元マイクロソフト社員、1000万ドル横領で逮捕——ビットコインで資金洗浄するも逃げ切れず
大企業ほど大規模な窃盗の標的になりやすいものです。狙う価値のある金額が小さな企業よりはるかに大きいためです。マイクロソフトも例外ではなく、元従業員が同僚に罪をなすりつけながら1000万ドルを盗み出した事件が、その証左となりました。
元従業員はどのようにマイクロソフトから盗んだのか
米国司法省は事件の全容を報告書として公開しています。それによると、オンライン販売プラットフォームのテスト業務のために採用されたヴォロディミル・クヴァシュク(Volodymyr Kvashuk)氏は、その立場を利用してデジタルギフトカードを横流ししていたといいます。
ギフトカードは詐欺に悪用されやすいことで知られています。たとえば、一部のクレジットカード不正利用では、購入したギフトカードを闇市場で転売する手口が使われます。銀行振込と比べて足跡が残りにくいことが理由です。
自分に疑いが向かないよう、クヴァシュク氏は同僚たちをスケープゴートにしました。当初、盗んだ金額が5桁程度だった頃は自分のアカウントを使用していましたが、金額が拡大するにつれて、同僚のテスト用メールアカウントを使って痕跡を隠すようになったのです。捜査資料によれば、無実の人間に嫌疑をかけることへの罪悪感はほとんどなかったようです。
ギフトカードを盗んだ後は、技術力を駆使して足跡を消しました。その一環として「ビットコイン・ミキシングサービス」を利用し、盗んだ商品を暗号資産に換金しています。クヴァシュク氏は合計1000万ドル相当を盗み、うち280万ドルを自身の銀行口座に入金することに成功しました。
彼はこの資金で16万ドルの車と160万ドルの水辺の家を購入しましたが、その直後に逮捕されました。モラン連邦検事は次のように述べています。
雇用主から盗むだけでも十分に悪質ですが、盗んだ上で同僚に罪を着せれば、被害は金銭的な損失をはるかに超えて広がります。この事件の捜査と起訴には高度な技術的スキルが必要でした。法執行機関のパートナーと連邦検事局が、こうした犯罪者を裁くために必要な能力を備えていることを嬉しく思います。
クヴァシュク氏は懲役9年の判決を受け、マイクロソフトに834万4586ドルの返還を命じられました。刑期を終えた後は国外退去処分となる可能性もあります。
暗号資産は犯罪者の「安全な隠れ家」ではなくなりつつある
クヴァシュク氏の戦略の一つは、ビットコインを通じて資金を洗浄し、足跡を隠すことでした。ランサムウェア開発者の間で暗号資産が好んで使われている実情に目をつけたのかもしれません。
しかし、この事件は、暗号資産が犯罪の痕跡を完全に覆い隠すわけではないことを示しています。IRS-CI(米国内国歳入庁刑事捜査局)の特別捜査官責任者ライアン・L・コーナー(Ryan L. Korner)氏は次のように述べています。
端的に言えば、今回の判決は、インターネット経由で金を盗んでも、ビットコインが犯罪行為を隠してくれるとは考えられないという証明です。サイバー犯罪の専門家チームとIRS-CIのサイバー犯罪部門が協力して犯人を追い詰め、不法行為の責任を問うことになります。
このことから、暗号資産を使って身を隠そうとする詐欺や窃盗に対する法執行機関の取り締まりが本格化するきっかけになるかもしれません。
マイクロソフトにとって大きな勝利
クヴァシュク氏はマイクロソフトから多額の資金を吸い上げましたが、その大部分が本人から返還される見通しとなり、会社側としては安堵していることでしょう。
さらに重要なのは、この事件が犯罪者たちに強烈な警告を発した点です。暗号資産を使えば当局から逃げられるというのは、決して確実な方法ではありません。この事件を受けてサイバー犯罪者たちが手口を変えるかどうか、今後の動向が注目されます。
大企業は巨額の利益を期待できるため詐欺師の標的になる一方、一般市民をまとめて騙そうとする手口も存在します。たとえば、アダルトサイトで被害者を撮影したと偽って告げ、秘密を守る代わりに暗号資産での支払いを要求する詐欺などがその例です。
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