macOSでベクターグラフィックスを編集する方法|基本知識からおすすめアプリまで
ベクターグラフィックスは一見すると普通の画像と変わりありません。しかし、そのわずかな違いが、多くの人を混乱させる原因になっています。この記事では、macOSでベクターグラフィックスを扱う最適な方法と、初めてグラフィック編集に挑戦する人がつまずきやすい問題の解決策を詳しく解説します。
ベクターグラフィックスとは?
ベクターグラフィックスはグラフィックコンテンツを表示しますが、実は「画像」ではありません。その正体は「数学」です。

ベクターグラフィックスは、複数の数式や計算の組み合わせによって表現されています。これらの数式は、どれほど複雑な図形でも形状と色の境界線を完璧に記述できます。一方、JPGやPNGといったビットマップ(ラスター)形式の画像は、グリッド上の色の点(ピクセル)の集合で画像を表現するため、サイズが固定されます。
ラスター画像は、精度の低い補間処理を経なければ拡大できません。しかし、数学的な基盤を持つベクターグラフィックスは、画質を一切損なうことなく無限に拡大・縮小が可能です。この無限の柔軟性とロスレス特性により、ベクター形式はプロのグラフィックデザイナーにとって事実上の標準フォーマットとなっています。
macOSでベクター画像ファイルを開く
ベクター画像を表示するには、ソフトウェアが画像の内容を記述した数式を正確に解釈する必要があります。JPGのようなラスター画像を読み込む方が、ベクター画像ファイルを解析するよりもはるかに簡単です。そのため、ベクター画像に対応したアプリは、ラスター画像対応アプリよりも少ないのが現状です。
幸いなことに、macOS標準の「プレビュー」アプリは、多くのベクター画像形式を開くことができます。ただし、あくまで閲覧のみ可能で、編集はできず、その上に描画を重ねることしかできません。

Photoshopもベクターグラフィックスを問題なく開けます。しかし、Photoshopはベクターデータ自体を編集することはできません。そのため、ファイルをラスター画像に変換(ラスタライズ)する必要があり、元のデータの忠実度は永久に失われてしまいます。
これこそが、PhotoshopがEPSファイルを開く際に画像サイズを尋ねてくる理由です。指定されたサイズのラスター画像に収まるよう、ベクターファイルを「ダウンサンプリング」する必要があるのです。一度ダウンサンプリングされた画像は、元の品質に戻すことができません。
SVGは少し特殊な存在です。画像形式でありながら、ファイルの中身はXMLで記述されているため、デフォルト設定ではWebブラウザで開かれることがよくあります。SVGはHTMLとの共通点が多いため、ブラウザがデフォルトのビューアとして妥当な選択と言えます。もちろん、本格的なベクター編集アプリであれば、SVGを問題なく開いて編集できます。
Adobe Illustrator以外でmacOSのベクターを編集する方法
macOSで使えるプロフェッショナル仕様のベクター編集ソフトは複数あります。Adobe Illustratorは業界標準と広く認識されていますが、唯一の選択肢ではありません。無料で高品質なベクター編集ツールも数多く存在します。

Inkscape
Inkscapeは、写真編集ソフトGIMPのベクター版とも言える存在です。無料かつオープンソースで、ほぼすべてのプラットフォームに対応しています。ベクターグラフィックスの初心者が本格的なツールを探すなら、まずここから始めるのがおすすめです。
Affinity Designer
Affinity Designerは、買い切り制で利用できるAdobe風のデザインソフトです。プロ仕様の豊富なツールを備えており、趣味のクリエイターからプロフェッショナルまで幅広いニーズに対応できます。
Sketch
Sketchは、UI(ユーザーインターフェース)やアプリのデザイナーに人気の高いツールです。デザイン作業を効率化する機能が多数搭載されており、UIデザイン以外の用途にも活用できます。
BoxySVG
BoxySVGは、シンプルなSVG画像の編集に最適です。主なターゲットは、複雑すぎず使いやすいインターフェースのデザインツールを求めるWebデザイナーですが、単純なベクターファイルの閲覧や編集だけであれば、その洗練された操作性は大きな魅力になります。機能が絞られているため迷うことが少なく、週末だけデザインを楽しむライトユーザーには特にありがたいポイントです。なお、アプリ版の方がWebブラウザ版よりも多くの機能を備えており、アプリ版でしか開けないファイル形式も存在する点には注意しましょう。
macOSでのベクター編集ワークフロー
macOSで最も効率的なベクター編集ワークフローは、制作過程のできる限り長い間、画像をベクターファイルとして保持することです。書き出し先の公開形式がラスター画像を要求する場合にのみ、ラスター形式へ変換しましょう。ほとんどのプロの印刷業者はベクターデータを好むため、ラスターへの変換は必ずしも必要とは限りません。
- ファイルを確認する:Finderやプレビューでファイルの中身を確認します。Quick Lookも便利ですが、EPSファイルは正しく表示されないことがあります。
- ベクター編集ソフトで開く:Photoshopで開くと強制的にラスタライズされてしまうため、必ずベクター編集ソフトを使用してください。
- 編集を行う:必要な修正や調整を加えます。
- ベクター形式で保存する:
- .ai:可能であればAdobe形式で保存しましょう。独自形式ではありますが、互換性・サポートは最も充実しています。今後もIllustratorで作業を続けるなら、間違いなく最良の選択です。
- .pdf:オープンな形式が必要な場合はPDFを選びましょう。ただし、ファイルサイズは大きくなりがちです。
- .svg:Web公開用のシンプルなグラフィックス(チャート、ロゴなど)に最適です。ベクター編集の中間形式としても使えます。シンプルでブロック状のデザインや、グラフィカルなデザインとの相性が特に良いでしょう。
- 必要に応じてラスター画像として書き出す:ほとんどのイラストレーションにはPNGが最適な形式です。JPGのような非可逆圧縮形式でベクターアートを保存するのは、どうしても必要な場合だけにしてください。
まとめ
サブスクリプション料金を支払えるのであれば、Adobe IllustratorはmacOSで最も高性能なベクターエディターです。予算を抑えたい場合は、BoxySVGとInkscapeのどちらも、macOS用ベクターエディターとして非常に優れた選択肢となるでしょう。
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