Unicornはどのようにnginxと通信するのか?Rubyで学ぶUNIXソケットの基礎
Ruby製のアプリケーションサーバーは、通常nginxのようなWebサーバーと組み合わせて運用されます。ユーザーがRailsアプリケーションのページをリクエストすると、nginxがそのリクエストを受け取り、アプリケーションサーバーへ処理を委譲します。しかし、この仕組みは具体的にどのように実現されているのでしょうか?nginxはどのようにしてUnicornと会話しているのでしょうか?
最も効率的な方法のひとつが「UNIXドメインソケット(UNIXソケット)」を使うことです。本記事では、まずソケットの基本から解説し、最終的には自作のシンプルなアプリケーションサーバーを作成して、それをnginxでプロキシするところまで進めます。
ソケットを使うと、プログラム同士がまるでファイルを読み書きするかのように通信できます。下図の例では、Unicornがソケットを作成して接続を監視し、nginxがそのソケットに接続してUnicornとやり取りします。
UNIXソケットとは何か?
UNIXソケットは、あるプログラムが別のプログラムと、ファイル操作に似た感覚で対話できるようにする仕組みです。いわゆるIPC(Inter-Process Communication:プロセス間通信)の一種です。
ソケット経由でアクセス可能にするには、プログラムはまずソケットを作成し、ファイルと同じようにディスク上に「保存」します。その後、ソケットを監視して着信接続を待ち受けます。接続が確立されると、標準的なIOメソッドを使ってデータの読み書きを行います。
Rubyには、UNIXソケットを扱うために必要な機能がいくつかのクラスとして用意されています。
UNIXServer:ソケットを作成してディスクに保存し、新しい接続を監視できます。
UNIXSocket:既存のソケットを開いてIO操作を行います。
注意: ソケットには他にも種類があります。代表的なのはTCPソケットですが、本記事ではUNIXソケットのみ扱います。両者の見分け方は簡単です。UNIXソケットにはファイル名が存在します。
最もシンプルなソケット
ここで、小さな2つのプログラムを見てみましょう。
ひとつ目は「サーバー」側です。UnixServerクラスのインスタンスを作成し、server.acceptで接続を待ちます。接続が届くと、あいさつのやり取りを行います。
なお、acceptメソッドとreadlineメソッドは、どちらも期待するものを受け取るまでプログラムの実行をブロック(停止)することに注目してください。
require "socket"
server = UNIXServer.new('/tmp/simple.sock')
puts "==== Waiting for connection"
socket = server.accept
puts "==== Got Request:"
puts socket.readline
puts "==== Sending Response"
socket.write("I read you loud and clear, good buddy!")
socket.close
これでサーバーができました。次に必要なのはクライアントです。
以下の例では、サーバーが作成したソケットを開き、通常のIOメソッドを使ってあいさつの送受信を行います。
require "socket"
socket = UNIXSocket.new('/tmp/simple.sock')
puts "==== Sending"
socket.write("Hello server, can you hear me?\n")
puts "==== Getting Response"
puts socket.readline
socket.close
動作を確認するには、まずサーバーを実行し、続いてクライアントを実行します。結果は以下のようになります。
シンプルなUNIXソケットによるクライアント・サーバー通信の例。左がクライアント、右がサーバーです。
nginxとの連携
UNIXソケットの「サーバー」を作る方法がわかったので、nginxとの連携は簡単に実現できます。
信じられないかもしれませんが、実際に試してみましょう。ここでは前述のコードを少し改変し、ソケットから受信したすべてのデータを出力するようにします。
require "socket"
# ソケットを作成し、ファイルシステムに保存する
server = UNIXServer.new('/tmp/socktest.sock')
# 接続(nginxからのアクセス)を待ち受ける
socket = server.accept
# ソケットからすべてのデータを読み込む
while line = socket.readline
puts line.inspect
end
socket.close
この状態で、nginxに/tmp/socktest.sockへのリクエスト転送を設定すると、nginxがどんなデータを送っているのかを確認できます。(設定方法については後ほど詳しく説明します)
Webリクエストを送ると、nginxは以下のようなデータを私たちの小さなサーバーに送信してきました。

面白いですね。これは通常のHTTPリクエストに、いくつかの追加ヘッダーが付いただけのものです。これで本格的なアプリケーションサーバーを作る準備が整いました。ただ、その前にnginxの設定について触れておきましょう。
nginxのインストールと設定
開発マシンにまだnginxがインストールされていない場合は、先にインストールしておきましょう。macOSならHomebrewで簡単に導入できます。
brew install nginx
次に、localhost:2048宛てのリクエストを、/tmp/socktest.sockという名前のソケット経由でアップストリームサーバーへ転送するようnginxを設定します。ソケット名に特別な意味はなく、アプリケーションサーバー側で使うソケット名と一致していれば問題ありません。
以下の設定を/tmp/nginx.confとして保存し、nginx -c /tmp/nginx.confコマンドで起動すれば読み込まれます。
# nginxをデーモンではなく通常のコンソールプログラムとして起動する
daemon off;
# エラーログをstdoutに出力する
error_log /dev/stdout info;
events {} # お決まりの記述
http {
# アクセスログをstdoutに出力する
access_log /dev/stdout;
# 私たちのソケット上に存在する外部サーバー@appをnginxに登録する
upstream app {
server unix:/tmp/socktest.sock fail_timeout=0;
}
server {
# localhost:2048で接続を受け付ける
listen 2048;
server_name localhost;
# アプリケーションのルートディレクトリ
root /tmp;
# ディスク上にパスが存在しない場合、リクエストを@appへ転送する
try_files $uri/index.html $uri @app;
# @appに転送されるリクエストに対する設定
location @app {
proxy_set_header X-Forwarded-For $proxy_add_x_forwarded_for;
proxy_set_header Host $http_host;
proxy_redirect off;
proxy_pass https://app;
}
}
}
この設定により、nginxはデーモンとしてではなく通常のターミナルアプリのように動作し、すべてのログが標準出力(stdout)に書き出されます。nginxを起動すると、以下のような表示になります。
非デーモンモードで動作中のnginx。
自作アプリケーションサーバー
nginxと自分のプログラムを接続する方法がわかったところで、シンプルなアプリケーションサーバーの構築はごく簡単な作業になります。nginxがリクエストをソケットへ転送するとき、それは標準的なHTTPリクエストです。少し実験してみると、ソケットが有効なHTTPレスポンスを返せば、それがブラウザに表示されることがわかりました。
以下のアプリケーションは、任意のリクエストに対してタイムスタンプを表示します。
require "socket"
# Connectionはソケットを作成し、新しい接続を受け付ける
class Connection
attr_accessor :path
def initialize(path:)
@path = path
File.unlink(path) if File.exists?(path)
end
def server
@server ||= UNIXServer.new(@path)
end
def on_request
socket = server.accept
yield(socket)
socket.close
end
end
# AppServerは受信リクエストをログに出力し、ビューを返す
class AppServer
attr_reader :connection
attr_reader :view
def initialize(connection:, view:)
@connection = connection
@view = view
end
def run
while true
connection.on_request do |socket|
while (line = socket.readline) != "\r\n"
puts line
end
socket.write(view.render)
end
end
end
end
# TimeViewは単純にHTTPレスポンスを提供する
class TimeView
def render
%[HTTP/1.1 200 OK
The current timestamp is: #{ Time.now.to_i }
]
end
end
AppServer.new(connection: Connection.new(path: '/tmp/socktest.sock'), view: TimeView.new).run
nginxとこのスクリプトを同時に起動して、ブラウザでlocalhost:2048にアクセスしてみましょう。リクエストは私たちのアプリに送られ、レスポンスはブラウザに描画されます。素晴らしい!
シンプルなアプリケーションサーバーがHTTPリクエストをSTDOUTに記録しています。
そして、これが私たちの労働の結晶です。ご覧ください!なんと、タイムスタンプが表示されました!
サーバーが返すタイムスタンプがブラウザに表示されます。
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