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IBMのスーパーコンピューター「Watson(ワトソン)」とは?仕組みと活用事例を解説

IBMのスーパーコンピューター「Watson(ワトソン)」は、人工知能(AI)と高度な分析ソフトウェアを組み合わせ、「質問応答マシン」として最適なパフォーマンスを発揮するよう設計されたシステムです。その名称は、IBMの創業者であるトーマス・J・ワトソンに由来しています。

Watsonの処理能力と構成要素

Watsonは毎秒80テラフロップス(1兆回の浮動小数点演算)という処理速度を誇ります。高い知能を持つ人間の質問応答能力を再現、あるいは凌駕するために、合計2億ページ以上の情報を格納した90台のサーバーにアクセスし、600万件の論理ルールに基づいて情報を処理します。システムとデータはすべて、冷蔵庫10台分ほどのスペースに収まる自己完結型の構成となっています。

Watsonの主要な構成要素は以下の通りです。

  • Apache UIMA(Unstructured Information Management Architecture):非構造化データの分析に必要なフレームワーク、インフラストラクチャなどの要素
  • Apache Hadoop:分散コンピューティング環境で大規模データセットの処理を支援する無料のJavaベースプログラミングフレームワーク
  • SUSE Enterprise Linux Server 11:当時最速だったPower7プロセッサ向けのオペレーティングシステム
  • 2,880基のプロセッサコア
  • 15テラバイト(TB)のRAM
  • 500ギガバイト(GB)の前処理済み情報
  • IBM DeepQAソフトウェア:自然言語処理(NLP)と機械学習を取り入れた情報検索向けに設計されたソフトウェア

IBMのWatsonスーパーコンピューターの仕組み

幅広い可能性を秘めた認知コンピューティング

Watsonの中核となる認知コンピューティング技術の応用範囲は、ほぼ無限と言えます。膨大な非構造化データに対してテキストマイニングや複雑な分析を実行できるため、従来のシステムをはるかに上回る性能を持つ検索エンジンやエキスパートシステムを支えることが可能です。

2016年5月には、オハイオ州に拠点を置く法律事務所BakerHostetlerが、Watsonをベースとした法務エキスパートシステムの導入契約を締結し、50人規模の破産チームと連携させました。「Ross」と呼ばれるこのシステムは、約10億件のテキスト文書からデータを抽出・分析し、複雑な質問に対して3秒以内に正確な回答を提供できます。さらに自然言語処理により、専門的な法律用語を解釈して弁護士の質問に応答することも可能です。

Rossの開発者がさらなる法務モジュールの追加を進める一方で、同様のエキスパートシステムは医療研究の分野でも変革をもたらしつつあります。

医療分野におけるWatsonの活用

医療は、Watson技術が最初に適用された業界の一つです。2013年には、米国のメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターがWatsonの商用実装第一号として導入し、肺がん患者への治療選択肢の推奨に活用することで、適切な治療の確保とコスト削減の両立を目指しました。その後も、クリーブランド・クリニック、Maine Center for Cancer Medicine、Westmed Medical Groupといった医療機関がWatsonツールを採用しています。

しかしながら、すべての導入が順調に進んだわけではありません。ヒューストンのMDアンダーソンがんセンターは2013年、Watson技術を活用した意思決定支援システムを構築し、医師が最適な治療選択肢を判断できるようにするプロジェクトを開始しました。ところが、4年間で6,200万ドル以上を投じたものの目標を達成できなかったとして、病院経営陣はプロジェクトを中止する判断を下しました。

それでも医療は、IBMがWatson技術の価値を証明しようとする中で最重要の焦点であり続けており、同社は医療機関との提携を積極的に推進しています。例えば2018年5月には、インド最大級の専門医療グループであるApollo Hospitalsが、Watson for OncologyおよびWatson for Genomicsの採用に合意しました。これら2つのIBM認知コンピューティングプラットフォームは、個別化がん医療における医師の意思決定を支援します。

患者ケアをめぐる重大な課題の解決にWatsonを活用し、データドリブンなインサイトに基づいて治療選択肢を提案することで、Watson技術の真の価値が証明されることが期待されています。

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