Ryzen DRAM Calculatorを使ったRAMオーバークロック徹底解説ガイド
更新日:2020年11月11日
PCパフォーマンス愛好家にとって、最初に注目するのはCPUプロセッサとその処理能力です。ゲーミングPCやグラフィックス重視の構成では、次にオーバークロックの対象となるのがGPU(グラフィックスカード)でしょう。CPUやGPUのオーバークロックは演算処理やグラフィックス処理の速度を大幅に引き上げますが、メモリモジュールが最大性能で動作していなければ、システム全体のパフォーマンスは頭打ちになってしまいます。つまり、CPUやGPUをオーバークロックした後でも、RAMのクロックをどこまで引き上げられたかによって、さらなる改善余地が残されているのです。PCのポテンシャルを最大化するためには、メモリのオーバークロックに時間をかける価値が十分にあると言えます。

オーバークロックの基本的な4ステップ
プロセッサやメモリモジュールのオーバークロックにおいて、伝統的に踏むべき4つのステップは以下の通りです。
- 基準値(デフォルト値)の確認
- クロックおよび周波数パラメータの小幅な調整
- ストレステストの実施
- 最適なレベルに達するまで繰り返し
CPU-Zなどのサードパーティ製ソフトを使えば、現在の動作パラメータを把握しながら試行錯誤できますが、AMD Ryzenユーザーには朗報があります。1usmus氏が開発した「DRAM Calculator」を使えば、標準動作値と最適なオーバークロック値を簡単に算出できるのです。従来の手順に沿って言えば、DRAM Calculatorで基準値と理想的なオーバークロック値を確認し、BIOSで必要な調整を行い、再起動して更新後のパフォーマンスをチェックする流れになります。
RAMオーバークロックの基礎知識
作業を始める前に、調整対象となるパラメータと基準値について、基本的な理解をしておきましょう。
第一に、RAMのオーバークロックはCPUやGPUよりもやや複雑ですが、同時にはるかに安全であることを覚えておいてください。RAMはCPUやGPUに比べて発熱が非常に少なく、温度上昇や過熱をそれほど心配する必要がありません。
第二に、DDR4などのメモリにおける約2400MHzという定格速度は、実際の動作速度ではないという点です。この数値はダブルデータレート(DDR)を示すものであり、実効速度はその半分になります。
第三に、複雑さの話に戻ると、RAMのレイテンシ(メモリ性能に直結する要素)を改善するには、24以上の異なるパラメータを調整する必要があります。CASレイテンシのクロックサイクル設定がその中心となります。
第四に、細かな手動チューニングに踏み込みたくない方のために、IntelのXMPのような「Extreme Memory Profile」が多くのメーカーから提供されています。これをBIOSから適用すれば、メーカーが安全性を保証する範囲での中程度のオーバークロックが可能です。ただし、自分で手動調整に挑めば、XMP設定を超えるカスタマイズ性と自由度を手に入れられます。
DRAM Calculatorで理想のパラメータを算出する
AMD Ryzenユーザーにとって幸いなことに、1usmus氏が開発したDRAM Calculatorを使えば、オーバークロックに最適な数値を正確に知ることができます。アプリの操作にはある程度の慣れが必要ですが、以下の手順でわかりやすく解説します。

- Ryzen DRAM Calculatorをダウンロードし、管理者権限で画面の指示に従ってインストールします。完了したらアプリを起動しましょう。
- 起動画面には、使用中のRyzenメモリの詳細情報が表示されます。メーカーの仕様書などでタイプを確認することも可能です。ここで現在の動作値が見えるようになります。
- ウィンドウ下部にある紫色の「R-XMP」ボタンをクリックします。
- Ryzenメモリのタイプとバージョンを入力し、ウィンドウ下部の緑色の「Calculate SAFE」ボタンをクリックします。これにより、安全に調整できる値が算出されます。SAFEの数値はオーバークロック後も安定して動作しますが、あくまで最大限の数値ではありません。
- さらに数値を追求したい場合は、下部のオレンジ色の「Calculate FAST」ボタンを押してください。RAMをより高くクロックできますが、常に安定するとは限りません。どの値が自分のシステムに合うかを見極めるために、ストレステストが重要になります。
- さらに赤色の「Calculate EXTREME」ボタンもありますが、FASTの数値以上に安定性が保証されない点には注意が必要です。
- 目的の設定値(R-XMP、SAFE、FASTの各数値)が得られたら、スクリーンショットを撮っておきましょう。別デバイスに送信しておけば、BIOS操作中に参照できて便利です。
数値を計算すると、DRAM CalculatorはXMPプロファイルや標準基準値との比較も表示してくれるので、オーバークロックの幅や安全に押し進められる範囲を感覚的に把握できます。
BIOSで設定を反映させる
次に、DRAM Calculatorで書き留めた数値を実際に適用します。PCを起動し、BIOS画面に入りましょう。多くの機種では、再起動時にF2キーまたはDelキーを連打することでBIOSに入れます。

BIOSに入ったら、以下の手順に従います。
- メモリ設定の項目を探し、XMPプロファイルの値を適用します。
- 「DRAM Timing Control After Training」というセクションを探して開き、DRAM Calculatorで取得した数値を入力していきます。
- マザーボードによっては、一部のパラメータ名が異なる場合があります。計算結果の数値と照らし合わせながら、すべて入力してください。主な調整対象は、CASレイテンシ、読み書き遅延、RASプリチャージタイミング、RASアクティブタイミングなどです。
- メモリクロックと周波数関連のパラメータを入力したら、メモリモジュールの電圧設定セクションを探します。DRAM Calculatorの出力で推奨された電圧を入力してください。なお、1.45Vを超える電圧は危険を伴う可能性があるため、それ以下に抑えておけば安全です。
- 設定を保存してPCを再起動します。もし起動しなかった場合でも慌てないでください。30秒ほど待ってからセーフモードで起動し、直前の安定していた設定に戻して再度再起動しましょう。これは数値が不適切だった場合にPOST(電源投入時セルフテスト)に失敗することがあるためです。セーフモードでも起動しない場合は、マザーボードのボタン電池を一度取り外してCMOSをクリアすれば復旧できます。
上記の手順を、システムの安定性を確認し、ブルースクリーンや致命的なエラーが発生しなくなるまで繰り返すことで、さらに高い数値へと挑戦できます。
安定性の検証

PCを再起動したら、DRAM Calculatorに戻り、上部の「MEMbench」タブを開きます。ここでRAMにエラーがないかをテストできます。モードを「Custom」に設定し、タスクスコープ(task scope)に「300」を入力してください(念のため3回繰り返しチェックする意味です)。続いて「MAX RAM」を選択し、「Run」をクリックするとテストが開始されます。メモリ容量が大きいほど、3回分のテストにかかる時間は長くなります。
システムがエラーなくテストを通過できれば、BIOSに戻ってDRAM Calculatorで算出したFASTの数値を適用してみましょう。同じ要領で安定性テストを繰り返し、必要であればさらに先を目指すことも可能です。パラメータへの理解があれば手動での微調整もできますが、推奨はされません。DRAM Calculatorが提示する数値は、Ryzenメモリのオーバークロックにおいて十分に優秀だからです。
まとめ
Ryzen DRAM Calculatorを使えば、本来なら膨大な試行錯誤とパラメータに関する深い知識を必要とする作業が、格段に容易になります。本アプリは標準値に対するXMP、SAFE、FAST、EXTREMEの各プロファイル用数値を一括で提示してくれるため、あとはBIOSで入力するだけです。SAFEの数値は確実に動作しますが、多少の不安定さを許容できるなら(万が一問題が起きても簡単に元に戻せるので心配無用)、FASTやEXTREMEの数値にも挑戦できます。
さらに、このアプリには内蔵メモリチェッカーが搭載されており、不安定化の原因となるエラーをモジュール全体にわたってスキャンできます。メモリパラメータの複雑な詳細を学ぶことなく、AMD Ryzenユーザーがメモリをオーバークロックできるオールインワンツールとして、非常におすすめです。Ryzen構成に最適なRAMをお探しの方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
-
Windows 10でCPUをオーバークロックする方法【手順・冷却対策・注意点を徹底解説】
追加費用を一切かけずにPCのパフォーマンスをアップグレードできたら素晴らしいと思いませんか?少し突飛な話に聞こえるかもしれませんが、実は「オーバークロック」を使えばそれが可能です。CPUのオーバークロックは、PCの動作速度を高め、全体的なパフォーマンスを向上させるための有効な手段です。 多くの方にとって、高額なパーツ交換やマシンの買い替えは現実的ではありませんよね。だからこそ、オーバークロックは手軽に試せる魅力的な選択肢となります。既存のCPUの潜在能力を最大限に引き出す、コストのかからない方法なのです。 この記事では、オーバークロックの基本知識から、Windowsでの具体的な手順、そして知っ
-
ノートパソコンにRAMを自分で増設・交換する方法【初心者向けDIY解説】
前回の記事でRAMについて詳しく学んだ方の中には、そろそろメモリのアップグレードを検討し始めた方もいるかもしれません。RAMを更新する理由はさまざまですが、その一つが「動作が遅くなったPC」への不満です。 そう、古いPCは特にWindows 10などの比較的新しいOSと組み合わせると、動きが重くなりがちです。さらに、近年のソフトウェアはシステムリソースへの要求がどんどん高まっています。 だからこそ、システムとの互換性さえあれば、RAMのアップグレードやメモリ追加は効果的なのです。しかし、業者に依頼せず自分で作業するにはどうすればいいのでしょうか? RAMモジュールの購入にお金を使い果たしてしま