C++で解く「壁と門」問題:BFSによる最短距離計算の徹底解説
問題概要
m × n の2次元グリッドを考えます。このグリッドは、以下の3種類の値で初期化されています。
- -1:壁または障害物
- 0:ゲート(門)
- INF:空き部屋(無限大を表す)
ここでは、INF として 2^31 − 1 = 2147483647 を使用します。ゲートまでの距離は必ず 2147483647 未満になると仮定できるためです。
求めたいのは、各空き部屋に対して、最も近いゲートまでの距離です。もしゲートへ到達できない部屋があれば、その部屋は INF のままにします。
入力例
| INF | -1 | 0 | INF |
| INF | INF | INF | -1 |
| INF | -1 | INF | -1 |
| 0 | -1 | INF | INF |
出力例
| 3 | -1 | 0 | 1 |
| 2 | 2 | 1 | -1 |
| 1 | -1 | 2 | -1 |
| 0 | -1 | 3 | 4 |
解法のアプローチ:多始点BFS
この問題は幅優先探索(BFS)を使うことで効率的に解けます。ポイントは、すべてのゲートを起点として同時に探索を開始し、レベル(距離)ごとに周囲のマスを更新していくことです。こうすることで、各マスには必ず「最も近いゲートからの距離」が書き込まれます。
具体的な手順は以下の通りです。
- 移動方向を表す配列 dir(サイズ 4×2)を {{1,0}, {-1,0}, {0,1}, {0,-1}} として定義する。
- n := rooms の行数、m := 列数(n が 0 の場合は m も 0)とする。
- 座標ペアを格納するキュー q を用意する。
- グリッド全体を走査し、値が 0(ゲート)のマスをすべて q に追加する。
- lvl := 1 から始め、q が空になるまで以下を繰り返す。
- sz := 現在の q のサイズとする。
- sz 回だけ次の処理を行う。
- q の先頭要素 curr を取り出して削除する。
- x := curr.first、y := curr.second とする。
- 4方向それぞれについて、nx := x + dir[i][0]、ny := y + dir[i][1] を計算する。
- nx < 0 または ny < 0 または nx ≥ n または ny ≥ m または rooms[nx][ny] < lvl の場合は、そのマスをスキップする。
- rooms[nx][ny] := lvl として距離を更新し、{nx, ny} を q に追加する。
条件「rooms[nx][ny] < lvl」により、すでにより近いゲートから距離が確定済みのマスには上書きしないため、各マスは一度しか更新されません。これが計算量 O(m×n) を実現する鍵です。
C++での実装例
それでは、実際のコードを見てみましょう。
#include <bits/stdc++.h>
using namespace std;
void print_vector(vector<vector<auto>> v){
cout << "[";
for(int i = 0; i < v.size(); i++){
cout << "[";
for(int j = 0; j < v[i].size(); j++){
cout << v[i][j] << ", ";
}
cout << "],";
}
cout << "]" << endl;
}
int dir[4][2] = {{1, 0}, {-1, 0}, {0, 1}, {0, -1}};
class Solution {
public:
void wallsAndGates(vector<vector<int>>& rooms) {
int n = rooms.size();
int m = n ? rooms[0].size() : 0;
queue<pair<int, int>> q;
// まずすべてのゲートをキューに入れる
for (int i = 0; i < n; i++) {
for (int j = 0; j < m; j++) {
if (rooms[i][j] == 0)
q.push({ i, j });
}
}
// レベルごとにBFSを実行
for (int lvl = 1; !q.empty(); lvl++) {
int sz = q.size();
while (sz--) {
pair<int, int> curr = q.front();
q.pop();
int x = curr.first;
int y = curr.second;
for (int i = 0; i < 4; i++) {
int nx = x + dir[i][0];
int ny = y + dir[i][1];
if (nx < 0 || ny < 0 || nx >= n || ny >= m || rooms[nx][ny] < lvl)
continue;
rooms[nx][ny] = lvl;
q.push({ nx, ny });
}
}
}
}
};
main(){
vector<vector<int>> v = {{2147483647,-1,0,2147483647}, {2147483647,2147483647,2147483647,-1}, {2147483647,-1,2147483647,-1}, {0,-1,2147483647,2147483647}};
Solution ob;
ob.wallsAndGates(v);
print_vector(v);
}実行結果
入力
{{2147483647,-1,0,2147483647},{2147483647,2147483647,2147483647,-1},{2147483647,-1,2147483647,-1},{0,-1,2147483647,2147483647}}出力
[[3, -1, 0, 1],[2, 2, 1, -1],[1, -1, 2, -1],[0, -1, 3, 4]]
まとめ
「壁と門」問題は、複数の起点から同時にBFSを行う「多始点BFS」の代表例です。各部屋から個別にゲートを探す素朴な方法では計算量が大きくなりますが、ゲート側から一括で探索を広げることで、O(m×n) の効率的な解法になります。迷路系の最短距離問題全般に応用できるテクニックなので、ぜひ覚えておきましょう。
-
C++で円と長方形の重なりを判定するアルゴリズム
問題の概要円を (radius, xc, yc) という形式で表します。ここで (xc, yc) は円の中心座標です。同様に、軸に平行な長方形(軸平行境界ボックス)を (x1, y1, x2, y2) という形式で表し、(x1, y1) が左下隅の座標、(x2, y2) が右上隅の座標とします。このとき、円と長方形が互いに重なっているかどうかを判定する必要があります。たとえば、次のような入力が与えられた場合を考えてみましょう。この場合、出力は true(重なりあり)となります。解決のアプローチこの問題を解く鍵は、「長方形の中で円の中心に最も近い点」を見つけることです。その点と円の中心との距離が
-
C++で解くドミノとトロミノを使ったタイル敷き詰め問題(2×Nボード)
問題の概要本記事では、「ドミノ」と「トロミノ」という2種類の形状を使ったタイル敷き詰め(タイリング)問題をC++で解く方法を解説します。これらのピースは、以下のように回転させて使用することができます。タイリングでは、盤面上のすべてのマスを必ずタイルで覆わなければなりません。また、2つのタイリング方法は、盤上の4方向に隣接する2つのセルにおいて、片方のタイリングだけがその両方のマスを同じタイルで占有している場合に限り「異なる」とみなされます。入力と出力の例整数Nが与えられたとき、2×Nのボードを敷き詰める方法が何通りあるかを求めます。例えば、入力が3の場合、出力は5となります。敷き詰め方は以下の