OpenMediaVaultでRaspberry Piを高機能NASに変える方法【OMV5導入ガイド】
パソコンを長年使っていると、使わなくなった内蔵HDDや外付けUSBハードディスクがいくつか溜まってくるものです。そんな余ったストレージを「NAS(ネットワーク接続ストレージ)」として再活用するのに、安価かつ省電力で最適なのがRaspberry Piです。特にRaspberry Pi 4はUSB 3.0ポートとギガビットEthernetポートを搭載しており、高速かつ多機能なネットワークストレージの土台として理想的な存在といえます。
既存のRaspberry PiをシンプルなNASにする方法はすでに紹介してきましたが、本記事ではさらに一歩進んで、NAS専用としてゼロから設計されたLinuxディストリビューション「OpenMediaVault 5(OMV5)」を活用し、Raspberry Pi 4の真価を引き出す方法を解説します。OMV5なら基本的なSamba共有の機能にとどまらず、はるかに強力な機能を自由に使いこなせます。
用意するもの
作業を始める前に、以下のものを揃えておきましょう。
1. Raspberry Pi: パフォーマンスを重視するならRaspberry Pi 4がベストですが、OMV5はModel 2B以降のモデルでも動作します。
2. ストレージ: OMV5のインストールには8GBのmicroSDカードが最適です。大容量カードも使えますが、NAS専用ディストリビューションが領域をすべて使用するため無駄になってしまいます。SamsungやSanDiskのClass 10(A1対応)microSDカードを選んでおけば間違いありません。NASドライブには外付けUSBハードディスクを使うか、内蔵HDDをUSBハードディスクケースに入れて流用しましょう。
3. OSイメージ作成ツール: 最新版のRaspberry Pi OS(Lite版)、公式のSDカード書き込みツール「Raspberry Pi Imager」、そしてmicroSDカードにOSイメージを書き込めるPCが必要です。
4. SSHクライアント: インストール作業ではSSH経由でRaspberry Piに接続する必要があります。
5. 有線ネットワーク環境: NASはイーケーブルでホームネットワークに接続するのが理想です。Wi-Fiは安定性も速度も不十分です。OMV5はヘッドレスサーバー(モニターなし運用)として設計されているので、Raspberry Piをルーターの横に置いておけばOK。ディスプレイやキーボードを接続する必要はありません。
Raspberry Pi OS Liteのインストール
まずはRaspberry Pi OSをインストールします。互換性を最大限に確保するため、必ずデスクトップ環境なしのLite版をダウンロードしてください。
当サイトのガイドに沿って、microSDカードにRaspberry Pi OS Liteを書き込みます。
書き込みが完了したら、microSDカードをカードリーダーから一度取り出し、再度挿入します。WindowsのエクスプローラーでmicroSDカードを開き、ファイル表示部分の何もないところを右クリックして「新規作成 → テキスト ドキュメント」を選択します。
「新規テキスト ドキュメント.txt」というファイルが作成されます。拡張子が表示されていない場合は、エクスプローラーのオプションメニューから拡張子を表示する設定に変更しておきましょう。次に、このテキストドキュメントを右クリックして「名前の変更」を選びます。
ファイル名を「ssh」に変更します。この空のファイルがあることで、インストール作業時にRaspberry PiへSSHでリモートアクセスできるようになります。「拡張子を変更すると〜」という警告が出たら「はい」を選択して無視して構いません。
microSDカードをPCから取り出し、Raspberry Piに挿入します。イーケーブルでネットワークに接続し、電源を入れましょう。
IPアドレスの確認
Raspberry Piが起動したら、SSH接続のためにIPアドレスを調べます。方法はいくつかあります。まずはルーターの管理画面にログインし、クライアントリスト(接続デバイス一覧)を確認する方法です。クライアントリストの場所はルーターによって異なりますが、一般的には見つけやすい位置にあります。
デバイスは「raspberrypi」という名前で表示されるはずです。上のスクリーンショットのように、割り当てられたIPアドレスを控えておきましょう。また、ルーターの「DHCPサーバー」設定にある「アドレス予約」機能を使えば、NASに固定IPアドレスを恒久的に割り当てることもできます。
ルーターの管理画面をいじりたくない場合は、「Angry IP Scanner」を使ってネットワーク上のデバイス(Raspberry Pi含む)のIPアドレスを探すのも手軽でおすすめです。
それでもIPアドレスが見つからない場合は、Raspberry Piにモニターとキーボードをつないでログインし、コマンドラインでip addと入力してください。Ethernetインターフェースの隣に表示されるIPアドレスを控えればOKです。
Raspberry PiへのSSH接続
1. Windowsなら「PuTTY」を起動し、Linuxマシンならターミナルを開いて、Raspberry PiへSSH接続します。
2. セキュリティ警告が表示されたら「はい」をクリックします。初回ログイン時には必ず表示されるものなので安心してください。
3. デフォルトのユーザー名「pi」、パスワード「raspberry」でログインします。
4. ログインに成功したら、コマンドラインでpasswdと入力してデフォルトパスワードを変更しましょう。必ず強固なパスワードを設定してください。
5. OMV5をインストールする前に、まずOSを最新の状態にアップデートしておきます:
sudo apt update && sudo apt -y upgrade sudo rm -f /etc/systemd/network/99-default.link
6. Raspberry Piを再起動します:
sudo reboot
OpenMediaVault 5のインストール
再起動が完了したら、再度SSHでRaspberry Piに接続し、以下のコマンドでOMV5をインストールします:
wget -O - https://github.com/OpenMediaVault-Plugin-Developers/installScript/raw/master/install | sudo bash
インストールには約30分かかるので、途中で中断しないようそのまま待機しましょう。インストールが成功すると、Raspberry Piは自動的に再起動します。
OMV5の初回ログインと基本設定
1. PCのブラウザーでURLバーにRaspberry PiのIPアドレスを入力すると、OMV5のWeb管理画面が開きます。初期ユーザー名は「admin」、初期パスワードは「openmediavault」です。
2. 設定メニューの「一般設定(General Settings)」を開き、「Web管理(Web Administration)」タブに移動します。「自動ログアウト(Auto Logout)」の設定を5分から1日に変更しておくと、タイムアウトで設定作業が中断されるのを防げます。
「保存」ボタンを押すと画面上部に確認バーが表示されるので「はい」をクリック。さらに画面中央にも確認ダイアログが表示されるので、こちらでも「はい」を選択して設定を確定します。
3. 隣の「Web管理者パスワード(Web Administrator Password)」タブに移動し、デフォルトパスワードをより安全なものに変更します。パスワードを入力したら「保存」をクリックしましょう。
4. 「日付と時刻(Date & Time)」サブメニューを開き、ドロップダウンメニューから適切な「タイムゾーン」を選択します。「NTPサーバーを使用する(Use NTP server)」トグルをオンにすれば、Network Time Protocolによって正確で安定した時刻同期が行われます。
「保存」を押した後、2つの確認ダイアログでそれぞれ「はい」を選択します。設定変更後の保存ごとにこの操作が必要になるので、確認ダイアログがすぐに表示されなくても焦らず待ちましょう。
5. 基本設定が済んだら「更新管理(Update Management)」サブメニューへ移動します。「更新(Updates)」タブで「チェック(Check)」ボタンを押してアップデートを検索します。
6. 保留中のアップデートすべてにチェックを入れ、「インストール(Install)」ボタンを押して更新を開始します。数分かかるので、ここでコーヒーを淹れるのもいいでしょう。更新完了後に表示される進捗ポップアップで「閉じる(Close)」を選択すると、ページが再読み込みされます。
OMV5用ストレージの準備
1. 「ストレージ(Storage)」メニューから「ディスク(Disks)」サブメニューを開きます。下のスクリーンショットで黄色くハイライトされているのがOMV5が入っているmicroSDカードです。その下に表示されているのが、ストレージとして使用する1TBの外付けハードディスクです。
注意: 外付けハードディスクにすでにデータが入っていて、消去したくない場合は「ステップ3」までスキップしてください。
ドライブのデータを完全に消去したい場合は、対象のドライブを選択して「消去(Wipe)」ボタンを押します。これは新品の空ドライブや、まっさらな状態から始めたい場合に実行します。確認ダイアログが表示され、その後「クイック(Quick)」か「セキュア(Secure)」の消去方式を選択できます。
続いて「ファイルシステム(File Systems)」サブメニューに移動します。
2. 前のステップでドライブを消去した場合、ファイルシステムがないためこの一覧には表示されません。そこで「作成(Create)」ボタンを押し、任意のファイルシステムでドライブをフォーマットします。
ポップアップウィンドウで、Deviceドロップダウンメニューから対象のハードディスクを選択します。Label欄にドライブ名を入力し、最後にファイルシステムとして「EXT4」を選択しましょう。Linuxネイティブの環境ではEXT4が最高のパフォーマンスを発揮します。「OK」を押して、表示される確認ダイアログを受け入れます。
注意: EXT4でフォーマットしたドライブは、NAS経由であればWindowsマシンからアクセスできますが、ドライブを直接MacやWindows PCに接続しても認識されません。あらかじめWindowsマシンでNTFS形式にフォーマットしておけば、NASで使えるだけでなく、NASから取り外して別のWindowsマシンで物理的に読み書きする柔軟性も得られます。
3. 外付けハードディスクを選択し、「マウント(Mount)」ボタンを押します。
ユーザーの作成と権限の割り当て
OpenMediaVault 5ではユーザーアカウントを細かく管理でき、ユーザーごとに異なる権限を割り当てられます。これにより、NAS上のどの共有フォルダに対して誰が読み書きできるのかを自由にコントロールできます。
1. 「アクセス権管理(Access Rights Management)」メニュー内の「ユーザー(User)」サブメニューを開きます。「ユーザー(Users)」タブにアカウント「pi」が表示されているはずです。このアカウントは重要なシステム機能を司るすべてのグループに所属しています。
2. プラス記号の付いた「追加(Add)」ドロップダウンメニューをクリックし、表示される「追加」ボタンで「ユーザーの追加(Add user)」ポップアップを開きます。ユーザー名を入力し、必要に応じて説明コメントやメールアドレスも記入しましょう。
3. 同じ「ユーザーの追加」ポップアップ内の「グループ(Groups)」タブを開き、このユーザーを適切なグループに追加します。「users」グループはデフォルトで選択されています。「sudo」「ssh」「sambashare」グループのチェックボックスにチェックを入れ、「保存」ボタンで変更を確定します。
同じ手順で追加のユーザーを作成できますが、家族など追加アカウントにはデフォルトのusersグループに加えて「sambashare」グループのみを付与するようにしましょう。家族一人ひとりに個別アカウントを持たせておけば、共有フォルダのプライバシー管理がぐっと楽になります。
共有フォルダの設定
SMB設定タブに移る前に、まず共有フォルダを作成しておく必要があります。
1. 「共有フォルダ(Shared Folders)」サブメニューを開き、「追加(Add)」ボタンで新しい共有フォルダを作成します。まずはユーザー間や今後追加するOMV5プラグイン・アプリケーションとの間でファイルを共有するためのフォルダを作りましょう。
「共有フォルダの追加(Add shared folder)」ポップアップでフォルダ名を入力します。今回は「Common」としました。Deviceドロップダウンメニューで先ほどマウントした外付けドライブを選択します。全員で使うフォルダなので、Permissionsドロップダウンメニューで「Everyone: read/write」を選択し、「保存」をクリックします。
2. 次に、ゲストでも閲覧できても、内容の追加・削除・変更は正当なアカウントを持つユーザー(家族など)だけが行える「Movies」フォルダを作成します。手順は前のステップと同じですが、Permissionsでは「Administrator: read/write, Users: read/write, Others: read-only」を選択してください。
さらに、「Others: no access」を含むオプションを選べば、家族写真などのフォルダへのアクセスを家族以外から完全に遮断することも可能です。
3. 機密性の高いフォルダへのアクセスを自分以外に制限したり、特定のユーザーだけがアクセスできるフォルダを作ったりすることもできます。その場合は対象フォルダを選択して上部の「権限(Privileges)」ボタンをクリックします。
「共有フォルダ権限(Shared folder privileges)」ポップアップが開くので、自分や特定ユーザーに読み書き権限を付与するチェックボックスにチェックを入れます。下のスクリーンショットの例では、ユーザー「shashi」と「zoe」がWorkフォルダにアクセスできないよう制限しています。「保存」を押して変更を確定しましょう。
CIFS(SMB)経由でフォルダを公開する
次のステップでは、作成したフォルダをOMV5で登録し、ネットワーク越しにアクセスできるようにします。「サービス(Services)」メニューを開きましょう。ネットワーク共有には「NFS」と「SMB/CIFS」の2つのプロトコルから選べます。OS間の互換性が広いことから、WindowsユーザーやMacユーザーには後者のSMB/CIFSがおすすめです。
1. 「SMB/CIFS」サブメニューを開くとSettingsタブが表示されますが、まずは「共有(Shares)」タブへ移動します。「追加(Add)」ボタンを押すと「共有の追加(Add share)」ポップアップが開きます。
「有効化(Enable)」トグルはデフォルトでオン(緑)になっているはずです。「共有フォルダ(Shared Folder)」ドロップダウンメニューから、外付けドライブ上に作成したCommonフォルダを選択します。全員で使うフォルダなので、Publicドロップダウンメニューで「ゲスト許可(Guests allowed)」を選択します。「ブラウズ可能に設定(Set Browseable)」と「既存ACLを尊重(Honor Existing ACLs)」のトグルはデフォルトでオンになっているので、そのまま「保存」をクリックしましょう。
2. 他のフォルダも同様の手順で追加できます。なお、Publicで「ゲスト許可」ではなく「いいえ(No)」を選ぶと、登録済みユーザー以外は共有フォルダにアクセスできなくなります。家族写真などを家族以外から守りたい場合に便利な設定です。
3. 共有の設定が完了したら、同じ「SMB/CIFS」サブメニューのSettingsタブに戻ります。「全般設定(General Settings)」セクションの「有効化(Enable)」トグルをオン(緑色)にし、「保存」ボタンで変更を確定します。
ネットワーク経由でNASにアクセスする
以上でOMV5の設定は完了です。あとはネットワーク上の別のPCからアクセスするだけです。
1. OpenMediaVault 5の設定と共有の準備が整ったら、Windows PCからNASへアクセスしてみましょう。エクスプローラーを開いて「ネットワーク」セクションに移動します。OMV5が稼働するRaspberry Pi NASが、デフォルトのホスト名「RASPBERRYPI」として表示されるはずです。ダブルクリックすれば、NASに作成した共有フォルダの一覧にアクセスできます。
2. NASが見つからない場合は、Windowsのコントロールパネルから「ネットワークと共有センター」→「詳細な共有設定の変更」(下のスクリーンショットのパス参照)を開き、「ネットワーク探索」と「ファイルとプリンターの共有」が有効になっているか確認して、無効ならオンにしましょう。
それでも解決しない場合は、Win + Rで「ファイル名を指定して実行」ダイアログを開き、NASのIPアドレスを先頭にバックスラッシュ(円記号)を2つ付けた形式で入力してEnterを押します。たとえば私の環境では「\\192.168.0.132」と入力すればNASにアクセスできます。エクスプローラーのアドレスバーに入力しても同様です。
3. NASにアクセスできたら、Commonフォルダをダブルクリックして開けるか確認しましょう。
Commonフォルダは全員に開放されているので、ダブルクリックするだけで中に入れます。一方、PhotosやWorkなどアクセス制限をかけたフォルダは、正当なユーザーしか開けません。ダブルクリックすると認証ダイアログが表示されるので、該当アカウントのユーザー名とパスワードを入力してください。
ユーザー名の欄がグレー表示されていて入力できない場合は、「他の選択肢(More choices)」→「別のアカウントを使用する(Use a different account)」を選択すれば任意のユーザー名を入力できます。毎回手動でログインするのが面倒なら、「資格情報を記憶する(Remember my credentials)」にチェックを入れておきましょう。
以上で完成です!Raspberry Piを使ったNAS構築に成功しました。Raspberry Piで楽しめるプロジェクトはほかにもたくさんあります。Minecraftサーバーの構築、DIY Chromecast、レトロゲーム機の自作なども人気です。ぜひ当サイトのRaspberry Piプロジェクトページもチェックしてみてください。
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