレージ
クラウドストレージは非常にシンプルな概念です。パソコン内蔵のHDDや外付けドライブにファイルを保存する代わりに、遠隔地のコンピュータ上にクラウドサービス経由でデータを保管します。

しかし、多くのクラウドストレージサービスは「空に浮かぶ外付けドライブ」以上の存在です。データは国際標準に準拠して管理され、物理的に離れた複数の場所に冗長コピーが保存されます。さらに、ファイル内容の検索やクラウド上での直接編集といった付加機能も提供されています。
代表的なクラウドストレージには、Google Drive、Microsoft OneDrive、Dropbox、Apple iCloudなどがあります。
8. ソーシャルメディア

ソーシャルメディアは世界を席巻しました。この記事を読んでいる方も、Facebook、X(旧Twitter)、Instagramなど主要なSNSの少なくとも1つを利用している可能性が高いでしょう。もしそうなら、あなたはすでにクラウドサービスを使っています。ソーシャルメディアをクラウドアプリとは意識していないかもしれませんが、投稿データも、これらのサービスを支える計算処理の大部分も、すべてクラウド上に存在しています。
9. エンターテインメント系ストリーミングサービス
Spotifyで音楽を聴くのも、Netflixのオリジナル作品を観るのも、クラウドサービスの利用です。端末上のアプリもある程度処理を担いますが、重い処理の大部分は遠く離れたデータセンターで行われています。
これらのサービスは、コンテンツをオンデマンドで配信するだけでなく、インターネット回線の速度に応じて画質や音質を動的に調整します。また、ユーザーの利用履歴を細かく追跡し、個人データや他のユーザーのデータに基づいておすすめコンテンツを提案しています。

さらに、ゲームのストリーミング(クラウドゲーミング)も登場しています。ゲーム機の購入やゲーミングPCの自作は不要で、XcloudやGeForce Nowのようなサービスを利用すれば、タブレット、スマートTV、ブラウザとコントローラーがあれば遊べます。クラウドゲーミングはまだ歴史が浅く、課題も残りますが、高速なネット環境があれば十分試す価値があります。
10. 分散型クラウドサービス
従来のクラウドサービスは中央集権的なデータセンターに依存しており、そこにはプライバシーに関する懸念が伴います。たとえば、Google Docsで文書内検索ができるということは、原理的にはGoogleもその文書の中身を読めるということです。ユーザーを守っているのはプライバシー関連法や事業者自身のポリシーだけで、技術的な遮蔽は存在しません。
こうした背景から生まれたのが「分散型クラウドプロバイダー」という発想です。かつて存在したGraphite Docsはその代表例でした。Graphite Docsはユーザーから見ればGoogle Docsによく似ていましたが、中央のデータセンターを持たず、ブロックチェーン技術によってユーザーデータをホスト・暗号化していました。プライバシーの心配なく、クラウドならではの生産性向上のメリットを享受できる仕組みです。

残念ながらGraphite Docsは2020年にサービスを終了しましたが、ソースコードはオープンソースとして公開されているため、誰でも自分版を立ち上げることができます。
また、Stacks(旧Blockstack)のように、「dapps(分散型アプリ)」と呼ばれるブロックチェーン通貨と連携するアプリを開発できるプラットフォームも登場しています。
まとめ:未来はますますクラウドへ
個人用パソコンが不要になることはないでしょうが、今後はますますクラウドベースの世界へと進んでいくと考えられます。インターネットが地球規模で行き渡るにつれ、クラウドは最も重要なコンピュータ技術の座に就くことになるでしょう。
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