オンラインプライバシーの悪化でVPNは終わり?今後注目すべき6つの技術トレンド
近年、「VPNはその役割を終えつつある」という見方が業界内外で広がりつつあります。中には「2年以内に消滅する」という極端な予測をする人さえいます。データロギング、ISPによる制限、暗号化、地域ブロックといった問題が、消費者の信頼を蝕んでいる――これが彼らの主張です。
しかし、そもそもVPNはプライバシー保護や地理的制限の回避を目的として設計されたわけではありません。そうした役割は、時代とともに自然発生的に担うようになったものにすぎません。
では、VPNの将来はどうなるのでしょうか。プロバイダーはどのような技術を採用すれば製品の価値を維持できるのか。顧客に契約を続けてもらうには何が必要なのでしょうか。
本記事では、VPNの未来について詳しく見ていきます。
モバイル環境への適応が加速
あらゆるウェブベースのビジネスと同様に、VPNプロバイダーもまた、インターネットの世界がますますモバイル中心へと移行している事実に気づき始めています。
もちろん、ほとんどのVPN企業はモバイル対応を積極的にアピールしています。AndroidでもiOSでも、VPNの認証情報を入力してネットワークを利用できる仕組みが用意されているからです。
しかしその裏側では、モバイル向けVPNはまったく別の存在です。モバイルVPNの運用に必要な技術は、デスクトップ向けとは大きく異なります。
モバイルで使用する場合、VPNはメモリ使用量を抑え、より短い時間枠でデータを処理し、データ圧縮技術を活用してパフォーマンスとスループットを向上させる必要があります。
そのため、今後はFIPS 140-2標準を採用する企業がさらに増えると考えられます。この標準は米国国立標準技術研究所(NIST)が策定したもので、モバイル最適化されたTLSプロトコルによる、安全かつ持続的なワイヤレスアクセスをVPNに求めるものです。
FIPS 140-2に準拠する主なモバイルVPN技術には、IPsec VPN、SSL VPN、IKEv2 VPN、MobileIP VPNの4つがあります(ただし、SSLとIPsecは元々デスクトップ用途向けに設計されたものです)。
今後数年で、これら4つの技術のいずれかを採用するVPN企業が増えていくでしょう。さらに可能性が高いのは、モバイル利用に特化して設計され、現行プロトコルの欠点を克服した新しいVPNプロトコルの登場です。
ネットワークアクセスコントロール(NAC)の台頭
多くの人はVPNを「Netflix(米国版)へのアクセス」や「広告会社からのトラッキング防止」の手段と考えていますが、実はビジネスにおいても不可欠なツールとなっています。
VPNを使えば、従業員は社内ネットワークにログインし、内部データへアクセスできます。これにより、在宅勤務や出張先でも業務上重要なタスクをこなせるのです。
しかし、この運用にはリスクも伴います。企業は、ログインに使われたデバイスが安全であることをどう確認すればよいのでしょうか。ウイルスに感染していないか。OSは最新版か。企業データを盗み出す恐れのあるアプリが入っていないか。結局のところ、VPNは企業ネットワーク全体の中でも最も脆弱なアクセスポイントの一つなのです。
ここで登場するのが「ネットワークアクセスコントロール(NAC)」です。大まかに言えば、堅牢なNACシステムは、事前に定義された基準を満たさないデバイスには一切アクセスを許可しません。基準は、ウイルス対策ソフトの有無からシステム設定まで、さまざまなものが考えられます。
「BYOD(Bring Your Own Device)」ポリシーの普及とモバイルデバイスへの移行により、NACポリシーの実装は難しくなっています。
そのため多くの専門家は、VPNプロバイダーがNACソリューションを標準提供し始めると予測しています。ユーザーが認証情報を入力する前に、VPNがデバイスを評価し、接続に適した状態かどうかを判断できるようになるかもしれません。
また、社内IT部門の検証を受けていない公衆PCからでも、従業員がビジネスネットワークにログインできるようになります。理論上は、業務の妨げとなる障壁を取り除き、生産性向上につながるはずです。
クラウドストレージとの統合が標準に
すでに多くの企業が、VPNに代わってクラウドベースのソリューションを活用し始めています。専任のIT担当者を置けないスタートアップや中小企業にとって、クラウドは重要なビジネスデータを共有・アクセスするための、より手軽な手段だからです。
Google、Microsoft、そしてAmazonまでもが、エンタープライズ分野に本格的に参入しています。企業側も歓迎しており、クラウドソリューションがもたらす機動性と、成長に応じて支払うサブスクリプション型の料金体系は、資金力の限られた企業にとって魅力的です。
VPNプロバイダーも徐々に対応を始めています。一部の企業は、VPN本体と連携して動作する統合型パブリッククラウドサービスの提供を開始しました。狙いは、クラウドストレージとVPNを一つの安全なサービスとしてまとめて提供することです。
スマートルーティング(AIルーティング)
「AIベースのルーティング」とも呼ばれるスマートルーティングは、今後数年でより一般的になると期待されています。
これは、個々のリクエストごとに、宛先サーバーに最も近いVPNサーバーへトラフィックを振り分ける仕組みです。たとえば、ブラジルのサイトにアクセスすれば、トラフィックはリオデジャネイロにあるVPNサーバー経由で送られます。別のタブでフランスのサイトを開けば、今度はパリのサーバーへルーティングされるという具合です。
スマートルーティングには3つの大きなメリットがあります。第一に、トラフィックが可能な限りVPNネットワーク内にとどまること。第二に、最低限のレイテンシ(遅延)で通信できること。そして第三に、おそらく最も注目すべき点として、訪問するすべてのウェブサイトがそれぞれ異なるIPアドレスを見ることになります。これにより、企業による横断的なトラッキングは格段に困難になるでしょう。
プロトコルの難読化
近年、VPN経由のトラフィックを拒否するウェブサイトやサービスが増えています。最も有名なのはNetflixとBBC iPlayerでしょう。
同様に、VPNトラフィックをブロックしていたISP(インターネット接続業者)も発覚しています。ISPは、多くの人がVPNを使ってTorrentなどの違法コンテンツをダウンロードしていることを認識しており、一律に遮断する方針を取っているのです。大学の寮や集合住宅でアクセス制限が行われているという報告もあります。
こうした状況における解決策が、VPNプロトコルの難読化です。目的は、ネットワークトラフィックの特性を変化させ、サイト側がVPN由来だと識別できないようにすることです。
すでにこの目的を達成する方法はいくつか存在します。たとえば、「Shapeshifter Dispatcher」というコマンドラインのプロキシツールを使えば、プラグ可能なトランスポート(pluggable transports)を利用してディープパケットインスペクション(DPI)フィルタリングを回避できます。ただし、このツールは設定が複雑で、初心者には不向きです。
幸いなことに、プロトコル難読化技術は今後、一般消費者向けVPNにも普及していくでしょう。高度なサードパーティーツールの必要性がなくなり、VPNは数年前の地位を取り戻せるはずです。
VPNプロバイダーのサービス細分化
つい最近まで、商用VPNはどこも似たり寄ったりでした。強固なプライバシー保護と地理的制限の回避を謳うだけで、それ以上の差別化はほとんどありませんでした。
しかし、市場の細分化はすでに始まっています。ExpressVPNやPrivate Internet Accessといった大手は、あらゆるプラットフォームで考えられるほぼすべてのユースケースをカバーする汎用的なVPNソリューションを提供しようとしています。一方で、無料サービスの中には、大手が扱わないニッチな領域で差別化を図ろうとする動きも見られます。
この傾向は今後も続くと予想されます。中国、ロシア、イランなどでの検閲の強化に伴い、厳しく検閲された市場を狙った小規模なVPNプロバイダーがさらに多数登場すると見られています。
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