コバートチャネル(秘密チャネル)とは?ネットワークセキュリティにおける仕組み・種類・攻撃事例を徹底解説
コバートチャネル(秘密チャネル)とは
コバートチャネル(covert channel、秘密チャネル)とは、システムの設計意図やセキュリティポリシーに従わない形で、情報を隠れてやり取りするための通信経路のことです。本来許可されていないプロセス間でデータを受け渡すために悪用されることが多く、ネットワークセキュリティにおいて重大な脅威の一つとされています。
ネットワークセキュリティにおける定義
ネットワークセキュリティの分野では、コバートチャネルは次のように定義されます。
「協力関係にあるエンティティ(主体)同士が、システムのセキュリティポリシーに違反する方法で情報をやり取りするために利用する、システム内部の通信路」
重要なのは、この通信が当事者のアクセス権限の範囲を超えない点です。つまり、正当なアクセス権を持つプロセスが、その権限を悪用して本来認められていない方法で情報を漏洩させるのです。
コバートチャネルの目的
コバートチャネルの主な目的は、システムのセキュリティポリシーを回避することです。プロセスがこの隠れた経路を悪用すると、認可されていない方法で情報を転送でき、監視やアクセス制御をすり抜けてしまいます。
まとめると、コバートチャネルとは「システムの設計思想に沿わない手段を使って情報を伝送する仕組み」と言えます。
コバートチャネルの2つの主要な種類
コバートチャネルには、大きく分けて以下の2種類があります。
1. ストレージチャネル(記憶域チャネル)
あるエンティティがストレージ上の特定の場所(ハードディスクなど)に情報を書き込み、別のエンティティがその場所を読み取ることで通信が成立します。直接または間接的に、保存場所への書き込みと読み出しを通じてデータが受け渡されるのが特徴です。
2. タイミングチャネル(時間チャネル)
システムリソースの使用状況を意図的に変調し、その結果生じる応答時間の違いによって情報を伝えます。観測者にとっての「実際の応答時間」の変化が通信の媒体となるため、通常のトラフィック監視では検知が非常に困難です。
コバートチャネルの具体例
身近な例えとして、スパイが警備員に見つからないよう隠し compartment(隠し部屋)に武器を隠して持ち込むケースが挙げられます。これと同じように、攻撃者はインターネット上のコバートチャネルを利用して、外部サーバーから組織のプライベートネットワーク内のホストへマルウェアを密かにダウンロードできます。
その他の例としては以下のようなものがあります。
- ストレージチャネルの例: ファイルの存在有無や属性値の変更、共有メモリ上の特定ビットの書き換えなどを信号として使い、1ビットずつ情報を伝える。
- タイミングチャネルの例: CPUやネットワーク帯域の占有時間を細かく調整し、その間隔のパターンで情報を表現する。
ハッカーによるコバートチャネルの悪用手法
攻撃者は、通信を本来意図されていない経路に迂回させたり、想定外のプログラムを利用したりしてコバートチャネルを構築します。
典型的な例がトロイの木馬(トロイジャン)型マルウェアです。感染したクライアントは、コバートチャネルを通じて攻撃者のサーバーへ検知されずに「電話をかける(phone home)」ことができ、逆に攻撃者も同じ経路を通じてクライアント側へ命令を送信できます。ファイアウォールやIDS(侵入検知システム)が通常の通信として処理してしまうため、発見が極めて難しくなります。
コバートチャネル攻撃とは
コバートチャネル攻撃とは、既存のチャネルやネットワークを通じてオブジェクトを転送し、既存のメディアを利用して情報を少しずつ(小さな断片として)伝達することで、情報のやり取りを隠蔽するあらゆる種類のコンピュータ攻撃を指します。
この攻撃の本質は「隠蔽」にあります。大量のデータを一括で送るのではなく、正常な通信の中に極小量の情報を混ぜ込むため、セキュリティ機器による検出を回避しやすいのです。
コバートネットワーク(秘密ネットワーク)とは
コバートネットワークとは、秘密性の要素を含むソーシャルネットワーク、特に有害な意図を持つユーザーが関与するネットワークを指します。
社会ネットワーク分析(SNA:Social Network Analysis)は、こうしたネットワークの解析に活用されており、ネットワーク内の影響力の強いユーザーを特定することで、テロ対策などの暴力過激主義への対抗や、犯罪活動の抑制に貢献しています。
まとめ
コバートチャネルは、正当なアクセス権限を悪用してセキュリティポリシーを回避する隠れた通信経路であり、「ストレージチャネル」と「タイミングチャネル」の2種類に大別されます。マルウェアの通信隠蔽や情報漏洩に悪用される可能性があるため、異常なトラフィックパターンの監視や最小権限の原則の適用など、多層的な防御策が不可欠です。
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