ドライブレコーダーは「わざと事故を起こす」保険金詐欺を防げるのか?効果と注意点を解説
前の車が突然、何の予告もなく急ブレーキ……そして避ける間もなく追突してしまう。「自分には落ち度がないのに」という被害は、決してあなた一人のものではありません。イギリスだけでも約7万件の人身傷害請求が、この手口「クラッシュ・フォー・キャッシュ(Crash for Cash)」と関連している可能性があるといわれ、もはや社会現象と呼べる規模です。アメリカやイギリスでは、すでに命を落とした犠牲者も出ています。
しかし世界中のドライバーたちは、ダッシュボードに取り付けた小さなカメラ――ドライブレコーダーを使って反撃を始めています。
クラッシュ・フォー・キャッシュとの闘い
クラッシュ・フォー・キャッシュとは、故意に仕組まれた「事故」のこと。いつどこで、誰の身に起こってもおかしくありません。特に狙われやすいのは、トラブルを大ごとにしなそうな運転者や、大型トラックのドライバーです。被害に遭ってしまうと、詐欺師たちは次のような誇張された請求を行うのが典型的です。
- 怪我(人身傷害)の補償
- 車両のレッカー移動費用
- 代車(レンタカー)費用
- 車両の損傷修理費

英国保険詐欺局(Insurance Fraud Bureau)は1時間に15件もの不正請求を摘発していますが、それでも多くのドライバーはドライブレコーダー――フロントガラス越しの風景を記録し続ける小型カメラに頼るようになっています。この市場は世界的に拡大しており、アメリカやオーストラリア、アジアでも人気が高まる一方。ロシアではもはや日常的な存在で、チェリャビンスクに落下した隕石の映像の多くも、実はドライブレコーダーが捉えたものでした。
警察や保険会社との連絡窓口となりドライバーを支援する団体「Police Witness」は、「警察は(クラッシュ・フォー・キャッシュ被害者の)訴えにきちんと耳を傾け、対応していない」と指摘します。ドライブレコーダーの映像のおかげで、裁判に持ち込まれるケースも増えています。もともとドライブレコーダーはパトカー向けに使われていたものですが、その考え方は瞬く間に広まりました。映像は保険会社への証拠として送れるほか、怒ったドライバーたちがYouTubeに動画を投稿する例もあります。
ドライブレコーダーはどう役立つのか?
ドライブレコーダーは、クラッシュ・フォー・キャッシュの手口を記録し、警察や保険会社に対して自分の主張を立証するのに最適なツールです。自転車利用者の危険な運転の記録にも活用されており、道路上で危険な行為があれば、その証拠として機能します。
中には、実在しない同乗者の存在まで主張して賠償金を請求しようとする詐欺師もいます。そんなときこそ、ドライブレコーダーの映像が真実を物語ってくれるでしょう。
多くの機種にはGPSが搭載されており、事故が発生した正確な場所を証明できます。交換保証付きの製品も多く、SDカードで録画容量を簡単に増やせるのも魅力です。
警察もこの技術を支持しています(支持しなければ偽善になってしまうでしょう)。さらにチューリッヒ、RAC Insurance、AAなど複数の英国保険会社も賛同しています。AAを代表するイアン・クロウダー氏は、「ドライブレコーダーはいずれ保険加入の必須条件になるのか、それとも製造段階で車に組み込まれるようになるのか」と問いかけることで、その重要性を示しました。出典:The Independent

英国の自動車保険会社Adrian Fluxに至っては、特定メーカーのドライブレコーダーを搭載しているドライバーに対し、最大15%の保険料割引を提供しています。
また、車両保険詐欺はクラッシュ・フォー・キャッシュだけではありません。「フラッシュ・フォー・クラッシュ(Flash for Crash)」という手口もあります。交差点で一見道を譲るふりをしてヘッドライトを点滅させ、「先に行ってください」と合図した直後に突っ込んでくるというものです。適切な位置に設置されたドライブレコーダーの映像は、こうした悪質な欺瞞の証拠になります。
ただし、法律面でこちらに有利になるかどうかは……話がもう少し複雑になります。
すべてにデメリットはつきもの…
もちろん、ドライブレコーダーがあっても「事故」そのものを防ぐことはできません。ただ、時間が経てば詐欺師への抑止力にはなり得ます。しかし逆に、ドライブレコーダーを付けていない車だけが標的にされる恐れもあります。だからこそ最近の製品は目立たないデザインになっているのです。スマートフォン用のドライブレコーダーアプリという選択肢もあります。

価格も気になるところです。ハイビジョン対応モデルなら3〜4万円前後(国や機種によって当然変わります)することもありますが、安価な製品が無意味というわけではありません。むしろ多くの製品は、主張を裏付けるには十分な画質を備えています。先述のアプリも概ね5ドル(数百円)以下で入手可能です。Witness Driving(現在は配信終了)は評価が高く、わずか0.99ドルでした。ただし、電話やSMSを受信するとカメラがフリーズするバグが報告されており、他のiOSアプリと共通する弱点も抱えています。Android向けの無料アプリも多数あり、AutoGuard BlackboxやDailyRoads Voyagerなどがありますが、ユーザー評価はかなり割れています。
もうひとつの問題はプライバシーです。ドライブレコーダーはオーストリアでは禁止されており、スウェーデンでは監視機器を無人の状態で作動させ続けることが違法とされています。今のところ大きな問題にはなっていませんが、それは技術がまだ発展途上だからこそ。もしすべての車にドライブレコーダーが搭載されれば、事実上あなたの行動のすべてが記録され得ます。新聞社にとっては格好のネタになるでしょう。
とはいえ、映像は通常ループ録画方式で、新しい映像が古いものに上書きされていきます。つまり記録はされていても、長くは残らないということです。

また、ドライブレコーダーは本体が非常に熱くなり、熱によって動作が停止するという報告もあります。これは特に夏場の気温が40℃を超えることもあるオーストラリアで深刻で、車内温度は66℃に達することもあるそうです。アプリの場合もスマートフォンの過熱を招きますし、バッテリー消耗の問題は言うまでもありません。スマホはカーアダプターで常時充電が必要になります。
そしてもうひとつの懸念は、ドライブレコーダーがそれ以外の何を暴くかもしれないという点です。誰も完璧なドライバーではありません。もし保険会社があなたの運転を基準以下と判断すれば、保険料が上がるかもしれません。多くの人が車載ブラックボックス(テレマティクス端末)の取り付けを拒む理由のひとつがこれです。
要するにこういうことです。思わぬ形で裏目に出る可能性もあるのです。
まとめ
旅の記録として、詐欺への対抗手段として、危険な運転の証拠として――理論上は、ドライブレコーダーは確かに機能します。
誰も考えたくないことですが、ドライブレコーダーは万一の事態に備えて存在するものです。しかし何事にも良い面と悪い面があるように、ドライブレコーダーがあっても信じてもらえない可能性はあります。法律が味方になるかどうかは実際の事故状況次第ですし、そもそも車に自分の行動をすべて記録されることを望みますか?
結局のところ、私たちは警察や保険会社といった第三者に頼らざるを得ません。それは昔も今も変わりません。しかし、ダッシュボードに取り付けられたあの小さなカメラがあれば、少なくとももうひとつの味方がいることになるのです。
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