Rubyの数値クラス徹底解説:Integer・Float・BigDecimalの違いと内部の仕組み
Ruby 2.4では、それまで別々のクラスだったFixnumとBignumが、Integerという単一のクラスに統合されました。そこで本記事では、Rubyにおけるさまざまな数値型について改めて整理してみたいと思います。
数値クラスの階層構造から、Floatの精度問題、BigDecimalとの使い分け、さらにはFixnumの内部的な仕組みまで、順を追って解説していきます。
数値クラスの全体像
まずは、Rubyの数値関連クラスの継承関係(クラス階層)を見てみましょう。
Numeric
Integer
Fixnum
Bignum
Float
Complex
Rational
BigDecimal(標準ライブラリ)
ご覧のとおり、Numericクラスがすべての数値クラスの親クラスです。なお、ancestorsメソッドを使えば、任意のクラスの親クラスを簡単に調べられます。
例:
Fixnum.ancestors - Fixnum.included_modules [Fixnum, Integer, Numeric, Object, BasicObject]
続いて、各クラスの特徴を表にまとめました。
| クラス | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| Integer | FixnumとBignumの親クラス | 1 |
| Fixnum | OSの整数型(32bitまたは64bit)に収まる範囲の整数 | 1 |
| Bignum | より大きな数値を扱うためのクラス | 111111111111 |
| Float | 精度が保証されない小数 | 5.0 |
| Complex | 虚数を伴う数学的な計算に使用 | (1+0i) |
| Rational | 分数を正確に表現するために使用 | (2/3) |
| BigDecimal | 完全な精度を誇る十進小数 | 3.0 |
Floatの精度問題とは?
Rubyの公式ドキュメントでは、Floatクラスは「不正確(imprecise)」であると明記されています。これは一体どういう意味なのでしょうか?
実際に試してみましょう。
0.2 + 0.1 == 0.3 # false
なぜfalseが返ってくるのでしょうか? 0.2 + 0.1の結果を見てみます。
0.30000000000000004
まさにこれこそが「不正確さ」の正体です。
この現象は、浮動小数点数がコンピュータ内部で2進数として保存される仕組み(IEEE 754規格)に起因しています。常に正確な小数計算が必要な場面では、BigDecimalクラスを活用しましょう。
FloatとBigDecimalの使い分け
BigDecimalは、任意精度の十進数を扱えるクラスです。
例:
require 'bigdecimal'
BigDecimal("0.2") + BigDecimal("0.1") == 0.3
# true
「では、なぜ常にBigDecimalを使わないのか?」——答えはシンプルで、処理速度が大きく劣るためです。
ベンチマーク結果はこちらです。
Calculating -------------------------------------
bigdecimal 21.559k i/100ms
float 79.336k i/100ms
-------------------------------------------------
bigdecimal 311.721k (± 7.4%) i/s - 1.552M
float 3.817M (±11.7%) i/s - 18.803M
Comparison:
float: 3817207.2 i/s
bigdecimal: 311721.2 i/s - 12.25x slower
ご覧のとおり、BigDecimalはFloatの約12倍遅いため、デフォルトの数値型としては採用されていないのです。
FixnumとBignumの違い
ここからは、Ruby 2.4以前におけるFixnumとBignumの違いを掘り下げてみましょう。
まずはコードから確認します。
1.class # Fixnum 100000000000.class # Bignum
Rubyは適切なクラスを自動的に選択してくれ、必要に応じてFixnumをBignumへ自動的に昇格させます。
補足: 64ビット環境のRubyインタプリタでは、
Bignumオブジェクトを得るために、さらに大きな数値が必要になる場合があります。
なぜ複数のクラスが必要だったのでしょうか? その理由は、巨大な数値を扱うには別の実装が必要で、しかもその処理は低速になるからです。つまり、FloatとBigDecimalの関係とよく似た構図になっているのです。
Fixnumの特殊な性質:object_idの秘密
Fixnumクラスには、いくつかユニークな特徴があります。たとえば、object_idが特定の計算式によって決まるという点です。
1.object_id # 3 20.object_id # 41
その式は (number * 2) + 1 です。
さらに驚くべきことに、Fixnumを使うとき、実はオブジェクトは一切生成されていません。保存すべきデータを持たず、値そのものがオブジェクトIDから導出される仕組みになっているのです。
これはあくまで実装上の詳細ですが、知っておくとちょっとしたトリビアとして楽しめる話題です。
MRI(Matz's Ruby Interpreter)では、値とオブジェクトIDの相互変換に、次の2つのマクロが使われています。
INT2FIX(i) ((VALUE)(((SIGNED_VALUE)(i))<<1 | FIXNUM_FLAG)) FIX2LONG(x) ((long)RSHIFT((SIGNED_VALUE)(x),1))
ここで行われているのは「ビットシフト」と呼ばれる操作で、すべてのビットを左または右にずらす処理です。
1ビット左にシフトすることは2倍することと等価であるため、式が (number * 2) + 1 になります。最後の +1 は FIXNUM_FLAG 由来のものです。
一方、Bignumは通常のクラスと同様に振る舞い、普通のオブジェクトIDを使用します。
111111111111111.object_id # 23885808
つまり、インタプリタレベルで見ると、Fixnumオブジェクトはシンボルに近い性質を持ち、Bignumオブジェクトは文字列に近い性質を持つということです。
Ruby 2.4以降のIntegerの扱い
Ruby 2.4以降、FixnumとBignumは非推奨(deprecated)となりましたが、内部的な動作は従来どおりです。
Rubyは自動的に両者を切り替えます。しかも、クラス名を意識する必要は一切ありません。
そのため、小さなIntegerの数値は、これまでのFixnumとまったく同じように動作し続けます。
まとめ
本記事では、Rubyに存在するさまざまな数値関連クラスについて学びました。
- Floatは不正確なため、精度が性能よりも重要なケースでは
BigDecimalを使うのが有効 Fixnumオブジェクトはインタプリタレベルで特殊な扱いを受けるが、Bignumはごく普通のオブジェクト
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