GCCの-SオプションでC/C++コードをアセンブリ言語に変換する方法
この記事では、gccを使用してCまたはC++のソースコードからアセンブリ言語の出力を生成する方法を解説します。コンパイラがどのような機械語レベルのコードを生成しているのかを確認したい場合に非常に役立つテクニックです。
-Sオプションの基本
gccには、コンパイル過程の中間出力をすべて取得できる便利な機能が備わっています。アセンブリ出力を得るには、「-S」オプションを指定します。このオプションを付けると、コンパイルまでは実行されますが、アセンブラへ渡す前の段階で処理が停止し、アセンブリコードが出力されます。コマンドの構文は以下の通りです。
gcc -S program.cpp
このコマンドを実行すると、同じディレクトリに「program.s」というアセンブリファイルが生成されます。なお、最適化レベルを変更したい場合は「-O0」(最適化なし)や「-O2」(高レベル最適化)などのオプションを組み合わせると、最適化によるコードの違いを比較できて勉強になります。
サンプルプログラム
それでは、実際に出力がどのようになるか見てみましょう。ここではシンプルなプログラムを用意しました。2つの数値を変数xとyに格納し、その合計を別の変数に保存した後、結果を出力するだけのプログラムです。
C++コード例
#include <iostream>
using namespace std;
main() {
int x, y, sum;
x = 50;
y = 60;
sum = x + y;
cout << "Sum is: " << sum << endl;
}アセンブリ出力結果
上記のプログラムに対して「gcc -S test_cpp.cpp」を実行すると、以下のようなアセンブリコードが得られます(環境:Ubuntu / GCC 7.3.0)。
.file "test_cpp.cpp" .text .section .rodata .type _ZStL19piecewise_construct, @object .size _ZStL19piecewise_construct, 1 _ZStL19piecewise_construct: .zero 1 .local _ZStL8__ioinit .comm _ZStL8__ioinit,1,1 .LC0: .string "Sum is: " .text .globl main .type main, @function main: .LFB1493: .cfi_startproc pushq %rbp .cfi_def_cfa_offset 16 .cfi_offset 6, -16 movq %rsp, %rbp .cfi_def_cfa_register 6 subq $16, %rsp movl $50, -12(%rbp) movl $60, -8(%rbp) movl -12(%rbp), %edx movl -8(%rbp), %eax addl %edx, %eax movl %eax, -4(%rbp) leaq .LC0(%rip), %rsi leaq _ZSt4cout(%rip), %rdi call _ZStlsISt11char_traitsIcEERSt13basic_ostreamIcT_ES5_PKc@PLT movq %rax, %rdx movl -4(%rbp), %eax movl %eax, %esi movq %rdx, %rdi call _ZNSolsEi@PLT movq %rax, %rdx movq _ZSt4endlIcSt11char_traitsIcEERSt13basic_ostreamIT_T0_ES6_@GOTPCREL(%rip), %rax movq %rax, %rsi movq %rdx, %rdi call _ZNSolsEPFRSoS_E@PLT movl $0, %eax leave .cfi_def_cfa 7, 8 ret .cfi_endproc .LFE1493: .size main, .-main .type _Z41__static_initialization_and_destruction_0ii, @function _Z41__static_initialization_and_destruction_0ii: .LFB1982: .cfi_startproc pushq %rbp .cfi_def_cfa_offset 16 .cfi_offset 6, -16 movq %rsp, %rbp .cfi_def_cfa_register 6 subq $16, %rsp movl %edi, -4(%rbp) movl %esi, -8(%rbp) cmpl $1, -4(%rbp) jne .L5 cmpl $65535, -8(%rbp) jne .L5 leaq _ZStL8__ioinit(%rip), %rdi call _ZNSt8ios_base4InitC1Ev@PLT leaq __dso_handle(%rip), %rdx leaq _ZStL8__ioinit(%rip), %rsi movq _ZNSt8ios_base4InitD1Ev@GOTPCREL(%rip), %rax movq %rax, %rdi call __cxa_atexit@PLT .L5: nop leave .cfi_def_cfa 7, 8 ret .cfi_endproc .LFE1982: .size _Z41__static_initialization_and_destruction_0ii, .-_Z41__static_initialization_and_destruction_0ii .type _GLOBAL__sub_I_main, @function _GLOBAL__sub_I_main: .LFB1983: .cfi_startproc pushq %rbp .cfi_def_cfa_offset 16 .cfi_offset 6, -16 movq %rsp, %rbp .cfi_def_cfa_register 6 movl $65535, %esi movl $1, %edi call _Z41__static_initialization_and_destruction_0ii popq %rbp .cfi_def_cfa 7, 8 ret .cfi_endproc .LFE1983: .size _GLOBAL__sub_I_main, .-_GLOBAL__sub_I_main .section .init_array,"aw" .align 8 .quad _GLOBAL__sub_I_main .hidden __dso_handle .ident "GCC: (Ubuntu 7.3.0-16ubuntu3) 7.3.0" .section .note.GNU-stack,"",@progbits
出力内容のポイント
一見複雑に見えますが、重要な部分を抜き出すと理解しやすくなります。
- 「movl $50, -12(%rbp)」「movl $60, -8(%rbp)」:変数xとyにそれぞれ50と60を代入している命令です。ローカル変数はスタック上(rbpレジスタからのオフセット位置)に配置されています。
- 「addl %edx, %eax」:2つの値を加算し、その結果をsumに相当する領域へ格納しています。
- 「call _ZNSolsEi@PLT」など:C++では関数名がマングリング(名前修飾)されるため、coutへの出力処理がこのような長いシンボル名になっています。
- _GLOBAL__sub_I_main:iostreamの静的初期化(ios_base::Initによる標準ストリームの初期化)を行うためのコードです。C++特有の部分ですね。
補足:Intel構文で出力したい場合
デフォルトのAT&T構文ではなく、Intel構文でアセンブリを出力したい場合は、以下のように「-masm=intel」オプションを追加します。
gcc -S -masm=intel program.cpp
このように、gccの-Sオプションを使えば、ソースコードがどのようにアセンブリレベルで実装されるのかを手軽に確認できます。コンパイラの最適化の挙動を学んだり、パフォーマンスチューニングを行ったりする際にぜひ活用してみてください。
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