Pythonで画像に秘密のメッセージを隠す方法|Pillowとstepicで学ぶステガノグラフィ入門
ステガノグラフィ(Steganography)とは、情報を目立たない形で隠す技術です。SHA1やMD5などのアルゴリズムでデータを暗号化することに重点を置く暗号技術(Cryptography)とは異なり、ステガノグラフィは、データ(ファイル、画像、メッセージ、動画など)を別のファイルや画像の中に埋め込み、その存在自体に気づかれないようにすることを目的としています。
この記事では、画像の見た目にほとんど変化を与えることなく、画像の中に情報を隠すシンプルなPythonプログラムを作成します。プログラムは大きく分けて2つの部分から構成されます。1つ目は、画像ファイルから秘密情報を取り出すデコード機能、2つ目は、秘密のメッセージを画像に埋め込むエンコード機能です。
ここではPythonのPillowライブラリを使用します(OpenCVなど他のライブラリでも同様の処理が可能です)。pipを使ってインストールできるので、コマンドプロンプトで次のコマンドを実行してください。
$ pip install pillow
ピクセルとカラーモデルの基本概念
ピクセルは、画像を構成する最小単位の要素です。各ピクセルが元画像の一部を表しており、ピクセル数が多いほど、実際の画像をより精細かつ正確に再現できます。
白黒画像(グレースケールではなく2値画像)の場合、黒いピクセルは「1」、白いピクセルは「0」という値を持ちます。一方、カラー画像には3つの主要な色成分(RGB:赤・緑・青)があり、それぞれ0〜255の値を持ちます。たとえば (255, 255, 255) は白を、(0, 0, 0) は黒を表します。8ビットの2進数で表現できる最大値が255であるため、これが各成分の上限となります。
2進数の基数は2なので、2進数から10進数への変換はとても簡単です。たとえば、2進数「01010101」を10進数(基数10)に変換すると、次のようになります。
26 + 24 + 22 + 20 = 64 + 16 + 4 + 1 = 85
この2進数から10進数への変換は、Pythonのターミナルでも簡単に確認できます。
>>> print(0b01010101) 85 >>> type(0b01010101) <class 'int'> >>> 0b01010101 85 >>> 0b01010110 86
実装の流れ
全体の処理は、次のステップで進めていきます。
ステップ1: 必要なライブラリ/パッケージをインポートする ステップ2: データを隠したいファイルまたは画像を開く ステップ3: 元画像にテキストをエンコードし、保存する ステップ4: 元画像と加工後の画像を比較し、見た目に変化がないか確認する ステップ5: 画像をデコードし、隠されたデータを取り出す
サンプルコード
まず、必要なライブラリをインポートします。
>>> # 必要なライブラリをインポート >>> from PIL import Image >>> import stepic
エンコードとデコードにはstepicライブラリを使用しています。stepicもpipでインストールできます。
続いて、画像を開き、テキストを埋め込んで保存します。
>>> # データを隠したい画像またはファイルを開く
>>> im = Image.open('TajMahal.png')
>>>
>>> # テキストを画像にエンコードし、別ファイルとして保存する
>>> im1 = stepic.encode(im, b'Hello Python')
>>> im1.save('TajMahal.png', 'PNG')
>>>
>>> # 両方の画像を表示して、見た目に変化がないか確認する
>>> im1 = Image.open('TajMahal.png')
>>> im1.show()
テキストが埋め込まれた画像:
元画像の表示: >>> im.show()
一見すると、元の画像と埋め込み後の画像に違いはほとんどありません。最後に、画像をデコードして隠されたデータを取り出してみましょう。
>>> # 画像をデコードして、隠されたデータを抽出する
>>> im2 = Image.open('TajMahal.png')
>>> stegoImage = stepic.decode(im2)
>>> stegoImage
'Hello Python'
このように、Pythonを使えばテキストを画像に隠すのは非常に簡単です。入力には動画など他の形式を使うこともできますし、同じ結果が得られる別のライブラリを利用することも可能です。それでは、Pythonでのステガノグラフィをお楽しみください!
補足:stepicが採用するLSB方式の仕組み
stepicライブラリは「LSB(Least Significant Bit:最下位ビット)」と呼ばれる手法を採用しています。これは、各ピクセルの色成分の最下位ビットを、秘密情報のビットで置き換える方法です。最下位ビットが変化しても色のずれはわずか(最大1/255程度)であるため、人間の目では元の画像との違いをほぼ認識できません。これが、画像の見た目を損なわずにデータを隠せる理由です。
また、ステガノグラフィにはPNGのような可逆圧縮(ロスレス)形式の画像が適しています。JPEGなどの非可逆圧縮形式では、保存時に圧縮処理が行われるため、埋め込んだデータが壊れてしまう可能性がある点に注意しましょう。
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