AES暗号化と復号化とは?情報セキュリティにおける仕組みを徹底解説
AES暗号化とは
AES(Advanced Encryption Standard)暗号化とは、米国連邦情報処理標準(FIPS 197)として承認された128ビット・192ビット・256ビットの共通鍵(対称鍵)暗号アルゴリズムを用いて、電子データを秘匿する仕組みを指します。
AES誕生の背景
1990年代、米国政府は国内外を問わず広く使用できる暗号アルゴリズムの標準化を求めました。こうして策定されたのが「高度暗号化標準(AES:Advanced Encryption Standard)」です。
公募には複数の候補が提出され、幾度にも及ぶ審議を経て、Joan Daemen氏とVincent Rijmen氏が考案した「Rijndael(ラインダール)」が採用されました。新しいアルゴリズムが必要とされた最大の理由は、旧標準であるDES(Data Encryption Standard)の脆弱性が明らかになったことにあります。
DESの56ビット鍵は、総当たり攻撃(鍵のしらみつぶし探索)に対してもはや安全とは言えず、64ビットのブロック長も脆弱と見なされていました。一方、AESは128ビット鍵と128ビットブロックを基盤としており、より強固なセキュリティを実現しています。
AESの構造上の特徴
AESの構造を理解するうえで、以下のポイントが重要になります。
Feistel構造を採用していない
AESの大きな特徴は、Feistel構造を採用していない点です。Feistel構造では、データブロックの半分を使ってもう半分を変換し、その後に半分同士を入れ替えます。
これに対し、Rijndaelを含むAESの最終候補2案はFeistel構造を必要とせず、各ラウンドで置換(Substitution)と転置(Permutation)を用いて、データブロック全体を並列に処理します。
鍵の拡張
入力された鍵は、44個の32ビット語(w[i])からなる配列へと拡張されます。異なる4語(計128ビット)が、各ラウンドのラウンド鍵として使用されます。
4つの変換ステージ
AESでは複数のステージが組み合わされており、その内訳は「転置1種類+置換3種類」です。
- SubBytes(バイト代用):S-boxと呼ばれる置換表を用いて、ブロックをバイト単位で置き換えます。
- ShiftRows(行のシフト):行を回転させる単純な転置処理です。
- MixColumns(列の混合):GF(28)上の算術演算を利用した置換です。
- AddRoundKey(ラウンド鍵の加算):現在のブロックと拡張鍵の一部との間で、ビット単位のXORを取ります。
ラウンド構成
暗号化・復号化のいずれの場合も、処理はAddRoundKeyステージから始まり、4つのステージすべてを含む9ラウンドが続き、最後に3ステージのみで構成される第10ラウンドで終了します。
鍵を使用するのはAddRoundKeyだけ
鍵を実際に使用するのはAddRoundKeyステージのみです。そのため、暗号処理はAddRoundKeyで始まり、AddRoundKeyで終わります。仮に他のステージを先頭や末尾に適用したとしても、鍵を知らなくても元に戻せてしまうため、セキュリティ上の意味はありません。
各ステージの役割分担
AddRoundKeyステージはVernam暗号の一種ですが、単独では十分な強度を持ちません。一方、残りの3ステージは攪乱(Confusion)、拡散(Diffusion)、非線形性を提供しますが、鍵を必要としないため、これらだけでもセキュリティは確保できません。つまり、4つのステージが組み合わさることで初めて、AESの高い安全性が実現するのです。
まとめ
AESは、DESの弱点を克服すべく標準化された共通鍵暗号方式であり、現在ではTLS通信、Wi-Fi(WPA2/WPA3)、ディスク暗号化など、幅広い分野で事実上の標準として採用されています。Feistel構造によらない独自のラウンド設計と4つの変換ステージによって、処理速度とセキュリティの高さを両立している点が最大の魅力です。
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