Apple Pay、Android Pay、Samsung Pay――どのNFC決済アプリが最も安全?セキュリティ徹底比較
NFC決済は世界を席巻しつつあります。少なくとも、店舗での支払い方法に革命をもたらしているのは間違いありません。ご存じない方のために補足すると、この技術はヨーロッパ、カナダ、アジアの多くの地域で急速に普及しています。
イギリスでは2020年までにすべてのPOS端末を非接触型にする目標を掲げ、オーストラリアでは53%以上の人が週に一度はNFCアプリを利用しています。中国ではNFC決済がこれほどまでに浸透した結果、専門家の間では「数年以内に世界初のキャッシュレス社会になる」という見方さえあるほどです。
アメリカはやや出遅れていますが、急ピッチで追い上げています。マクドナルドやウォルグリーンといった大手企業がすでに非接触型決済を導入しており、対応店舗は今後も増え続ける見込みです。
NFCアプリに対応する企業が増えるにつれ、アプリ自体の数も増加しています。しかし欧米でリードしているのは、いわゆる「ビッグ3」――Apple Pay、Android Pay(現Google Pay)、Samsung Payです。今回は、それぞれのセキュリティ面の強みと弱みを詳しく見ていきましょう。
Apple Pay
Apple Payは2014年に登場したサービスで、iPhone 6、7、8、Xの全モデルに搭載されています。店舗での支払いに使えるほか、Macをお持ちであればオンライン決済にも対応しています。
多くの決済アプリと同様、Apple Payの中核的なセキュリティ対策は「トークン化」です。実際のクレジットカード番号をデバイスに保存する代わりに、仮想のアカウント番号を作成します。
トークン化は複雑な暗号化プロセスによって実現されています。カード情報をアプリに入力すると、デバイスがそれを暗号化してAppleのサーバーへ送信します。Appleは受信した番号を復号し、カードの決済ネットワーク情報を付与したうえで、そのカードネットワークだけが解読できる鍵で再暗号化します。
続いて決済プロバイダーがカードの追加を承認し、デバイス固有の「Device Account Number(DAN)」を作成・暗号化してAppleに送信します。Appleはこれを復号できません。最後に、AppleはDANをスマートフォンのSecure Element(SE)に格納します。Secure Elementとは業界標準のセキュリティ技術で、詳細は後述します。
さらにAppleは、「iPhoneを探す」機能によって紛失時の備えも整えています。この機能を使えばデバイスを遠隔消去でき、保存済みのクレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、ポイントカードの情報をまとめて削除できます。また、Apple IDのアカウントページからカード発行会社に通知すれば、Apple ID経由の支払いは自動的にブロックされます。
すべて理想的に聞こえますが、Apple Payにはプライバシーに関する懸念もあります。利用規約には次のように記載されています。
「Appleは、iTunesおよびApp Storeのアカウントアクティビティに関する情報、デバイスに関する情報、デバイスの使用状況に関する情報、そしてクレジットカード・デビットカード・プリペイドカードを銀行またはカード発行会社に登録する際の位置情報を送信します。」
少し気になる響きですね。
Android Pay
Android Payのコアとなるセキュリティ機能の多くはApple Payと共通しています。トークン化の仕組みもほぼ同じですが、一つ根本的な違いがあります。
Android Payは、Secure Elementでトークンを生成する代わりに、「Host Card Emulation(HCE)」と呼ばれる方式を採用しています。
HCEはAndroid 4.4以降、OS標準の機能として組み込まれてきました。HCEでは、デバイス内のSecure Elementに決済情報を保持する代わりに、それらをリモート環境に置き、クラウド経由でデバイスと通信します。
物理的なSEと比較すると、HCEには次のような利点があります。
- 物理的なSEはストレージ容量に制限がある一方、HCEのストレージは拡張可能である
- HCEはより多くのコンピューティングパワーを活用できるため、より強固なセキュリティ対策を実装できる
- HCEによるリモートSEの導入により、関与する事業者が減り、消費者のコストも抑えられる
ただし、セキュリティ上の弱点も一つあります。HCEはリモートのSecure Elementに依存しているため、オフライン状態でも支払いができるよう設計されています。これは、いわば一時的なクレジットカードを使っているようなものです。
この猶予期間は長くは続かず、さらなる支払いには最終的にサーバーへの再接続が必要です。それでも、あなたのデバイスを手に入れ、PINコードを知る人物が、Wi-Fiを無効化した状態であなたが対処する前に支払いを重ねる可能性は残ります。リスクは最小限ですが、ゼロではありません。
Samsung Pay
「ビッグ3」の最後を飾るのがSamsung Payです。韓国メーカー・サムスン電子によるApple Payへの回答と言える存在で、Apple Payと同様、Samsung製品でのみ動作する独自アプリです。
セキュリティの詳細に入る前に、AndroidにもAppleにもない特筆すべき機能に触れておきましょう。Samsung PayはNFC対応のPOS端末だけでなく、世界中に普及しているMST(Magnetic Secure Transmission)やEMV(Europay MasterCard Visa)リーダーにも対応しています。その意味で、より幅広い場面で使える包括的なソリューションです。
不審なアクティビティへの対策として、SamsungはSamsung Knoxを採用しています。KnoxはARM TrustZoneアーキテクチャを基盤としており、TrustZoneのセキュリティはTIMA KeyStore、リアルタイムカーネル保護、認証(Attestation)という3つの要素で構成されています。
SamsungのスマートフォンはAppleの手法にならい、Secure Elementをデバイス本体に物理的に搭載しています。HCE技術は使用していません。近年のGalaxy S8では、デジタルセキュリティ大手のGemaltoがSEの供給を担当しました。
支払い時の手順は3つのアプリで非常に似通っています。各支払いの承認にはPINコードまたは生体認証が必要で、高額な支払いでは通常、署名も求められます。トークン化のおかげで、加盟店があなたのカード情報を目にすることは一切ありません。
万が一スマートフォンを紛失しても、専用のオンラインサービスを使えば、Samsung Payを遠隔でブロック・消去できます。
それでも現金とカードを使い続けるべき?
完璧なアプリは存在しません。ハッカーは常に脆弱性や抜け穴を探し、ユーザーとそのデータを悪用しようと狙っています。
テックニュースを追っていると、NFCアプリの欠陥を指摘する記事が時折目に入ります。たとえば2016年8月には、セキュリティ研究者が「Samsung Payのトークンはランダム性が不十分で、予測可能になる恐れがある」と主張しました。
同様に2016年3月には、犯罪者が盗んだクレジットカードをApple Payに登録し、短時間だけ使用した後に端末を廃棄できるとの指摘もありました。
もちろん、こうした状況は決して楽観できるものではありません。それでも、NFCアプリは現金や従来の署名式クレジットカードよりも安全です。何より重要なのは、技術が成熟するにつれて、アプリのセキュリティも確実に向上していくという点です。
あなたはNFCアプリを使っていますか?
本記事では、欧米で最大級の決済アプリ3つが提供するセキュリティ機能について概説しました。
あなたはNFCアプリを使っていますか?信頼できますか?セキュリティは十分だと感じますか?将来的に現金に取って代わると思いますか?ぜひコメント欄でご意見をお聞かせください。また、この記事をSNSでシェアしていただけるとうれしいです。
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