C++でfinalクラス(継承禁止クラス)をシミュレートする方法
JavaやC#には、finalクラス(C#ではsealedクラス)と呼ばれる特殊なクラスが存在します。finalクラスは継承が禁止されており、そこから新しいクラスを派生させることはできません。しかし、C++にはこのような機能を直接実現する仕組みはありません。この記事では、C++でfinalクラスをシミュレートするテクニックを紹介します。
finalクラスを実現する仕組み
まず、MakeFinalClassという補助クラスを1つ作成します。このクラスのデフォルトコンストラクタはprivateに設定されており、外部からは呼び出せなくなっています。ここがこのテクニックの核心部分です。
そして、メインとなるMyClassをMakeFinalClassのフレンドクラスとして宣言します。フレンドクラスはprivateメンバーにもアクセスできるため、MyClassはMakeFinalClassのコンストラクタを呼び出すことができます。
さらに重要なポイントとして、MakeFinalClassは仮想基底クラス(virtual base class)として継承します。仮想基底クラスのコンストラクタは、中間クラスであるMyClassからではなく、最も派生した具象クラスのコンストラクタから呼び出されるというC++の規則を利用するためです。つまり、MyDerivedClassを作ろうとすると、MyDerivedClass自身がMakeFinalClassのコンストラクタを直接呼び出す必要が生じます。
継承を試みた場合:コンパイルエラーになる
まず、MyClassを継承してMyDerivedClassを作成しようとするとどうなるか見てみましょう。
#include <iostream>
using namespace std;
class MyClass;
class MakeFinalClass {
private:
MakeFinalClass() {
cout << "これはMakeFinalClassのコンストラクタです" << endl;
}
friend class MyClass; // MyClassにのみコンストラクタへのアクセスを許可
};
class MyClass : virtual MakeFinalClass { // このクラスがfinalクラスとなる
public:
MyClass() {
cout << "これはfinalクラスのコンストラクタです" << endl;
}
};
// 派生クラスを作成してみる
class MyDerivedClass : MyClass {
public:
MyDerivedClass() {
cout << "派生クラスのコンストラクタです" << endl;
}
};
int main() {
MyDerivedClass derived;
}
出力
In constructor 'MyDerivedClass::MyDerivedClass()': [Error] 'MakeFinalClass::MakeFinalClass()' is private
MyDerivedClassを定義した時点でコンパイルエラーが発生します。これは、仮想基底クラスMakeFinalClassのコンストラクタがprivateであり、フレンドクラスではないMyDerivedClassからは呼び出せないためです。この仕組みにより、MyClassを継承したクラスを作成することはできなくなります。
MyClass自身のオブジェクトは作成できる
一方、MyClassはMakeFinalClassのフレンドクラスであり、そのprivateなコンストラクタにアクセスできるため、MyClassのオブジェクトは問題なく作成できます。
#include <iostream>
using namespace std;
class MyClass;
class MakeFinalClass {
private:
MakeFinalClass() {
cout << "これはMakeFinalClassのコンストラクタです" << endl;
}
friend class MyClass;
};
class MyClass : virtual MakeFinalClass { // このクラスがfinalクラスとなる
public:
MyClass() {
cout << "これはfinalクラスのコンストラクタです" << endl;
}
};
int main() {
MyClass obj;
}
出力
これはMakeFinalClassのコンストラクタです これはfinalクラスのコンストラクタです
エラーも発生せず、正常にオブジェクトが生成されました。仮想基底クラスMakeFinalClassのコンストラクタが先に呼び出され、その後にMyClassのコンストラクタが実行されていることがわかります。
補足:C++11以降ではfinalキーワードが利用可能
なお、C++11以降では言語仕様としてfinal指定子が導入されました。クラス名の後ろにfinalを付けるだけで、そのクラスの継承を簡単に禁止できます。
class MyClass final { // C++11以降:このクラスは継承できない
// ...
};
この記事で紹介したテクニックは、C++11以前の環境や、言語の仕組みを深く理解したい場合に役立ちます。現代のC++では、特別な理由がない限りfinalキーワードを使用するのが一般的です。
-
【C++入門】多重継承の基本と実装方法をわかりやすく解説
多重継承(Multiple Inheritance)とは多重継承とは、ひとつのクラスが複数の基底クラス(親クラス)から派生する仕組みのことです。多重継承を利用することで、派生クラスは複数の基底クラスが持つ機能やデータメンバをまとめて引き継ぐことができます。これはC++に代表されるオブジェクト指向プログラミング言語における重要な機能のひとつです。多重継承の構造を表した図が以下になります。C++で多重継承を実装するサンプルプログラムここでは、C++で多重継承を実装したサンプルプログラムを紹介します。クラスCが、クラスAとクラスBの2つのクラスを同時に継承する例です。サンプルコード#include
-
Javaのfinalクラスとは?継承を禁止する仕組みと使い方を徹底解説
Javaにおいて、クラスにfinal修飾子を付けて宣言する最大の目的は、そのクラスがサブクラス化(継承)されることを防ぐことです。クラスがfinalとして宣言されると、どのクラスもそのクラスを継承できなくなり、finalクラスの機能や振る舞いを拡張・変更することが不可能になります。finalクラスの基本構文finalクラスの宣言は非常にシンプルです。クラス名の前にfinalキーワードを付けるだけです。public final class Test { // クラスの本体 }このように宣言されたTestクラスに対して、以下のような継承を試みるとコンパイルエラーが発生します。// コンパイ